環境省はさる6月11日、有機フッ素化合物による地下水と河川水の汚染の調査結果を発表しました。
この汚染で最も心配されるのは米軍基地周辺といわれています。地下水は
★環境省ホームページ
http://www.env.go.jp/press/108091.html
令和元年度PFOS及びPFOA全国存在状況把握調査の結果について
関連記事を転載します。
◆2020年6月15日 琉球朝日放送
https://www.qab.co.jp/news/20200615126827.html
ー地下水蓄える「帯水層」の危機 北谷浄水場PFOS汚染の実態ー
北谷浄水場の取水源となっている河川や地下水が汚染されている問題で、汚染源とみられるものの実態がみえてきました。
沖縄県企業局はQABの取材に対し、嘉手納基地内で何らかの土壌汚染が起き、地下水を蓄えている「帯水層」が汚染されている可能性を明らかにしました。
QABが沖縄県企業局に情報開示請求を行って入手した資料。「嘉手納井戸群」と呼ばれる取水源の水質調査データです。
実は、嘉手納基地とその周辺の地下には巨大な帯水層があり、地下水を汲み上げるためにつくられた23の井戸があります。県民にもあまり知られていませんが、これらは1960年代から貴重な沖縄の取水源になっていました。ところが企業局の調査で、深刻な汚染が起きていたことがわかりました。
汚染していたのは有害性が指摘されている有機フッ素化合物PFOS。
アメリカ軍が半世紀以上前から泡消火剤に使用しているもので、肝臓疾患やコレステロール値の上昇が指摘されています。
23の井戸の中でも最も汚染が深刻だったのが滑走路わきにあるK-16と呼ばれる井戸。
K-16では、調査を始めて以来6年間ずっと汚染が続いていて、2015年には国の目標値の14倍以上になっていることがわかりました。
志喜屋さん「数値的なオーダーでいくと、かなり高濃度で出ていますので、ほかの井戸とちょっと状況が違うという認識はしていますね。そこに高濃度のPFOSを検出される何かしらの状況があるんだろうと思っています」
こうした井戸群のデータから企業局は次のような仮説を立てています。
一つ目は、K-16付近にPFOSを含む消火システムがあり、それが漏れ出しているのではないかということです。
そして二つ目は、K-16付近の地中にPFOSを含む廃棄物が埋められ土壌や地下水を汚染しているのではないかということです。
志喜屋さん「もしかすると、このまま原材料として泡消火剤が高濃度で含んだ製品そのものがここに置かれているとか、例えば、土壌が汚染されているのであれば、何か埋められているのか、何かしらの状況があるのではと考えていますけれども」
目に見える形でPFOSの汚染の広がりを知らしめた普天間基地の泡消火剤漏出事故。
しかし嘉手納基地で起きているとみられる地下水の汚染は、一過性の漏出事故ではなく、見えなところでずっと続いていると見られています。
すでに汚染は基地の外にある河川や湧き水、そして井戸でも発覚していて、基地の中から外に、広がっているとみられているのです。
企業局は先月、沖縄防衛局を通じて嘉手納基地への立ち入り調査申請を出しました。汚染源が基地内にあることを明らかにし、汚染食い止めるためには、どうしても立ち入り調査が必要だと訴えています。
志喜屋さん「土壌のサンプルと、水のサンプルを採取させてくれというのは、立ち入りの目的で伝えているところであります。大工廻川付近、K‐16付近は基本的に、そういった部分、泡消火剤の可能性が高いと考えておりますので、飛行場当たりの高濃度で検出されているところ付近をサンプリングポイントとして考えていますね。何かしらがあるという風なことを考えていますので、基本的には立ち入り調査を早く実現してというところも考えているところで」
嘉手納井戸群の一日の取水量は2万トン。それは宜野座村にある漢那ダムの約2倍にも上っています。嘉手納基地の地下に横たわり、県民の水を蓄えてきた豊かな帯水層。それを今、失う危機に直面しています。
◆2020年6月11日 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20200611/k00/00m/040/296000c
ー有機フッ素化合物 地下水など37地点で国目標値超え 自然界で分解されずー
発がん性が指摘される有機フッ素化合物のPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)とPFOA(ペルフルオロオクタン酸)について、環境省は11日、全国計171地点の地下水などの含有量を調査した結果を公表した。1都2府10県の37地点で国の暫定的な目標値(1リットル当たり50ナノグラム)=ナノは10億分の1=を超え、最大で目標値の約37倍に達しており、在日米軍基地や工業地帯の周辺の地下水などが広く汚染されている実態が浮き彫りになった。【鈴木理之、信田真由美】
米軍基地や工場から排出か 環境省、初の全国調査
環境省によると、2物質の汚染状況を把握する全国規模の調査は初めて。化学的に安定し水や油をはじく性質があり、泡消火剤や調理器具、半導体などに幅広く使われてきた。汚染原因の特定はできていないが、基地や工場などから排出され河川や地下水に蓄積した可能性があるといい、今年度はさらに範囲を広げて調査し、実態の把握を目指す方針。目標値を超えた地点の地下水と湧き水はいずれも現在は飲用水として使われていないが、誤飲しないよう井戸の所有者らに注意喚起する。
環境省は昨年度、これまでの自治体の独自調査などを基に、2物質が排出された可能性が高い施設周辺の地下水、河川、湧き水、湖沼、海域で水質を調べた。
米軍嘉手納基地の近くを流れる沖縄市のダクジャク川では、目標値の約30倍の1リットル当たり1508ナノグラムを検出。米軍普天間飛行場がある沖縄県宜野湾市の「チュンナガー」など湧水(ゆうすい)3カ所でも168~1303ナノグラム検出された。横田基地に隣接する東京都立川市の地下水や、厚木基地が所在する神奈川県大和市の河川でも目標値を超えた。
大阪府摂津市の地下水からは目標値の約37倍の1855ナノグラムを検出。今回の調査で最も高かった。化学メーカーの工場などが集まる首都圏や阪神地域、三重県四日市市などで高濃度で検出される傾向があり、東京都内は広範囲で目標値を超えた。
2物質は自然界でほぼ分解されず「永遠の化学物質」と呼ばれる。人体に蓄積する性質もあり、国際がん研究機関(IARC)はPFOAを「発がんの可能性がある物質」に分類。PFOSも、動物実験で健康影響が認められたとの研究報告がある。ただ、人体への健康被害に関し十分な医学的知見はない。今年4月には普天間飛行場からPFOSを含む泡消火剤が大量に流出。周辺の水路などから高濃度で検出され、住民から健康影響を懸念する声が出ている。
PFOSは2009年に、有害化学物質を規制するストックホルム条約の規制対象になり、日本は18年に国内製造・輸入を全面的に禁止した。PFOAは19年に同条約の規制対象になり、政府は全面的な製造禁止の検討を進めている。環境省と厚生労働省は5月までに、2物質について水道水や地下水などに含まれる暫定的な目標値を設定。健康影響の知見集積を進める「要監視項目」に位置づけている。
環境省調査で目標値を超えるPFOSとPFOAが検出された37地点
(値は1リットルあたりに含まれる合計量、単位はナノグラム)
自治体名(カッコ内は地点名) 検出値
埼玉県本庄市(新泉橋) 51.8
千葉県白井市(名内橋) 349.2
柏市(下手賀沼中央) 191.0
市原市(雷橋) 128.6
東京都立川市(地下水①) 337.2
(地下水②) 67.7
国立市(地下水) 84.4
練馬区(地下水①) 108.4
(地下水②) 93.0
日野市(地下水) 94.1
府中市(地下水) 301.8
調布市(地下水) 556.0
渋谷区(地下水) 154.2
大田区(地下水) 135.1
神奈川県
大和市(福田一号橋) 213.3
(山王橋) 248.5
藤沢市(六会橋) 110.5
(下土棚大橋) 126.8
(秋本橋) 107.0
(富士見橋) 91.5
名古屋市港区
(荒子川ポンプ所) 107.7
三重県四日市市(海蔵橋) 102.3
京都府八幡市(地下水) 85.3
大阪府摂津市(地下水) 1855.6
神戸市西区(玉津大橋) 145.6
(上水源取水口) 105.4
兵庫県加西市(地下水) 73.1
奈良県生駒市(芝) 64.4
福岡県築上町(川尻橋) 145.9
大分市(別保橋) 142.6
沖縄市(元川橋) 475.0
(ダクジャク川) 1508.1
沖縄県宜野湾市(チュンナガー)1303.0
(ヒヤカーガー) 168.8
(メンダカリヒーガー) 815.3
嘉手納町(シリーガー)1188.0
北谷町(インガー) 63.2
※環境省資料より。「地下水」の地点名は公表していない
◆2020年6月12日 朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/ASN6C6W8CN6CULBJ00F.html?iref=pc_ss_date
ー全国37地点で基準を超過 泡消火剤などの有害物質ー
環境省は11日、沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場から漏れた泡消火剤などにも含まれる有害物質が13都府県37地点の河川や地下水で暫定目標値を超えていたと発表した。排出源になりうる全国の施設周辺で同省が昨年度初めて調査した。沖縄は米軍基地に近い3地点で暫定目標値の20倍を超える値が検出された。
調査の対象は、泡消火剤やコーティング剤などに使われてきた2種類の有機フッ素化合物(PFOS、PFOA)。米軍基地や空港など大規模火災に備えて泡消火剤の在庫を置いている施設や、使用・製造してきた化学メーカーの事業所などの周辺の河川や地下水を調べた。
環境省は今年5月、河川や地下水での濃度について、人体への影響を考慮し暫定目標値をPFOSとPFOAの合計で1リットルあたり50ナノグラムと定めた。調査の結果、埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、三重、京都、大阪、兵庫、奈良、福岡、大分、沖縄の13都府県の計37地点で暫定目標値を超えた。最も高かったのは化学メーカーの事業所が近くにある大阪府摂津市の調査地点の地下水で、1リットルあたり1855・6ナノグラムだった。沖縄県は7地点が超過。うち嘉手納基地に近い沖縄市の河川と中頭郡の湧水(ゆうすい)、普天間飛行場に近い宜野湾市の湧水の3地点はいずれも1千ナノグラムを超えていた。
暫定目標値を超えた地点の水はいずれも飲用用途ではなかったが、環境省は関係自治体に、飲用に関する注意喚起を依頼した。(水戸部六美)
環境省の全国調査でPFOSなどの濃度が暫定目標値を超えた地点
※市区町村名、河川・湖沼などの区分、地点名、濃度の順(地下水は地点名なし)
※暫定目標値は1リットルあたり50ナノグラム
(以下略)