八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

昨秋の台風での渡良瀬遊水地の治水効果受け、河川湿地を天然ダムに活用検討

 昨年10月の台風19号で渡良瀬遊水地が洪水貯留で大きな役割を果たしたということで、環境省が各流域の川沿いにある湿原や湖沼がためられる水量などを推計するそうです。
 確かに台風19号で渡良瀬遊水地が利根川の水位低下にそれなりの役割を果たしました。巷では、八ッ場ダムが大きな治水効果を発揮したという話が盛んですが、これはフェイクニュースです。八ッ場ダムをはじめ、利根川上流にあるダムはダム地点で洪水を貯留しても、その効果は利根川の中流に来ると減衰し、下流は行くと、さらに小さくなります。それに対して、渡良瀬遊水地は利根川の中流に位置していますので、その調節効果が利根川の中流下流に直接反映されます。

 詳しくは、こちらの論考をお読みください。
 「2019 年台風 19 号と渡良瀬遊水地」(嶋津暉之)
 

 ただし、渡良瀬遊水地は天然の湿地ではありません。今から100年以上前に足尾鉱毒事件で知られる谷中村を廃村にし、その周辺の村も買収してつくられたものです。渡良瀬遊水地は長い年月を経て、多種多様な動植物が生息生育する本州以南最大の低層湿原になりましたが、自然を守るための活動が1990年頃から続けられています。
 渡良瀬遊水地の長い経過については、以下の資料にまとめられています。
 「渡良瀬遊水地見学会の資料 2020年2月11日(渡良瀬遊水池を守る利根川流域住民協議会)」

◆2020年6月17日 毎日新聞埼玉版
https://mainichi.jp/articles/20200617/ddl/k11/040/120000c
ー河川湿地、天然ダムに 渡良瀬遊水地など参考に 国が活用検討ー

 相次ぐ台風などの豪雨災害を受け、環境省は河川流域の湿地を天然のダムとして活用する方策を検討する。2019年の台風19号で被災した河川から2流域を選び調査。雨水や川からあふれた水を一時的にため、住宅地などの浸水を防ぐ。多くの動植物が生息する湿地の保全により、豊かな生態系の維持・回復を図る狙いもある。

 東日本を中心に大きな被害があった台風19号では、埼玉、栃木、群馬など4県にまたがる渡良瀬遊水地が東京ドーム約130杯分(1・6億立方メートル)を貯水し、下流部の被害を軽減した。遊水地は生態系を守るラムサール条約にも登録され、住民の憩いの場となっている。

 環境省はこうした例を参考として、各流域の川沿いにある湿原や湖沼がためられる水量などを推計。長期的な視点に立ち、宅地開発や治水工事で埋め立てられたため池や、大雨時に川から水があふれて水を蓄える「氾濫原」の痕跡から、元の状態に戻した場合に想定される貯水量も調べる。

 調査結果は、湿地の回復で復活が期待できる希少種の紹介とともに自治体や住民に提供。まちづくりや防災に活用してもらう。

 生態系を活用した防災対策には森林の保水力を利用する「緑のダム」などがある。政府も積極的に推進する方針を掲げており、環境省は湿地の保全と堤防や水門などのインフラを組み合わせた活用を呼び掛けていく。