淀川水系の大戸川ダムについて、国土交通省近畿地方整備局と淀川水系6府県が7月14日、調整会議を開きました。
全国で水害が発生し、河川の氾濫に対する恐怖心が高まる中、国土交通省は大戸川ダム計画の復活を目指しているようです。
国の大戸川ダム計画は、ダム事業費を負担する滋賀県、大阪府、京都府、三重県の知事がダム不要との結論に達し、2008年に国が建設を凍結した経緯があります。しかし、その後、四府県の議論を主導した滋賀県の嘉田由紀子知事が引退し、後任の三日月知事が知事選で自民党の支持を受けるためにダム推進に転じたことから、復活の可能性が出てきました。
日経新聞の記事によれば、国土交通省近畿地方整備局は調整会議で大戸川ダムが洪水時に下流の流量を6%削減する効果があるとの試算を示したということですが、その計算の精度はどうなのでしょうか。また、その効果は淀川の治水において意味があることなのでしょうか。
大戸川ダムの建設凍結を解除するためには、今もダム建設に慎重な大阪府と京都府の同意を取りつける必要があります。
以下の昨年の毎日新聞の記事にあるように、両府の負担金は滋賀県のそれよりはるかに高額です。大戸川ダムの本体工事費は1000億円余り、そのうち三割にあたる324億円を両府と滋賀県が負担することになっており、大阪府186億円余り、京都府128億円余り、滋賀県8億円余りと決められています。
◆2020年7月14日 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61501700U0A710C2LKA000/
ー滋賀・大戸川ダム、豪雨時流量6%削減効果 整備局試算 淀川水系6府県が調整会議ー
大阪府や滋賀県など淀川水系6府県と近畿地方整備局は14日、広域的な河川整備を探る部長級の調整会議の初会合を大阪市で開いた。整備局は大津市内で本体工事が凍結されている大戸川(だいどがわ)ダムについて、豪雨時に下流の流量を6%削減し、氾濫を防ぐとの試算を示した。気候変動が大きくなるなか、同ダムの治水効果を巡る議論を進める考えだ。
整備局は京都市内で淀川支流の桂川などの河道掘削を検討している。下流に大量の水が流れるため、想定以上の豪雨が起これば淀川の流量は大阪府枚方市の地点で毎秒1万1500立方メートルとなり、大阪市などで被害額10兆円規模の氾濫が発生すると予測する。一方、大戸川ダムが整備されれば他の調節と合わせて流量を毎秒1万800立方メートルに抑え、氾濫を防止できるとした。
大戸川ダムは琵琶湖から発して淀川につながる瀬田川の支流、大戸川に国が計画する治水ダム。2008年に滋賀や大阪、京都、三重の4府県知事が反対し、国が建設を凍結。19年に滋賀県の三日月大造知事が洪水対策に一定の効果があるとして建設容認に転じた。
この日の会議でも滋賀県が最近の豪雨被害の頻発などを挙げて早期整備を求めた。多額の費用負担を求められる大阪府は整備局の試算に対して、「今後設立する有識者会議の検討材料とする」と述べるにとどめた。
会議では淀川水系の河川整備計画について、気候変動により増大するリスクを想定し、現行計画以上の洪水対策を実施すべきとの意見が出た。その場合、京都市の嵐山地区などが浸水した13年の台風18号と同規模の豪雨を前提とする考え方が示された。
◆2019年5月15日 毎日新聞滋賀版
https://mainichi.jp/articles/20190515/ddl/k25/070/498000c
ーなるほドリ 大戸川ダム建設されるの?ー
治水の効果認め、知事方向転換 県より重い費用負担、2府の同調が鍵
なるほドリ 三日月大造知事が凍結中の大戸川(だいどがわ)ダム(大津市)の建設を容認する方針を表明したって記事で読んだよ。
記者 4月16日の記者会見で三日月知事が建設を容認し、計画の凍結解除を求める方針を表明しました。大戸川ダムは国が建設を計画し、1968年に予備計画調査に着手しましたが、2008年に国土交通省近畿地方整備局の諮問機関「淀川水系流域委員会」が「効果が限定的」として建設見直しを提言。同年、当時の嘉田由紀子知事が京都、大阪、三重各府県知事とともに「施策の優先順位が低い」として建設の凍結を求める共同見解を発表し、国は09年に事業凍結を決めていました。
しかし、近畿地整は16年、治水対策としてダム建設が有利とする評価案を公表。滋賀県も知事合意から10年が経過し、下流の河川整備が進み、全国で豪雨が相次いでいることを踏まえ、昨年、専門家を交えた独自の勉強会を設置しました。3回開かれた勉強会が今年3月、ダムの治水効果を認める報告をまとめたことを引き合いに、三日月知事は「一定の治水効果があることが分かった」と方針転換の理由を説明しました。
Q 表明はどう受け止められているのかな?
A 三日月知事を後継として引退した嘉田前知事は会見を開き、「ダムに一定の治水効果があることは、以前から分かっている。ダムは副作用もたくさんあり、必要性は費用や環境への影響、維持管理のあり方などを含めて総合的に判断すべきだ」と、疑問を呈しました。17年に県議会で知事合意の撤回を求める決議を賛成多数で可決させた最大会派の自民党や、地元住民らでつくる大戸川ダム対策協議会は歓迎しています。
Q これから建設が進むの?
A これからの焦点は京都、大阪両府が県に同調するかですが、両府とも慎重な姿勢です。政治情勢は建設反対で一枚岩となった08年当時とは異なりますが、ダム建設には重い費用負担があるからです。1000億円以上の本体工事費の3割を県と両府が負担することになっていますが、下流にダムの恩恵が及ぶという考えから、両府の負担は県より重くなります。三日月知事の表明を受け、大阪府の吉村洋文知事は独自の検証委員会を発足させることを表明しました。三日月知事は関係府県に県の立場を説明する方針です。<回答・成松秋穂(大津支局)>