八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

長崎県の石木ダムめぐり、水害に便乗するダム推進論

 集中豪雨による球磨川などの水害は、想定外の雨が短時間で降った時の自然の猛威を私たちに思い知らせるものです。近年頻発する水害は、想定内の雨が降る前提で建設されるダムでは防ぎきれませんが、洪水に不安を抱く人々にとって、逆にダム建設はこれまでにも増して期待されているようです。
 長崎県の石木ダムをめぐっても、水害に便乗して推進派が勢いづいているそうです。

 石木ダムの目的の一つは「川棚川の洪水調節」ですが、小さな石木川にダムを建設しても、川棚川の防災には役に立ちません。
 ダム予定地住民とともに石木ダムに反対している市民団体が最近の大雨時の川棚川と支流の石木川の水位の変化について、以下のブログで詳しく伝えています。

★石木川まもり隊ブログ 「不安を煽らず冷静な議論を」

◆2020年7月15日 長崎新聞
https://this.kiji.is/655998332360655969?c=174761113988793844
ー熊本豪雨 球磨川氾濫で波紋広がる「石木ダム建設事業」 反対派「必要」の世論を警戒 建設で不安解消求める声もー

 記録的豪雨で熊本県の球磨川が氾濫し、多数の流域住民が死亡したことを受け、長崎県と佐世保市が東彼川棚町の川棚川支流に計画する石木ダム建設事業を巡り波紋が広がっている。球磨川支流に治水目的で建設予定だった川辺川ダムは11年前に計画が中止されたが、熊本県内の地元では建設を巡る議論が再燃する可能性が指摘されている。長崎県内では石木ダム建設反対派が「世論が極端にダム必要論に傾くのではないか」と警戒。一方、豪雨に不安を募らせる地元住民からは「夜も眠れない。ダムを建設して不安を解消してほしい」との声が漏れ聞こえてくる。

 川辺川ダムは、洪水被害が続いていた球磨川流域の治水対策で、国が1966年に建設を決定。だが2008年に蒲島郁夫熊本県知事が「ダムに頼らない治水対策を目指す」として反対を表明し、09年に当時の民主党政権が中止を決めた。その後、国と地元が治水代替策を検討したが、最終的な整備方針は未定だった。

 今回の球磨川氾濫を受け蒲島知事は「ダムによらない治水を極限まで検討する」と述べたが、具体的な方策には言及しておらず、今後の対応に注目が集まる。石木ダム建設予定地に住む石丸勇さん(71)は「石木と川辺川ではダムの規模や治水効果も全く異なるが、ダム反対を訴えづらくなったり、世論が極端にダム必要論に傾いたりしないか」と危惧。市民団体「石木川まもり隊」の松本美智恵代表も「どこかで豪雨災害が起きたら石木ダムに関連づけて、行政や議会から『治水対策にはやはりダムが必要』という話が出てくるのではないか」と警戒する。

 今回の九州豪雨では10日、川棚町でも1時間に80ミリの猛烈な雨が降ったが、川棚川の氾濫は確認されていない。それでも、川の下流域に住む80代女性は「大雨が心配で夜も眠れない。これからも続くと思うと苦しい。県の言う通りダムを造って不安が解消されるのであれば、ぜひお願いしたい」と声を上げる。一方、利水面でダム建設を求める佐世保市の水道局の担当者は「コメントする立場にない」とする。

 国は今月、近年の気候変動による豪雨災害を防ごうと、ダムや堤防など従来の治水対策に加えて、貯水池の整備や避難体制強化など地域全体で総合的に対応する「流域治水」を進める方針を打ち出した。本年度中に本明川(諫早市)など全国109の1級河川で治水、防災対策を策定。その後、川棚川など県管理の2級河川にも対象を広げる方針だ。
 川棚川について県は既に河川改修などハード面の整備に加え、水位計や雨量計の設置などソフト面を合わせた対策に取り組んでいるという。「石木ダム建設に反対の住民の方々にも治水対策に協力してもらえるよう努力したい」としている。

◆2020年7月15日 長崎新聞
https://this.kiji.is/656142522902250593?c=62479058578587648
ー石木ダム「継続妥当」に抗議 超党派議員連盟や市民団体が佐世保市にー

 「石木ダム強制収用を許さない議員連盟」と市民団体「石木ダム・強制収用を許さない県民ネットワーク」は15日、利水面の事業再評価で「継続が妥当」と判断した市に対し、抗議文を提出した。
 市は、原則5年ごとに水需要予測などを検証する事業再評価を義務付けられている。市は第三者の検討委員会から意見を聞いて3月に事業再評価をまとめ、国に報告書を提出した。
 抗議文は朝長則男市長宛て。「検討委の人選は中立性に疑問がある」「水需要予測などのデータに科学的根拠がない」などと指摘。月末までに文書での回答を求めている。
 この日は、議員連盟の共同代表でダム建設予定地に住む炭谷猛川棚町議や市議ら約20人が市役所を訪れ、田中英隆副市長に抗議文を提出した。炭谷町議は「(土地の収用を進める中で)朝長市長は何ら説明をしない」と不満。田中副市長は「市長に(内容を)伝える。回答の時期や方法は検討する」と述べた。