球磨川中流にある瀬戸石ダムは、(株)電源開発(Jパワー)が管理している水力発電専用ダムです。
1958年に完成した瀬戸石ダムは、ダム湖に上流からの土砂が堆積し、河川環境の悪化、ダム上流の水害拡大などの問題を引き起こしているとして、流域住民がダム撤去を求めてきました。球磨川流域では、瀬戸石ダムの下流に、やはり水力発電専用の県営・荒瀬ダムがありましたが、流域住民が撤去を求める運動を粘り強く続けた結果、2018年に完全に撤去されました。
写真右=熊本県球磨村と芦北町の境に立地する堤高26.5メートルの瀬戸石ダムを下流側から、2018年7月撮影。
7月4日の豪雨の際、瀬戸石ダムはゲートを全開したものの、洪水が堤体を超えて流れ(オーバーフロー)、管理棟にいた職員らも退避し、ダムは放置された状態でした。ダム堤はオーバーフローすると決壊の危険性があると言われますが、球磨川をたびたび訪ねてきた写真家、村山嘉昭さんが発信した以下の記事が報道されるまで、ダム管理者のJパワーから発信された瀬戸石ダムの情報は、テレホンサービスの電話不通だけでした。
*参考⇒ 電源開発>「弊社南九州電力所、瀬戸石発電所、瀬戸石ダム情報テレホンサービスの電話不通のお知らせ」(7月10日)
◆2020年7月17日 デイリー新潮
https://www.dailyshincho.jp/article/2020/07171831/?all=1
ー熊本豪雨で球磨川「瀬戸石ダム」が決壊危機 現場証拠写真ー
(本文略)
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この記事がネット上に掲載された翌日、ようやく同社のホームページに現況についてのお知らせが掲載されました。流域自治体や住民が同社の公式発表を強く求めた結果と思われます。その後、地元の熊本日日新聞も現地取材記事を掲載しました。
瀬戸石ダムがダム堤上流と下流の水害にどのように影響したのか、検証はこれからです。
◆(株)電源開発ホームページ>お知らせ
https://www.jpower.co.jp/oshirase/2020/07/oshirase200718.html
ー瀬戸石ダムの現況及び7月17日の一部報道についてー
2020年7月18日 電源開発株式会社
-ダム本体は異常がないことを確認しております-
-ダムゲートは全開状態となっているとともに発電を停止しております-
当社瀬戸石ダム(熊本県芦北郡芦北町・球磨郡球磨村)の現況についてお知らせいたします。
7月4日(土)未明に発生した熊本県を中心とした豪雨を受け、瀬戸石ダムは4日早朝にダムゲートを開く操作を完了し、現在までゲートが全開状態となっているとともに発電を停止しております。
その後の調査により、ダムの管理用道路が一部ずれたことを確認しておりますが、ダム本体への影響は確認されておりません。今後、詳細な被害状況の把握に努めることとしております。
管理用道路は、安全確認が終了するまで車両の通行はできません。周辺の皆さまにはご不便をおかけいたしますが、ご理解を賜りたく存じます。
また球磨川の下流沿いに設置している放流警報設備が浸水により機能を停止しているため、河川増水時の警報サイレンを吹鳴することができません。周辺の皆さまには河川増水時に一層の注意をお願いいたします。
なお7月17日(金)の一部報道にて、当社の瀬戸石ダムに決壊のリスクがあるとの記事が掲載されましたが、そのような事実はありません。
同記事には管理用道路がずれていたとの記載がありますが、管理用道路は瀬戸石ダムとは異なる構造であり、ダム本体への影響はありません。
現況については河川管理者および関係される自治体には連絡済みです。
お知らせが遅くなり、流域の自治体の皆さまにご心配をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。
〔参 考〕
■瀬戸石ダム・発電所の概要
・所在地 (ダム) 熊本県芦北郡芦北町・球磨郡球磨村
(発電所)熊本県芦北郡芦北町
・ダムの高さ 26.5m
・発電出力 20,000kW
・最大使用水量 134m3/s
・運転開始 1958年9月
・河川名 球磨川水系―球磨川
‥‥‥‥転載終わり・・・・・
ダム下流域住民のツイッターによれば、水害発生後、瀬戸石ダムの状況を確認したくても管理者に連絡がつかない状態であったとのことです。
瀬戸石ダムの現況を伝える熊本日日新聞の記事、Jパワーに事実の情報発信を求める流域住民のフェイスブックの意見も併せて紹介します。
いつも放流量を確認するときに電話する瀬戸石ダム管理所の番号は現在繋がらない。人吉の管理所にかけても出ない。運用で簡単に人的被害を出す施設において、被災数日後にまだこの状態である。被災の大きさと電源開発の対応の不誠実さを実感する。
— kumakappa (@kumakappa) July 7, 2020
荒瀬ダムが撤去されずにまだあったらば、被害は間違いなく今より大きかった。瀬戸石ダムが撤去されていて、無くなっていたならば、被害は間違いなく今より少なかった。この2点はおそらくどの学者も同意せざるをえないだろう。政治決断と結果での明暗の分かれ目を見る思い。
— kumakappa (@kumakappa) July 22, 2020
◆2020年7月20日 熊本日日新聞
https://this.kiji.is/657718941061235809?c=92619697908483575
ー瀬戸石ダム、周辺には流木と砂 熊本豪雨、爪痕すさまじくー
熊本県南部を中心に襲った豪雨で、球磨川中流にある電源開発(Jパワー、東京)が管理する瀬戸石ダム(芦北町、球磨村)の、ダム本体上部に設置されている管理用道路が複数箇所の接ぎ目で最大約50センチ横にずれるなどの被害が出ていることが19日、分かった。同社は「ダム本体に異常はない」としている。
一帯の道路は土砂崩れなどで通行止めが続いており、熊本日日新聞の記者が歩いて現地に入り、状況を確認した。
同ダムは発電専用のコンクリートダム。上部に両岸をつなぐ全長約100メートル、幅約3メートルの管理用道路がある。この道路の接ぎ目のうち、少なくとも5カ所に約50~10センチの横ずれが生じていた。
管理用道路の上には複数の流木も残り、球磨川の水が道路の上まで押し寄せたことを物語る。ダム右岸の国道219号には大量の流木が折り重なり、左岸の管理施設の中や周辺には砂も20センチほど堆積していた。
Jパワー広報室によると、ダムに流れ込む水量の増加が見込まれたため、大雨が降った4日早朝、水量を調整する5枚の昇降式ゲートを全開にし、入ってきた水がそのまま流れる状態にしたという。今もゲートは開けたままで、発電を停止している。
社員が13日に現地に立ち入り、管理用道路の横ずれを目視で確認した。同社広報室は「管理用道路とダム本体は異なる構造であり、ダム本体の異常は確認されていない」と説明。「ずれた原因を含め、今後、詳細な被害の把握に努める」とした。
ダムは1958年に運転開始。発電の最大出力は2万キロワット。ダム湖への土砂堆積が洪水を招いていると主張する流域住民らが撤去を求める運動を展開している。(益田大也、山本文子、田中祥三)
—転載終わり—
熊本県八代市在住のつる詳子さんフェイスブックより、瀬戸石ダムの現況についてのレポート。現場の写真も多数。
つるさんは球磨川水害発生後、被災者支援のための支援活動(”チームドラゴン”)を立ち上げ、精力的に活動中です。
https://www.facebook.com/shoko.tsuru1/posts/3367050383373240
瀬戸石ダムに関するあれこれ問合せが多いけど、見てないものに何のお返事もできないので、見てきました。アクセスに関して結論からいうと、安易な気持ちで見学に行くというのは絶対に止めてほしいです。瓦礫の上や、道床は流され、浮いた枕木しかないレールの…
つる 詳子さんの投稿 2020年7月20日月曜日