7月4日の球磨川水害をきっかけに、球磨川支流の川辺川に計画された国直轄の川辺川ダムの是非が改めて取り沙汰されています。
川辺川ダムは関連事業が八ッ場ダムより先行して進みましたが、2008年に県民世論を受けて蒲島郁夫熊本県知事が白紙撤回し、翌2009年の民主党政権下で前原誠司国土交通大臣が中止を表明しました。
併称された八ッ場ダムが継続されながら、川辺川ダムが止まった背景には、球磨川流域住民がすでにあるダム(市房ダム、荒瀬ダム、瀬戸石ダム)などによる水害増大に苦しんできたこと、清流川辺川を守りたいという意識が流域住民の間で強かったこと、ダム建設の目的の一つであった農林水産省の利水事業が国側の敗訴により廃止に追い込まれたことなど、いくつもの要因がありました。
しかし、国土交通省は川辺川ダム事業の中止手続きを行っていませんので、川辺川ダムは今も生きています。報道されている菅官房長官の発言からも、政府は川辺川ダム建設をめざすと考えられます。
川辺川ダムの担当大臣は赤羽一嘉国土交通大臣ですが、赤羽大臣は今日から始まる”Go To トラベルキャンペーン事業”が問題となっており、今はそれどころではないようです。
◆2020年7月19日 時事通信
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020071900163&g=pol
ー球磨川のダム建設「課題に」 菅官房長官ー
菅義偉官房長官は19日のフジテレビの番組で、熊本県を襲った豪雨で氾濫した球磨川水系について、「(治水対策は)ダム建設でなければ難しいという判断だったが、地元から反対があった。今回の被害で、その問題を課題に乗せなくてはまずいのかなという思いがある」と述べた。
同水系では「川辺川ダム」の建設計画があったが、一部の流域自治体などの反対で、国は民主党政権下の2009年に中止を決定した。
◆2020年7月20日 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61732900Q0A720C2PP8000/
ー官房長官、水害対策でダムの有効性強調ー
菅義偉官房長官は20日の記者会見で、相次ぐ豪雨災害など水害対策に関し「ダムは下流の水位をコントロールする効果が高い」とダムの有効性を強調した。治水対策として「ダムを含め、あらゆる対策を組み合わせて水害を防ぐ努力をしていく必要がある」と述べた。
今回の豪雨で氾濫した熊本県の球磨川は国が1966年に川辺川ダムの計画を発表した。地元の反対などで工事が進まず、2008年に熊本県の蒲島郁夫知事が白紙撤回を要求し建設を休止した経緯がある。