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7月の球磨川氾濫、川辺川ダムあれば「水量4割減」、国交省検証委で報告

 国土交通省九州地方整備局と熊本県は、球磨川の今後の治水対策を考えるために、7月4日の球磨川豪雨の検証を行うことになりました。昨日8月25日に流域12市町村も参加した第一回の検証委員会が開催されました。

 国土交通省九州地方整備局のホームページに当日の開催資料(PDFファイル)が公開されました。以下のページからダウンロードできます。(説明資料1/3-3/3)
 http://www.qsr.mlit.go.jp/yatusiro/river/index/index.html

 国交省は昨日の委員会で、川辺川ダム(球磨川支流の川辺川ダムに国交省が計画)がなかったから今回の大氾濫になったのだという主旨の報告を行いました。国交省は年内にも川辺川ダムを含む治水対策案を示すと思われます。

 上記サイトの検証委員会説明資料より

 関連記事を転載します。

◆2020年8月25日 朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/ASN8T71Z8N8TTLVB00H.html?iref=pc_ss_date
ー川辺川ダムあれば「水量4割減」 7月豪雨で国交省試算ー

 国土交通省九州地方整備局(九地整)と熊本県は25日、7月の豪雨で氾濫(はんらん)した球磨(くま)川流域の治水対策を検証する合同委員会を初めて開いた。九地整はこの日、計画が中止された川辺川ダムが完成していた場合、人吉市街を流れた最大水量を約4割削減できたとする試算を示した。

 九地整によると、球磨川が流れる人吉市中心部の観測所の流量として、おおむね氾濫を防げるのは毎秒約5千トン。今回は7500トンの水が流れたと推定した。市街地では最大約5メートル浸水した。

 一方、球磨川上流の川辺川に計画されていた川辺川ダムがあった場合、ダムへの貯水で人吉市で流れた水量を最大37%減の毎秒4700トンに抑えられたと推定した。

 川辺川ダムへの貯水は計画されていた容量の8400万トンを下回る約6300万トンと推定され、緊急放流の必要もなかったとした。

 九地整は氾濫を完全に防げたかは不明としつつ、検証を進め、川辺川ダムで浸水や家屋被害をどの程度軽減できたかも示すという。

 球磨川の最大支流の川辺川のダムは1965年の大水害などを受け、国が建設を計画。住民の反対運動などもあり、2008年に熊本県の蒲島郁夫知事が「白紙撤回」を表明後、民主党政権が中止を明言した。

 会合後、蒲島知事は「川辺川ダムも当然一つの選択の範囲の中に必要だろうという内容だった」と話し、年内にも治水対策を固める考えを示した。(伊藤秀樹、大木理恵子)

◆2020年8月25日 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20200825/k00/00m/040/253000c
ー国交省「ダムがあれば球磨川の流量4割減らせた」 知事が08年に計画白紙ー

 7月の九州豪雨で大規模な浸水被害をもたらした球磨川の氾濫について検証し、将来の治水対策のあり方などを考える熊本県と国土交通省の委員会の初会合が25日、熊本市であった。国交省側は、蒲島郁夫知事が計画を白紙撤回した川辺川ダムが建設されていた場合、同県人吉市での球磨川のピーク時の流量を約4割減らすことができたとする推計を示した。

 人吉市は川辺川との合流点より下流の球磨川沿いに位置しており、球磨川の氾濫で市街地で大規模な浸水被害が起きた。国交省が2007年に示した河川整備基本方針では人吉市中心部の球磨川で流せる水量は毎秒4000トンだが、河川水位などを基に試算した今回の豪雨のピーク流量は毎秒7500トン。川辺川ダムを建設していた場合は「毎秒4700トン程度まで減らすことができた」とした。今後は被害がどの程度軽減できたかなども検証する。

 委員会には流域12市町村の首長らも出席し、同県芦北町の竹崎一成町長は「川辺川ダムも治水の選択肢の一つとして総合的に考えていく必要がある」と指摘した。12市町村でつくる「川辺川ダム建設促進協議会」は今回の豪雨を受け「川辺川ダム建設を含む抜本的な治水対策を講じるべきだ」と決議している。

 川辺川ダムを巡っては、「民意」などを理由に蒲島知事が08年、計画の白紙撤回を表明。旧民主党政権が09年に中止を決め、県などは「ダムによらない治水」を進めてきた。終了後、蒲島知事は年内に検証結果を出す意向を示し「流域市町村長の思いは真摯(しんし)に受け止めたい」と語った。【城島勇人】

◆2020年8月26日 熊本日日新聞
https://this.kiji.is/671127259813299297
ー人吉市でピーク流量毎秒8000トン 国交省推計 川辺川ダムあれば4700トンー

 国土交通省は25日、7月豪雨で氾濫した球磨川のピーク流量について、熊本県人吉市で毎秒8千トン程度となる推計(速報値)を公表した。球磨川で戦後最大だった1965年7月洪水の5700トンを大きく上回った。建設が中止された川辺川ダムがあったと仮定した場合、流量は4700トン程度に抑えられたとする推計も明らかにした。

 国と県、流域12市町村が同日、県庁で開いた「球磨川豪雨検証委員会」の初会合で報告した。

 球磨川の治水対策を巡っては、ダムによらない代替策を検討している国、県、流域12市町村の「対策協議会」で65年洪水の規模に対応できる安全度を目標に議論してきた。検証委で、国がダムによる洪水調整能力を示したことで、今後の議論に影響を与えそうだ。

 国交省によると、推計値は雨量や市街地での実際の浸水状況などのデータを基に試算。人吉地点のピーク流量は8千トンで、このうち上流の県営市房ダム(水上村)で500トンが削減できたとみている。川辺川ダムを前提とした国の河川整備基本方針で示された洪水時の想定最大流量は7千トンだった。

 一方、川辺川ダムと市房ダムでピーク流量をカットした場合の流量は推定4700トン。同基本方針で、洪水調節して流せる最大流量(4千トン)を上回っており、被害の軽減にどの程度つながったかなど詳しい推計は次回示される見通し。

 この日の会合には、蒲島郁夫知事や流域の12市町村長が出席。各市町村長からはダムを含めた治水の検証結果を早急に示すよう求める声が相次いだ。川辺川ダム建設促進協議会会長の森本完一・錦町長は「ダム建設を含む治水対策を講じるべきだ」とする流域市町村の決議文を読み上げた。

 次回の日程は未定。国交省は流量推計の精度を高めて主要地点ごとに公表するほか、流域市町村の初動対応についての調査結果も報告される。(野方信助)

https://this.kiji.is/671164908146132065?c=92619697908483575
ー球磨川検証委、ダム反対派ら傍聴 「住民の疑問に答えて」ー

 国土交通省九州地方整備局と熊本県などによる球磨川の豪雨検証委員会の第1回会合が県庁で開かれた25日、会場とオンラインでつないだ傍聴席が熊本市中央区の熊本テルサに設けられた。新型コロナウイルス感染症対策として150人分の席が用意されたが、傍聴者は12人にとどまった。

 川辺川ダム建設に反対する「清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会」の緒方紀郎事務局次長(57)=熊本市=は、豪雨時の人吉市内の推定最大流量が毎秒8千トンと示されたことについて「最低でも9千トンとみる専門家もいる。国は具体的な根拠を示してほしい」と注文。「住民の疑問に答えないまま進めると後で問題になり、治水がますます遅れてしまう」と憤った。

 熊本市の男性会社員(69)は「川辺川ダム計画を中止した蒲島郁夫知事がどのような説明をするのか聞きたい」と参加。ただ、この日の会合で蒲島知事は言及しなかった。

 男性は「議論の場を広げていく必要性を感じる。今回は傍聴者が少なくて残念だ」と話した。(田上一平、澤本麻里子)

◆2020年8月26日 西日本新聞
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/638748/
ー豪雨「脱ダム」揺らす 建設の議論再燃 「川辺川」中止当時の想定超えー

球磨川の流量許容の2倍
 熊本県南部の豪雨を契機に、氾濫した球磨川の治水を巡る議論が活発化している。焦点は、2009年に建設が中止された「川辺川ダム」。線状降水帯がもたらした洪水はダム推進、反対の双方が当時主張していた想定を超え、治水策の「土台」が揺らぐ。いかにして流域住民の生命と財産を守るのか-。行政と流域は、大きな課題を突き付けられた。

 「川辺川ダムがあれば被害は軽減された」-。25日、国土交通省九州地方整備局と県、流域12市町村長らが集まった「球磨川豪雨検証委員会」の初会合で、九地整が示した検証結果の趣旨だ。

 九地整はこれまで「80年に1度」の洪水に対応できる基準として、人吉市付近の球磨川のピーク流量を毎秒7千トンに設定。これを川辺川ダムや既存の県営市房ダムで貯水し、流量を同4千トンに抑える方針を基本として議論してきた。

 だが、想定を超える豪雨で、この「土台」は崩れた。検証結果では、現状で毎秒3600トンしか安全に流せない地点の流量が、ピーク時には同7500トンに達したと推定。1秒間に3900トンもの水が、川からあふれたことになる。

 従来の基本方針では対応できなくなったことで注目を集めているのが、11年前に「幻」で終わったはずの川辺川ダム。ダムは国が1966年に計画を発表したが、地元で根強い反対運動が続き、2008年に初当選した蒲島郁夫知事が反対を表明。09年に当時の民主党政権が中止を表明した。その後、国や県、流域自治体は「ダムによらない治水」の協議を続けてきたが、まとまらないうちに、7月の豪雨災害に見舞われた。

 ムードは一変した。流域12市町村でつくる「川辺川ダム建設促進協議会」の会長でもある森本完一錦町長は、検証委で「ダム建設を含む抜本的な対策を」と声を上げた。芦北町の竹崎一成町長は「総合的な治水対策から川辺川ダムは排除できない」と踏み込んだ。

 検証に「スピード感」を求める声も相次ぐ。被災した道路や橋、宅地のかさ上げの高さも決められないからだ。人吉市の松岡隼人市長は「街の今後の在り方も治水対策と同時に考える必要がある」。球磨村の松谷浩一村長は「検証委がスピード感を持たないと村の復興も遅れる」と訴えた。
   ■    ■ 
 ダム反対派の動きも急だ。23日に熊本市内で集会を開き、登壇者は「ダムは想定以上の雨で満水となり緊急放流する。ダムは対策から除外されるべきだ」とけん制した。主催者の一つ「子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会」の中島康代表(80)は、国の検証結果に対して「雨の降り方や支流の状況を無視した結果だ」と異論を唱える。

 検証委の初会合後、蒲島氏は報道陣に「川辺川ダムは選択の範囲」と明言。結論の時期を問われると「年内」と期限を切った。12年前、「脱ダム」を決断した知事の胸中も、揺れている。 (古川努、綾部庸介)

https://www.nishinippon.co.jp/item/n/638759/
ー球磨川に許容流量の2倍 国推計 「ダムあれば抑制も」熊本豪雨検証委ー

 熊本県南部の豪雨災害で、国土交通省九州地方整備局は25日、県や流域12市町村と開催した検証委員会の初会合で、大規模な浸水被害が発生した同県人吉市付近の球磨川のピーク流量が、河道の流下能力(毎秒3600トン程度)の2倍を超える「毎秒7500トン程度」(速報値)と推定する検証結果を公表した。建設が中止された「川辺川ダム」が存在した場合、ピーク流量は流下能力の1・3倍程度に抑えられ、洪水被害を軽減できた可能性があったとしている。

 ダム建設は2009年に中止されたが、計画自体は廃止されていない。県や流域自治体は「ダムによらない治水」を11年にわたり模索してきたが、熊本県内で死者65人、行方不明者2人を出した未曽有の豪雨災害に直面し、ダムの是非を巡る議論が再燃しそうだ。

 出席した流域の市町村長からは、復旧計画を進めるため検証の早期終了を求める声が相次いだ。蒲島郁夫知事は会合の終了後、「決まらないと道路や橋の高さも決められない。川辺川ダムも選択の範囲。(検証の結論は)年内をめどとしたい」と発言した。

 検証では、被災地の痕跡調査などで堤防からあふれた水量を割り出し、河道を流れた分と合わせてピーク時にどのくらいの流量があったかを推計した。

 川辺川は球磨川最大の支流で、同市に流れ込む水量の47%を占める。検証では、53%を占める球磨川本流にある県営市房ダムが毎秒500トンを洪水調節でため込み、最大流量は同7500トンになったと推定。仮に川辺川ダムが存在すれば同2800トンを貯水し、ピーク流量は同4700トンに抑えられたとした。

 ただし、九地整によると、人吉市付近の流下能力は現状で同3600トン。川辺川ダムがあったと仮定しても、ピーク流量は流下能力を上回るという。このため、河道掘削や堤防強化といったダム以外の治水策を組み合わせる必要性も示唆している。 (古川努)

https://www.nishinippon.co.jp/item/n/638704/
ー「スピード感持ち結論を」流域首長「復興見通せぬ」 球磨川豪雨検証委ー

 治水対策が固まらなければ、地域の復興は見通せない-。25日に熊本県庁で開かれた球磨川豪雨検証委員会の初会合では、流域の市町村長が「被災した住民が不安を感じている」「スピード感を持って検証結果を出してほしい」などと述べ、早急な結論を求めた。

 「委員会の終了時期は。決めなければ過去の轍(てつ)を踏むことになる」

 議事開始の直前、竹崎一成芦北町長が手を挙げ、2009年から続く「ダムによらない治水対策」の結論が出ていないことを念頭に発言。森本完一錦町長も「今回の被害を考えると、(結論まで)長くても半年と理解していいか」と食い下がった。一部の首長は冒頭から強い姿勢で臨んだ。

 「川辺川ダムがあった場合に人吉市地点のピーク流量を4割減らせる」という国の想定に対する反応はさまざまだ。

 森本氏と竹崎氏は「ダムがあれば完全に防げたということではないのか」「ダム問題の議論抜きに検証は進まない」と意見。20人が亡くなった人吉市の松岡隼人市長は「浸水地域に住んでいいのか、住民は不安に思っている」と詳細な説明を求めた。

 一方、ダム計画で水没予定地となっている五木村の木下丈二村長は会議終了後、取材に「住民の間でもさまざまな意見がある。検証結果を基に要望を聞いていきたい」。建設予定地である相良村の吉松啓一村長も「とりあえず話を聞きに来ただけ。まずは堤防のかさ上げなど住民の要望に応えていきたい」と述べるにとどめた。

 この日、次回会合の日程は示されなかった。25人が犠牲になった球磨村の松谷浩一村長は「川辺川ダムの効果は正直驚いた。村の復興計画を早くまとめたいが、検証結果が出ないことには難しい」と焦りの色を浮かべた。 (綾部庸介)