球磨川、筑後川流域で「ハザードマップ未更新」 23市町村の6割

 7月の九州豪雨で氾濫した球磨川と筑後川の本流に面する23市町村の6割が、水防法で定められたハザードマップの改定をしていなかったということです。
 2015年の水防法の改正で1000年に1回(想定最大規模)の豪雨の浸水想定区域を指定することになりましたが、23市町村の6割がまだしていなかったという話です。しかし、1000年に1回の浸水想定区域がたとえ示されても、住民がそのことを日々の生活でどこまで認識できるものでしょうか。
 首都圏には、1000年に1回の浸水想定区域に膨大な人口が集中して居住していますが、避難そのものが困難です。

◆2020年9月3日 毎日新聞
https://news.livedoor.com/article/detail/18839463/
ー球磨川、筑後川流域で「ハザードマップ未更新」 23市町村の6割ー

 7月の九州豪雨で氾濫した球磨川と筑後川の本流に面する23市町村の6割が、水防法で定められたハザードマップの改定をしていなかったことが判明した。国は近年の豪雨災害を踏まえ、2017年に球磨川と筑後川の浸水想定区域を拡大。市町村は速やかにハザードマップを改定して住民に周知する義務があるが、これらの市町村では周知が進んでいなかった。専門家は逃げ遅れなど被害の拡大につながったとみている。熊本県南部を中心に甚大な被害が出た九州豪雨は4日、発生2カ月を迎えた。

 「まさかここまで水が来るとは」。熊本県人吉市の西端、瓜生田(うりゅうだ)地区の60代女性は憤りを隠せない様子だった。地区は市が17年2月に作った「総合防災マップ」で浸水想定区域に入っていなかったが、九州豪雨では球磨川の支流・馬氷(まごおり)川が氾濫し川沿いを中心に浸水被害が広がった。

 女性宅には7月4日午前9時ごろ水が入り始め、たちまち膝上の高さになった。女性は93歳の母を隣家の80代男性に背負ってもらって高台に避難。女性宅は1階が人の丈ほどの高さまで水につかり、周囲の家は2階近くまで浸水した。水が来ると思わず避難していなかった住民らは浸水家屋の2階などに取り残され、消防や自衛隊に救助された。

 瓜生田地区は国の新しい浸水想定区域図で最大10メートル程度の浸水リスクがあるとされていたが、女性らは知らされていなかった。「家は地震保険も火災保険も入っていたが、水は来ないというので水害の保険には入っていなかった。天災だが、ある意味、人災だ」

 国は従来、100~200年に1回(計画規模)の大雨を想定して国管理河川の浸水想定区域を指定してきた。しかし、近年相次ぐ豪雨被害をふまえて15年に水防法を改正。想定を1000年に1回(想定最大規模)の豪雨に引き上げて浸水想定区域を拡大し、市町村がハザードマップで住民に周知するよう定めた。

 法改正を受けて球磨川と筑後川の新しい浸水想定区域が示されたのは17年。これまで浸水リスクがないとされてきた瓜生田地区のような地域も浸水想定区域になったが、九州豪雨の時点でハザードマップを改定していたのは23市町村のうち9市町村だけだった。

 球磨川沿いの10市町村では、特別養護老人ホーム「千寿園」の入所者14人が亡くなるなど計25人が死亡した同県球磨村や、20人が死亡した人吉市など9市町村が未改定。筑後川沿いの13市町では、住宅112棟が全半壊するなど大分県内で最も被害が大きかった日田市や、福岡県大川市など5市町が未改定だった。

 球磨村によると、現在のハザードマップを作ったのは16年3月。球磨川の新しい浸水想定区域が示されたのはその翌年だった。村の担当者は「ハザードマップを作り直すには600万円かかる。簡単には変えられなかった」と打ち明ける。人吉市も17年2月に現在の総合防災マップを作ったところだった。熊本県では今年6月に土砂災害警戒区域の更新があり、それを待って今年度改定する予定の自治体も多かった。

 九州豪雨の後、人吉市で現地調査をした山口大大学院の山本晴彦教授(自然災害科学)は「最新のハザードマップは近年相次ぐ1000年に1度の災害への備えとして欠かせない。防災は土木などのハード整備に比べて専門職員や予算が少ないが、もはや『防災もハードだ』と発想を転換して人や予算を充てるべき時期に来ている」と指摘する。【林大樹、佐藤緑平】