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球磨川豪雨の最大被災地、人吉市ではダム反対多数 熊本知事の意見聴取会

 熊本県では7月の球磨川水害を契機に、球磨川の今後の治水対策を改めて検討することとなりました。
 球磨川の治水対策としては、国土交通省が最大の支流である川辺川に巨大ダムを建設する計画がありますが、11年前に凍結されています。この川辺川ダムが今後の治水対策として蘇ろうとしており、熊本県知事は流域住民への意見聴取を今月15日から行ってきました。
 24日には流域で最大の犠牲が出た人吉市しで意見聴取が行われました。国土交通省は川辺川ダムによって人吉市を流れる球磨川の水位は約2メートル低下したとする試算を発表しており、川辺川ダムの建設を求める声が大きいことが予想されましたが、報道によればそうではありませんでした。

◆2020年10月25日 西日本新聞
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/657698/
ー「川まで奪わないで」人吉市ではダム反対多数 熊本知事の意見聴取会ー

 7月豪雨後の治水策に民意を反映させるため、熊本県の蒲島郁夫知事が球磨川流域で開いている意見聴取会が24日、同県人吉市であり、計約100人が参加した。豪雨による犠牲者20人、家屋被害3千戸と最大の被災地であり、是非論が再燃している川辺川ダムによる治水の最大受益地とされるが、多くはダムに反対した。「川辺川は宝」。清流への愛情と行政への不信感が浮き彫りになった。

 「知事さん、ダムを造らないで」。地元で生まれ育った木本千景(ちひろ)さん(34)は切々と訴えた。川辺川は遊び場であり、アユ漁や川下りができる観光資源であり、古里の原風景。学生だった2008年、ダム建設を「白紙撤回」した蒲島氏のニュースを東京で見て「うれしくて泣いた。だから、ここに戻って子育てし、幸せな生活を送っています」。川遊びする長男(4)の写真を蒲島氏に向けた。

 「多くを失った被災者から川まで奪わないで」。他の参加者の反対意見にも川への深い愛情がにじんだ。

 ダムへの拒否反応も強い。「ヘドロが増えた」「臭い」などとやり玉に挙がったのは球磨川上流の県営市房ダムだ。7月豪雨時には防災効果を発揮したが「今回の水害は市房ダムの放流が原因という声が多い」との意見も出た。「川辺川ダムが存在すれば人吉市の浸水範囲は6割減った」という国の検証結果についても、複数の市民が「信用できない」と述べた。

 蒲島氏は会合後、報道陣に対し、ダム反対論の多さに関して「不信感の強さを感じた。丁寧に説明すべきだと感じた」と話した。(古川努、中村太郎)

◆2020年10月25日 熊本日日新聞
https://this.kiji.is/692885624023450721?c=92619697908483575
ーダム建設巡り賛否交錯 熊本県が人吉市で意見を聴く会ー

 7月豪雨で氾濫した球磨川の治水対策などについて、熊本県の蒲島郁夫知事は24日、20人が犠牲となり甚大な被害が出た人吉市の住民から意見を聴いた。川辺川ダム建設を巡っては賛否が交錯。住民に建設の賛成、反対を問う住民投票の実施を求める声も上がった。

 同市内2カ所で計3回、104人から意見を聴いた。球磨地域振興局であった2回の会合には、各町内会長や被災者らが参加。同市城本町の城本雄二町内会長は、町内の9割を超える住民が建設を求めているとして「漠然と球磨川を再生したいと考えている人は誰一人いない。ダムがあれば、避難する時間は稼げる」と述べ、ダム建設に賛成した。

 同市南泉田町のラフティングガイド、木本千景さん(34)は「美しい川辺川が残っている地元で子育てをしたいと思い帰郷した。ダムを造ったら川は死ぬ」と涙ながらに訴えた。球磨村に住んでいた親族の川口豊美さん(73)と牛嶋滿子さん(78)を亡くした北願成寺町内会長の岡田昭範さん(75)も「2人は『かさ上げしたので安全だ』と言われていた場所で流されてしまった。ダムを造っても災害は防げない」と建設に反対した。

 治水対策の結論を急ぐ県の方針に、苦言を呈する声も。自宅が全壊した同市下薩摩瀬町の元小学校教師林通親さん(71)は「被災者は日常を取り戻すのに必死で、ダムについて落ち着いて考える状況にない」と述べた。

 同市下原田町の中原コミュニティセンターでは、複数の町内会長からダム建設賛成の声が上がった。その一方で、今回の水害で甚大な被害が出た同市中神町大柿地区の農業、尾方和敏さん(72)は「私たちは被害を受けてもダムには反対。ダムは必要ない」と断言。中原小PTA会長の隈部圭二さん(50)は「ダム問題をわが子の世代まで残したくない。住民投票などで総意をまとめ、新たなスタートを切るべきではないか」と提案した。

 終了後、蒲島知事は「ダムへの考え方には多面性があると感じた。意見聴取を重ね、しっかり分析した上で治水の方向性を考えたい」と述べた。(内田裕之、澤本麻里子、小山智史、吉田紳一)

◆2020年10月25日 朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/ASNBS7F5VNBSTLVB00D.html
ーダムめぐり慎重な検討求める声相次ぐ 熊本ー

 7月の豪雨で氾濫(はんらん)した球磨川流域の治水対策をめぐり、蒲島郁夫熊本県知事は24日、被害が大きかった人吉市の被災者や住民の意見を聴いた。市内2会場で3回の会合を開き、計104人が発言。会合後、民意について蒲島知事は報道陣の質問に「現段階でお答えするのは適当ではない。(意見聴取が)終わった後、コメントする」と述べた。

 川辺川ダムに関しては反対を含め慎重意見が多数だった。住民投票を求める意見も複数あった。ダムの賛否を超え、川底の掘削などの対策を早急に求める声も多かった。

 関根喜美子さん(74)はこの日の初回の会合に参加。今回の災害を防げなかった原因を究明するために専門家や有識者を集めて、様々な角度からの検証が必要だと述べた。「私は被災者として知りたい」

 人吉市下原田町の自宅が屋根まで浸水。全壊の判定を受け、30年住んだ家を失った。今は宮崎県えびの市で仮住まいをしている。「単純にダムありきではないと思う。何が足りなくてこういう被害になったのか。急ぐんじゃなくて筋道を立てて進めてほしい」

 市立中原小PTA役員の50代男性はダム賛否の判断がつかないと明かし、ダムをめぐる対立を次世代に残してはいけないと訴えた。「どこかで造るなら造る、造らないなら造らないと、住民投票なりで決定して進むことが近いうちにできないだろうか」と言った。

 同市のラフティングガイド木本千景(ちひろ)さん(34)は、自身が親しんできた川辺川への思いを語った。高校まで人吉で過ごして進学で上京したが、川辺川と共に生活して子育てしたいとUターンしたという。「30年人吉に住んできたが、ダムを造ってくれという人には会ったことがない」

 一方、城本町内会の城本雄二会長は住民が治水ダムに賛成だったと述べ、治水ダムを求める要望書と署名を提出した。町内会の54世帯に考えを聴き、51世帯が治水ダム賛成だったという。城本会長は「球磨川を自然の川に再生したいなどと言う人は誰一人いなかった。(ダムは)避難の時間が稼げる」と話した。別の町内会会長も「ダムを含めた治水をしっかり考えてもらえれば。まずは命を守って、それから環境のことを考えて」と訴えた。(伊藤秀樹、村上伸一)

◆2020年10月25日 NHK熊本放送局
https://www3.nhk.or.jp/lnews/kumamoto/20201025/5000010378.html
ー治水対策「住民の意見を聴く会」ー

 7月の記録的な豪雨で氾濫した球磨川の今後の治水対策をめぐって、熊本県の蒲島知事が流域の住民などから意見を聴く会合が24日人吉市で行われ、県が選択肢のひとつとしているダムの建設をめぐってさまざまな意見が出されました。

熊本県の蒲島知事は、球磨川の治水対策について流域の住民などから順次直接意見を聴いていて、24日は人吉市で会合が開かれました。

会合には住民およそ30人が出席し、はじめに全員で犠牲者に黙とうを捧げました。

会合では、県が治水対策の選択肢のひとつとしている球磨川支流の川辺川でのダムの建設について、出席者から「命を守るためにダムの建設も視野にいれてほしい」という意見が聞かれました。

一方で「きれいな川辺川の環境を守ってほしい」などとダムの建設に慎重な意見も聞かれました。

出席した70代の男性は「早急な対策を取ってもらいたいです。話し合いの場を機会に、復旧・復興が進むよう期待しています」と話していました。

蒲島知事は、今後も商工業や観光業の団体、流域の市町村長などからも意見を聴いたうえで、年内の早い時期に県の治水対策の方向性を示すとしています。

◆2020年10月24日 テレビ熊本
https://this.kiji.is/692669462679438433
ー人吉市で被災住民の意見を聴く会ー

 球磨川の治水をめぐり県が行っている被災地住民から意見を聴く会、24日は人吉市で開かれました。会では集まった住民を前に、まず県側が今回の被害について人吉市では約518ヘクタール4681戸が浸水したこと、そして仮に川辺川ダムが存在した場合、人吉市では今回の洪水のピーク水位より約2メートル低下するなど効果が推定される一方、すべての被害を防ぐことはできなかったなどとするこれまでの検証結果を説明しました。
 24日の参加は合わせて約90人、ダムへの賛否を含め「来年災害がないとは限らない。ダムを含めた治水をしっかり考えてほしい。まずは命を守っていただいて、それから環境を考えてほしい」や「2008年に白紙撤回のときは東京でテレビで見ていて、うれしくて声をあげて泣きました。それがあったから戻ってきて今幸せな生活をしています。知事には作らないでほしいです」などさまざまな声があがりました。蒲島知事はここでの意見などを踏まえ、年内のできるだけ早い時期に治水対策の方向性を示すとしています。