さる10月26日、熊本県が「くまもと復旧・復興有識者会議」を開催し、有識者会議より7月の球磨川水害についての提言書が提出されました。
熊本県の公式サイトに提言書が公開されています。
https://www.pref.kumamoto.jp/common/UploadFileOutput.ashx?c_id=3&id=37062&sub_id=1&flid=256866
この提言書を読むと、中身の乏しさに驚かされます。川辺川ダムの推進の方向を打ち出すことがこの有識者会議の設置目的であったと思わざるを得ません。
国土交通省と熊本県が開催した球磨川水害に関する検証会議は8月と10月に開催され、川辺川ダムの治水効果を謳って終了しましたが、この熊本県の有識者会議も8月に召集され、今回の二回目の開催で終了のようです。
関連記事をまとめました。
◆2020年10月26日 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20201026/k00/00m/040/250000c
ー川辺川ダム建設「排除すべきでない」 有識者会議が熊本県に治水対策提言ー
熊本県南部に甚大な被害をもたらした7月の九州豪雨からの復興方針について有識者が議論する「くまもと復旧・復興有識者会議」(五百旗頭=いおきべ=真座長)は26日、氾濫した球磨川流域の治水対策として、川辺川ダム建設を「排除すべきではない」とする提言書を蒲島郁夫知事に提出した。知事は11月中にも治水方針を判断する方針。
会議は2016年の熊本地震後に熊本県が設置。豪雨被害を受け、蒲島知事が復興の基本的な考え方や方向性に関する提言を改めて求めた。提言書は、知事が08年に川辺川ダム建設の「白紙撤回」を表明して以降、ダムによらない治水対策を検討してきたが実現しないまま、今回の豪雨で被災した経緯を振り返り、「科学的知見を流域住民と共有して現在の民意がどこにあるかを見極めて判断すべきだ」と指摘。「ダムだけに頼らず、といってダムを排除否定せず、持続可能なベストミックスを求める『流域治水』の考え方が重要だ」と結論づけた。
提出後に五百旗頭座長は「これまでの経緯でダム建設を排除するのではなく、あらゆる手段を講じて減災を考えるべきだ」と強調し、蒲島知事は「安全安心を最大化し、環境への影響を最小化させることが重要」と語った。【城島勇人】
◆2020年10月27日 西日本新聞
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/658292/
ー「ダム排除せず」 有識者会議提言 球磨川治水巡り知事にー
熊本県南部を襲った7月の豪雨災害を巡り、復旧・復興の方向性を検討する県の「くまもと復旧・復興有識者会議」(座長・五百旗頭(いおきべ)真兵庫県立大理事長)は26日、氾濫した球磨川流域の治水対策として「ダム建設を含む流域治水」の必要性を、蒲島郁夫知事に提言した。
提言は8月の現地調査を踏まえ、「従来の対応や一般基準を超えて、流域全体の安全対策を根底から考え直さねばならない」と指摘。「ダムを排除否定せず、すべての減災手法の有効性と限界を科学的に検証した『流域治水』」を求めた。
流域ではダム建設への賛否が入り交じっており、「政策形成のプロセスで科学的根拠を示しながら議論を進め、民意を形成していくことが重要」とも提示した。蒲島氏は「民意は、安全安心と球磨川の環境の維持。両立を図りたい」と述べた。 (古川努)
◆2020年10月27日 熊本日日新聞
https://news.yahoo.co.jp/articles/5a27687926fe3b8be81eb9939d21a220a10cd940
ー新たな流域治水の実現を くまもと有識者会議、創造的復興へ提言ー
くまもと復旧・復興有識者会議(座長、五百旗頭[いおきべ]真・兵庫県立大理事長)は26日、「7月豪雨からの創造的復興」と題した提言書を蒲島郁夫知事に提出した。ハード、ソフト両面から安全性を追求する流域治水の実現や、災害に強い交通インフラの整備、新産業の創出などを盛り込んだ。
8月に県庁であった同会議の議論を基に、球磨川流域の治水や創造的復興の方向性などをまとめた。
球磨川治水策については「大災害時にハードだけでの防災は不可能」と説明。早期避難などソフト面での対応を含め「減災手段の組み合わせで安全度を高める」よう指摘した。
賛否が分かれている川辺川ダムについては「排除否定せず、すべての減災手法の有効性と限界を科学的に検証」するよう求めた上で、「コストも考慮して持続可能なベストミックスを求める考え方が重要」と強調。新たな「流域治水」を検討するよう要請した。
このほか、豪雨で大きな被害を受けた国道219号など交通インフラについては、災害に強い強靱[きょうじん]化や、主要道以外の別ルートの確保といった多重化を要望した。
復興の基本的な考え方としては、世界恐慌時に米国で推進されたニューディール政策から着想した地域振興策「グリーン・ニューディール」の実践を提唱。産業面では、バイオマス発電や小水力発電などエネルギー産業の創出、豊かな森林資源を生かした木材製品の世界への発信などに言及した。
県庁で蒲島知事に提言書を手渡した五百旗頭座長は「緑豊かな地域の特色を生かした振興策を検討してほしい」と述べた。(野方信助)
◆2020年10月27日 テレビ熊本
https://www.tku.co.jp/news/20201026nn1/
ーくまもと復旧・復興有識者会議が知事に提言書ー
7月の豪雨災害からの復旧復興に向けた有識者会議の提言がまとまり26日五百旗頭 真座長が蒲島知事に提言書を渡しました。提言書では単に水害からの復旧を図るだけでなく豊かな緑の自然を生かして新たな文明圏を形成する「グリーンニューディール」を提唱しています。また球磨川の治水対策については「ダム建設というオプションを排除するのではなく、ほかのすべての方途とともにベストミックスを追究すべき」としています。受け取った蒲島知事は「提案いただいた新たな哲学が復旧復興計画にとてもいい影響と効果を及ぼします」とお礼を述べました。県ではこれらの提言を踏まえ11月にも復旧復興計画を策定することにしています。