日本の公害問題の原点とされる足尾鉱毒事件ですが、旧足尾銅山では鉱さい堆積場の崩落などの問題が残されています。
群馬県の「渡良瀬川鉱毒根絶太田期成同盟会」が改善を求めて60年以上前から活動を続けています。コロナ禍の今年も山元調査が行われたとのことです。
◆2020年10月29日 毎日新聞栃木版
https://mainichi.jp/articles/20201029/k00/00m/040/089000c
ー旧足尾銅山 崩落対策、早期実施を求める 群馬の団体が調査 栃木ー
栃木県日光市足尾町の旧足尾銅山で27日、鉱毒被害者団体による山元調査が行われた。管理する古河機械金属(本社・東京)は今年、鉱滓(こうさい)を埋めた堆積(たいせき)場からの浸透水の排水系統を一部で二重化するなど災害時対応を強化したが、長年の課題となっている旧松木、有越沢両堆積場の崩落対策は進んでおらず、団体側は対策の早期実施を改めて求めた。
調査したのは、銅山による水田の土壌汚染の責任を同社の前身「古河鉱業」に認めさせた「渡良瀬川鉱毒根絶太田期成同盟会」(群馬県太田市、板橋明会長)。14ある堆積場のひとつ・源五郎沢堆積場が決壊し、被害を受けた1958年から継続している。コロナ禍の今年は見送りも検討したが、「調査は被害者団体の権利。市民の水源を守る上でも放棄できない」(板橋会長)として参加者を例年の半数の20人に絞り、感染防止対策を徹底して実施した。
この日は、旧坑内から出る重金属類を含んだ酸性廃水を石灰で中和する中才浄水場、唯一の稼働堆積場で浄水場からくみ上げた沈殿汚泥をためている簀子(すのこ)橋堆積場、使用終了後60年を経ても「カラミ」と呼ばれる鉱滓が露出する旧松木堆積場などで現状を確認。旧高原木堆積場では同社が約2億円をかけて予備系統を導入した排水施設を視察し、同社足尾事業所の担当者から説明を受けた。
調査後の意見交換では、同盟会側が長年要求している旧有越沢堆積場の崩落対策などについて具体的な説明を求めた。同事業所の山崎義宏所長は対策について、コンサルタントから一定の方向性が示されたことを明らかにした上で、コスト面から再検討していることを示唆した。板橋会長は「先人たちが築いてきた歴史を踏まえ、調査を継続することが大事だった。言うべきことは言い続ける」と話した。【太田穣】