熊本県の蒲島郁夫知事は20日、7月の豪雨で大氾濫となった球磨川の治水対策として、川辺川ダム計画を「流水型(穴あき)ダム」として建設するよう、赤羽一嘉国土交通大臣に求めました。翌20日、蒲島知事と面談した赤羽大臣は、即座に知事の要請を受け入れたとのことです。
川辺川ダム計画については、清流へのダメージが大きいとして流域住民の反対の声が根強くあります。河川環境へのダメージを最小限にする切り札として脚光を浴びる流水型ダムですが、流水型ダムの歴史はまだ浅く、環境へのダメージが本当に少ないと証明されたわけではありません。
現時点でわかる流水型ダムの問題点について、全国のダム問題に取り組む水源開発問題全国連絡会のホームページに論考が掲載されました。
http://suigenren.jp/news/2020/11/16/13878/
日本の流水型ダムのリストと、以下の項目ごとに解説している論考「流水型ダム(穴あきダム)の問題点」が公開されています。
右下写真(島根県HPより)=わが国で最初の流水型ダムとして建設された島根県営・増田川ダムの直下に設けられた副ダムによって、川の流れが遮られている。
★流水型ダム(穴あきダム)の問題点
http://suigenren.jp/wp-content/uploads/2020/11/c423cc46b3d19947c4ada53342b6feb6.pdf
1 自然にやさしくない流水型ダム
1-1 水生生物の行き来を妨げる障害物「副ダム」
1-2 濁りの長期化
1-3 ダム下流河川の河床の泥質化
2 流水型ダムの危険性 ―大洪水時には閉塞して洪水調節機能を喪失-
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なお、流水型ダムとして川辺川ダム建設を求めた蒲島知事の19日の声明に対して、日本自然保護協会が昨日21日に意見書を提出しました。
★日本自然保護協会ホームページより
「川辺川に「流水型のダム」を求める表明に対する意見書
https://www.nacsj.or.jp/archive/wp-content/uploads/2020/11/20201121_kawabegawa_dam_ikensho.pdf
上記意見書より一部抜粋
「今回の表明は、豪雨発生後数ヶ月間で洪水の検証と検討、意見を聴く場を設けて結論づけられたものであり、「球磨川豪雨検証委員会」は、洪水の流量とダムの治水効果の検証に終始し、豪雨時に球磨川本流の流れを妨げた可能性のある瀬戸石ダムの検証
や、流域で多く発生した土石流、森林管理や治山対策などは十分に検討されていません。ダムの効果を検証するだけでは、本来の流域治水に向けた総合的な検証を行ったとは言えません。さらには、「球磨川流域治水協議会」においても、流水型ダムの選択肢は熊本県や国土交通省九州地方整備局から一斉提示されておらず、議論の俎上に載っていません。それにもかかわらず知事が「流水型のダム」を突如表明したことに違和感があります。
類例の少ない流水型ダムは「清流」を守り自然環境と共生する選択肢として十分なものではありません。現行計画のダムの洪水調整容量を想定した場合、既存の流水型ダムとは比較にならない巨大なものになります。土砂の堆積により河川環境が変化し、アユをはじめとする遡上性魚類の移動阻害となるなど河川生態系に影響を及ぼす可能性があり、「川辺川の清流」は維持できなくなる懸念があります。既存の流水型ダムでの環境モニタリングの実績は十分ではないため、現時点で「流水型のダム」をもって「環境に極限まで配慮することができる」とは言い切れないのが現状です。」