八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

川辺川ダムをめぐる県議、首長らの言動

 川辺川ダムの復活を巡って、関係する政治家らの言動が報道されています。
 流水型ダムとして球磨川支流の川辺川に新たに計画される巨大ダムは「洪水対策」を目的としていますが、治水問題に真剣に向き合う政治家は僅かで、多くは政治問題としてダムの是非に対応しているようです。

◆2020年11月14日 西日本新聞
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/664062/
ー「命に関わる問題」政治の責任で…前川收氏に聞くー

 蒲島郁夫知事が川辺川ダム計画の白紙撤回を表明した2008年当時、自民党県連幹事長だった熊本県議の前川收会長(60)は西日本新聞のインタビューに応じ、当時の知事判断を「やむを得ない」とする一方、「命に関わる問題を民意に委ねてよいのか」と述べ、政治の責任で治水策を進めるよう求めた。 (聞き手=綾部庸介、古川努)

 -蒲島氏が白紙撤回を県議会で表明した当時を改めて振り返って

 「治水効果があることは分かっていた。しかし、ダム建設予定地の相良村と、最大の受益地とされる人吉市、両方の首長が反対した。この地域から『ダムは駄目』と言われたら、建設を進められないのはやむを得ない判断だったと思う」

 -当時、白紙撤回の事前通告はあったのか

 「それは言わないことになっている」

 -ダム推進の自民党としては、知事選で支援した蒲島氏の表明は予想に反したのでは

 「他の候補者が反対する中、蒲島氏だけ『難しい問題であり判断を留保する』という主張だった。最終的にはダム建設を理解してくれると思っていたが、結果として民意をとった」

 「ただ、誰の責任かという話ではない。09年の民主党政権では、市町村長が反対していない八ツ場ダムも中止になった。『無駄な公共事業』という当時の風潮からすれば、蒲島氏の表明がなくても川辺川ダムは中止になっていたのでは」

 -八ツ場ダムは建設が再開され、完成した

 「八ツ場ダムは昨年の台風19号で効果を発揮したが、球磨川では『Xデー』が来てしまった。私としては、ダム建設を進められなかったことに責任を感じている。当時関わっていた人はみんな感じていると思う」

 -今年9月の県議会全員協議会で、蒲島氏に「政治の責任は問わない」と発言した。ダムを巡る政治責任と民意の関係は

 「人命が関わる問題を民意で決めていいのか。政治家が責任を持って判断すべきではないか。全てを民意に委ねることはできない。民意は責任を取れない」

 「災害から生命財産を守るという責任は政治にしか果たせない。もしダムがあることで、球磨川の水位が1メートルでも下げられていたら、1人、2人でも命を救うことができたのならば造るべきだ。それを今回の甚大な被害で再確認した」

 -潮谷義子前知事時代の住民討論会について

 「対立を深める結果になった。ダムは悪だという考えと、賛成派を話し合わせても正解は導けない。不毛だったし、川辺川ダムを社会問題化してしまった」

 -蒲島氏の白紙撤回表明をどう評価するか

 「ダムの賛否を巡る地域の分断、という社会問題を解決した点は評価に値する。判断したということ自体が功績だ」

◆2020年11月20日 しんぶん赤旗
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik20/2020-11-20/2020112004_01_1.html
ー熊本・川辺川ダム建設 知事 一転して容認 治水口実 山本党県議「民意でない」ー

 7月豪雨で氾濫した熊本県・球磨川流域の治水の方向性をめぐり蒲島郁夫知事は19日、県議会全員協議会で「被害防止の『確実性』が担保されるダムを選択肢から外すことはできない」と述べ、川辺川ダム建設容認の考えを表明しました。

 川辺川ダムは、多目的ダムとして国が計画。数十年にわたる熊本県五木村(水没予定地)や下流域住民などの反対運動の中、ダム中止を求める住民側が提案した「ダム中止・代替案」と「ダム建設」についての住民討論集会や53カ所の住民説明会などを経て、2008年に蒲島知事がダム計画の白紙撤回を表明していたものです。

 今回の知事の表明に対し日本共産党の山本伸裕県議は「決して民意をくみ取っているとはいえない」と指摘。住民討論集会は01年から9回、1万2000人もの参加で開かれてきた経緯に対し、今回の豪雨災害後の検証委員会や治水協議会はダム建設促進派で固め、住民の声や学者・専門家の意見が反映されていないとし、検証と協議をやり直すよう求めました。

 緊急放流の危険性やダムの環境に対する負荷の問題に加え「今ダムをつくるかどうかを急いで決めることが住民に対立をもたらす」と強調しました。

 蒲島知事は集会の開催について「とにかくたくさんの人に言いたいことを言わせることが、私が思う解決点ではない」とダム建設を正当化しました。

 くまもと民主連合の鎌田聡県議は「瀬戸石ダムによって被害が拡大したとの指摘に対する検証も終わっていない」と強調しました。

◆2020年11月25日 朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/ASNCS76FGNCSTLVB004.html
ー流水型ダム容認に「感謝」 建設促進協が知事に面会ー

 【熊本】7月の記録的豪雨で氾濫(はんらん)した球磨川の治水策をめぐり、蒲島郁夫知事が川辺川への「流水型」ダム建設を国に求めたことを受け、流域12市町村でつくる川辺川ダム建設促進協議会が24日、蒲島知事に感謝を伝えた。

 会長の森本完一・錦町長や松岡隼人・人吉市長らが県庁を訪れ、蒲島知事に面会。森本町長はダム建設を容認した知事の判断について「本当にありがたく思った」と伝え、ダムの早期完成を求めた。竹崎一成・芦北町長は環境アセスメントの早期の完了を求めた。

 蒲島知事は、協議会が豪雨災害後にダム建設を要望したことに触れて「このような形で治水の方向性を決めることができて、感謝しています」などと応じた。(渡辺七海)

 

◆2020年11月26日 朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/ASNCT6RCQNCTTLVB006.html
ー八代市長「知事と一緒にやっていくしかない」ー

八代市長 中村 博生さん(62)
 ――2008年に蒲島郁夫知事が川辺川ダム計画の「白紙撤回」を表明した時と、その2年後に荒瀬ダム(八代市坂本町)の撤去方針を決めた時は、いずれも県議(自民)でした。当時はどう受け止めましたか。

 「川辺川ダムの白紙撤回は、ほとんど衝撃的だったんじゃないでしょうか。ただ、知事が重い決断をその時もされたわけで、県議会としても『ダムによらない治水』を進めんといかんという流れでした」

 ――荒瀬ダムの撤去に対するご自身の賛否はどうでしたか。

 「荒瀬ダムは利水で役に立っていた面もあり、下流で農業用水を引いていました。八代市内の土地改良区の理事長もしていたので、撤去には反対でした」

 ――荒瀬ダムがあったら、坂本地域で今年7月の豪雨による氾濫(はんらん)はなかったと思いますか。

 「専門家ではないからわからないが、荒瀬ダムがあったらあんな氾濫はなかったんじゃないか、という思いを持つ方はいるんじゃないか」

 ――上流の瀬戸石ダム(芦北町、球磨村)では豪雨時に大量の水が一気に流され、周辺と下流域の被害が増えたとの指摘があります。

 「瀬戸石ダムに反対する人たちがそうおっしゃるのかもしれないが、私はそう思っていません。ちょっとは(氾濫に対する)壁になってくれたんじゃないか。自分なりの検証はできませんが」

 ――蒲島知事は治水方針を転換し、川辺川への「流水型」ダム建設を国に求めました。市長は「強い支持」を表明しました。

 「穴あきダム(流水型ダム)は環境、清流を守る一つの手段かと思います」

 ――公共事業を増やせるという観点は。

 「それはないです。ダムは特殊で、建設業界すべてが潤うわけじゃない」

 ――命を守るためと。

 「ええ。(豪雨災害で)生命、財産を失われた人が多いですから、それを守るために治水対策もぴしゃっとしていかないといけない」

 ――市長として、川辺川へのダム建設に反対する人たちとどう向き合っていきますか。

 「話をするしかないじゃないですか。知事は(流水型ダムは)環境に配慮し、治水もできると判断されたんだろうし、知事と一緒になってやっていくしかないと思います。反対のみなさんの思いをどれだけ組み込めるかは、やってみないとわかりません」(聞き手・村上伸一)
     ◇
 なかむら・ひろお 1958年生まれ。県議などを経て2013年から市長。現在2期目。

◆2020年11月27日 熊本日日新聞
https://news.yahoo.co.jp/articles/21edf5a80d109f85a772efb6275eb0a75e7da6c5
ーダム反対の県議、住民と意見交換 熊本県人吉市ー

 川辺川ダムの建設に反対する「ダムによらない治水・利水を考える県議の会」(西聖一会長)が26日、7月豪雨で大きな被害が出た熊本県人吉市で、被災住民ら7人と意見交換した。

 会を構成する立憲民主連合と共産党の計5人が、ダム建設に反対する同市の「清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会」事務所を訪問。同会の木本雅己事務局長が「人吉市街地の浸水被害は、川辺川の影響ではない」と強調。同市下原田町の関根喜美子さん(74)は「ダムにかけるお金があるなら被災者支援に回してほしい」と訴えた。

 西会長は「ダムがなくても生活はできる。地域を分断するダムではなく、まずは生活再建が重要だ」と述べた。終了後、同会の5人は球磨川支流の山田川と万江川も視察した。(小山智史)