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国交省、昨年の台風19号踏まえ、千曲川の河道目標流量を引き上げへ

 昨年10月の台風19号で千曲川を襲った洪水の流量は、観測所のある立ケ花地点で最大9000㎥/秒に達していたということです。この数値は2014年に策定した信濃川水系河川整備計画の立ケ花地点の河道目標流量7300㎥/秒を大幅に上回っていました。このため、千曲川を管理する国土交通省は目標流量を引き上げることになりました。

 なお、信濃川水系河川整備基本方針(2008年策定)では、立ケ花地点の基本高水流量(流域に降った雨がそのまま川に流れ出た場合の流量)が11500㎥/秒、計画高水流量(基本高水流量からダム等で洪水調節する流量を差し引いて、河道で対応する流量)が9000㎥/秒です。これは100年に1回の洪水流量を想定して策定されたものですから、昨年10月洪水はそれに匹敵する流量ということになります。

◆2020年11月27日 毎日新聞長野版
https://mainichi.jp/articles/20201127/ddl/k20/040/166000c
ー国交省、流量目標引き上げへ 千曲川の安全確保ー

 国土交通省千曲川河川事務所は、昨年の台風19号で千曲川の堤防が決壊するなど甚大な被害が発生したことを踏まえて、2014年に策定した河川整備計画を見直し、巨大台風が襲来しても安全を確保できるよう河川流量の目標設定を引き上げる検討を進めていることを明らかにした。

 信濃川水系流域委員会の「上流部会」の初会合が20日に長野市内で開かれ、専門家ら約20人が出席した。

 台風19号の際の立ケ花観測所(中野市)の流量は、決壊した千曲川堤防(長野市穂保)からの流出分も含めて最大で毎秒9000トンに達していたとみられる。だが、現行の整備計画は被災前にまとめたものだったため、当時は戦後最大とされた1983年の台風10号を念頭に置いた毎秒約7300トンの流量で目標設定していた。

 同事務所は水害リスクを最大限減らすため遊水池の整備や河道の掘削などを進めて、河川流量を引き上げることなどを説明。流域の住民らの意見を聞きながら検討して21年に計画の変更案を公表し、正式決定する見通し。

 同事務所の吉田俊康副所長は「河川整備をスムーズに進めていきたい」と話した。【坂根真理】

<参考記事>
◆2020年2月28日 信濃毎日新聞
https://www.shinmai.co.jp/feature/typhoon19/article/202002/28026384.html
ー千曲川増水 整備計画で目標としていた流量上回るー

 昨年の台風19号による千曲川の増水で、中野市立ケ花と千曲市杭瀬下で観測した最大流量(暫定値)がそれぞれ毎秒8100トン、同5900トンだったことが27日、国土交通省千曲川河川事務所(長野市)の調査で分かった。ともに現行の整備計画で目標としていた流量をそれぞれ毎秒800トン、同1900トン上回っていた。両地点には水位観測所を設置している。
 千曲川では当時、長野市穂保の堤防が決壊したほか、千曲川の随所で越水などにより氾濫。同事務所は今後、あふれた分の水も含めた流量を調査する。
 国の「信濃川水系河川整備計画」では、おおむね2044年度までに、氾濫を防ぐために定める流量を、立ケ花で毎秒7300トン、杭瀬下で同4千トン確保するとしている。河道掘削などにより流下できる水量を増やす計画。
 現状では2カ所とも目標流量を確保できていなかった。台風が発生した昨年10月の時点で、各観測所でどれだけの流量を流せる整備状況だったかは現在調査中としている。
 同事務所は整備計画の目標とは別に、将来達成する流量の目標も設定しており、杭瀬下は毎秒5500トンを掲げているが、今回はその数字も同400トン超えた結果となった。立ケ花の将来目標は同9千トンで、同900トン下回った。
 国や流域自治体は27年度までに、台風19号と同様の雨が降っても千曲川で越水しないことを目標とする「信濃川水系緊急治水対策プロジェクト」を進める。調査で出る流量を基に、遊水地新設や河道掘削の規模を検討していく。