大蘇ダムの再三にわたる大量の水漏れを隠蔽していたことについて、ダムを管理する農水省九州農政局の横井績局長が熊本県知事らに陳謝したとのことです。
熊本県産山村に建設された大蘇ダムは、大分県竹田市と熊本県阿蘇市、それに産山村に水を供給します。12/2付けの毎日新聞大分版によれば、横井局長は12月1日に大分県竹田市を訪れ、首藤勝次市長らに「地元の方に不安や懸念を抱かせてしまい申し訳ない」と謝罪した上で「対策工事の前は1日4万~5万トンが漏れていた。現状は1万5000トンなので工事の効果は出ている」と強調、「漏水は徐々に減少する。4月の水利用に足りると思う」と釈明、「漏水について農業用水の供給には影響がない」と説明したとのことです。2日に熊本県庁を訪れ、知事との面談の際には、「十分な説明ができていなかった。反省し、事業に当たっていく」と謝罪し、地元の産山村と阿蘇市も訪れたとのことです。
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◆2020年12月3日 西日本新聞
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/669806/
ー農政局長、知事に謝罪 国営大蘇ダム漏水 専門家派遣、技術的検討へー
大分、熊本両県に農業用水を供給する国営大蘇ダム(産山村)で想定の7倍以上の漏水が発生している問題で、九州農政局の横井績(いさお)局長は2日、県庁で蒲島郁夫知事と面談し、「十分な説明ができていなかった。反省し、事業に当たっていく」と謝罪した。地元との情報共有の緊密化と点検監視の強化を約束し、来週にもダムの専門家を現地に派遣して技術的検討を行う考えを明らかにした。
横井局長は蒲島氏に対し「責任を持って技術的な検討を行い、丁寧に説明していきたい」と述べた。「ダムそのものの安全性に問題は確認されていない」としているが、週1回だった点検監視を毎日実施するよう改めたという。
蒲島氏は「受益農家が安心して営農できるよう必要な用水を確実に確保してほしい」と注文。ダム本体がある産山村や下流域に広がる懸念についても「安全性を調査し、不安を払拭(ふっしょく)してほしい」と要望した。
一方、同席した木村敬副知事は「このままでは(ダムは)空になるのではないか。農家の不安には的確に応えてほしい。私たちは完成していないと思っている。省の責任で調査し、データを示してほしい」と強く求めた。
農政局によると、昨夏ごろの試験湛水(たんすい)段階の漏水量は、最大で1日当たり2万8千トン。その後、ダムが満水状態となると想定通りの同2千トン程度で安定した。だが、現時点では同1万5千~1万6千トンと多い状態で推移しているという。
同局は11月25日に完工式を実施したが、阿蘇市の佐藤義興市長らは事前に漏水の連絡を受け欠席した。横井局長は報道陣の取材に「そこはまさに組織として反省すべき点。十分な説明ができておらず、理解も得られていなかった。それを看過していた」と述べた。 (古川努)
◆2020年12月3日 読売新聞
https://www.yomiuri.co.jp/local/kumamoto/news/20201202-OYTNT50030/
ー大蘇ダム漏水で農政局長が陳謝ー
漏水対策を施して4月に供用を開始した農業用の大蘇ダム(産山村)で大量の漏水が続いている問題で、九州農政局の横井績局長が2日、県庁で蒲島知事と面会し、「ご懸念を抱かせ申し訳ない。説明が不十分で反省している」と謝罪した。その上で、今後、専門家を交えて農業用水への影響やダムの安全性の確認を進めるとした。
大蘇ダムは貯水量389万トンで、大分県竹田市と阿蘇市、産山村に農業用水を供給する。
農政局によると、大雨で満水となった8月以降に漏水が続き、現在は1日当たり1万5000~1万6000トン程度で、11月末時点での貯水率は約48%となっている。農政局は「2000~3万トン程度の漏水が生じると想定していた」としているが、県は「2000~3000トン程度の漏水を想定している」との説明を受けていたという。
横井局長は水位や漏水量のグラフを示しながら、「量は昨年の安定時の7倍になっている。専門家の助言を得ながら技術的な検討を進め、関係者に丁寧に説明していきたい」と述べた。
また、週に1回だったダムの点検監視を、2人が常駐する体制に改めたことも報告した。
これに対し、蒲島知事は「安心して営農できるよう必要な用水を確保し、ダムの安定性もしっかり検証してほしい」と求めた。
終了後、報道陣の取材に応じた横井局長は、対策工事後に漏水量が減少したため、「対策工事は効果を発揮している」と説明。一方で、現在の漏水量を「注意すべき数値」と述べ、追加の対策が必要かどうかは現時点では不明とした。
この後、局長は地元の産山村と阿蘇市も訪問した。
◆2020年12月2日 熊本日日新聞
https://kumanichi.com/news/id10675
ー大蘇ダム漏水、九州農政局長が陳謝 現地に専門家派遣へー
今年4月に供用を開始した国営大蘇ダム(熊本県産山村)で想定を大きく上回る水漏れが発生している問題で、九州農政局の横井績[いさお]局長は2日、県庁で蒲島郁夫知事と面会し、「大変な心配や懸念を抱かせて誠に申し訳ない」と陳謝した。
今後の対応については、専門家の現地派遣など技術的な検討を進め、農業用水の利用が本格化する来春までに一定の見解をまとめる考えを明らかにした。
知事との面会で横井局長は「ダム周辺の地下水位などのデータを分析し、専門家の助言を得ながら農業用水に影響がないことを確認していく」と説明。ダムの安全性は「内部の水圧などの数値から問題はない」とした。
受益地の阿蘇市や産山村への説明が11月25日の完工式直前になったことについては、「情報共有しながら物事を進めることが十分に行えず、反省している」と述べた。ダムの点検・監視や情報提供を強化するため、現地に職員2人を配置したことも明らかにした。
蒲島知事は「営農に必要な用水を確保し、住民の不安を払拭[ふっしょく]するためダムの安定性も検証してほしい」と述べた。
横井局長は2日、産山村と阿蘇市も訪ね、市原正文村長と佐藤義興市長に一連の経緯を説明して陳謝した。
大蘇ダムは本体完成後の2008年に漏水が発覚し、ダム湖の約3分の2をコンクリートなどで覆う対策工事を実施。20年4月に供用を開始したが、11月末時点で1日当たり約1万5千トンの水が地中に浸透しており、国が目安とした2千トンの7倍超となっている。(内田裕之、東誉晃)