八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

石木ダム反対、座り込み1000回 出口の見えぬ闘い続く 長崎・川棚町

 長崎県の石木ダム事業は、予定地の13世帯の住民がダム建設に反対しているにもかかわらず、強引に進められようとしています。住民と支援者は道路の付け替え工事を阻止しようと、2016年7月から工事現場の入口で座り込みを始めました。座り込みは本日1月12日で、通算1000日に達するとのことです。
 酷暑の日も風雪の厳しい日も続けられる抗議行動。遠い群馬からでは何の役にも立ちませんが、石木ダム予定地の住民の方々、長崎の支援者の方々に頑張ってほしいと思います。
 西日本新聞が抗議行動の輪の中心にいる地元住民のことを取り上げています。長崎県はふるさとに足を踏ん張り、利権のダム事業に人生をかけて抗う人々をいつまで苦しめ続けるのでしょうか。

◆2021年1月12日 西日本新聞
 https://www.nishinippon.co.jp/item/n/680806/
ー石木ダム反対、座り込み1000回 出口の見えぬ闘い続く 長崎・川棚町ー

 新年を迎えても、いつもと変わらぬ光景だった。長崎県川棚町の石木ダム建設予定地。県が進める関連工事の大型車両が行き交うそばで、ダムに沈む古里からの立ち退きを拒む住民や支援者が座り込む。約4年半にわたり続けてきたその日数は、12日で通算千回に到達する。県との対話が細る中で、静かな闘いが続く。

 5日、今年最初の座り込みに40人が集まった。午前10時前、いつもの「おやつタイム」。持ち寄ったミカンや菓子を食べ、コーヒーを手に談笑する。それを県職員が監視するのも、すっかり日常となった。

 ダム予定地で暮らす13世帯43人の一人、岩本宏之さん(76)は座り込みを始めたときから、ずっと輪の中心にいる。

 「おい(私)はね、ここにある自然の恵みに生かされてきた人生やけんね」。時をみて猟銃を担いで山道を歩き、イノシシの痕跡を探し、わなの位置を調整する。160キロの大物を捕らえたこともある。

 幼い頃から、結核を患った父に代わり母と家庭を支えた。田畑を耕し、炭やシイタケ、タケノコを町で売った。ダムがせき止めることになる石木川のウナギは貴重なタンパク源。食糧難を生き抜き、4人の弟と妹の学費を賄えたのは、かけがえのない自然のおかげだと感謝している。「先祖代々の古里。金を積まれても、圧力をかけられても離れる気はない」。意思は揺るがない。

 座り込みは2016年7月25日、ダムに水没する県道の付け替え工事を県が再開したのをきっかけに、工事現場の入り口で始めた。休日や年末年始を除くと、酷暑も風雪も関係なく、ダム建設反対を訴え続ける。

 17年1月、県が日曜早朝に初めて重機を入れた。住民たちは監視カメラを据え、テントで夜を明かし、重機の前で体を張った。それでも工事は少しずつ進んだ。現在は1・1キロの道路用地で約140メートルの区間に座り込み、完成を阻む。

 支援の輪は全国に広がっているが、地元には厳しい目もある。

 ダムによる治水の恩恵を主張する川棚町の議会は、建設賛成の議員が圧倒的多数。昨年12月の一般質問では「自分中心の言動では支持できない」と、座り込みを非難する議員もいた。

 県は「地権者の約8割が同意した」と事業の正当性を主張する。土地収用法に基づき、13世帯の家屋を強制排除する権限も得た。中村法道知事の判断一つで排除も可能だ。

 「一度も同意していない事業がどんどん進められていく。抵抗するのは当然のこと」と岩本さんは反論する。町職員だったので、公権力の強さも、危うさもよく分かる。

 知事と住民の対話は19年9月以降、途絶えたまま。住民は県道工事の中止が対話の条件としているが、県は応じていない。

 間もなく千回を超える座り込み。参加者の多くは高齢で持病がある人もいる。「県はいつまでこげんこと続けさせる気か」。出口の見えない状況に、岩本さんはいら立ちを募らせている。 (岩佐遼介)

【ワードBOX】石木ダム事業
 長崎県と同県佐世保市が治水と水道水源の確保を目的に、川棚川支流の石木川に計画。1975年に国が事業採択した。当初の完成予定は79年度だったが、現在は2025年度を目標にしている。立ち退きを拒む13世帯の土地や建物は、土地収用法の手続きにより、19年9月に所有権が国へ移転。県は強制撤去できる行政代執行が可能になった。

◆2021年1月12日 長崎新聞
https://this.kiji.is/721740260402888704?c=174761113988793844
ー石木ダム付け替え道路工事 抗議座り込み通算1000回ー

 長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業に反対する住民らが、県道付け替え道路工事現場で続ける抗議の座り込みが12日、通算千回に達した。
 座り込みは、県が付け替え道路工事に着手した2010年3月から断続的に実施。住民によると、県側が工事再開を伝えた16年7月25日からの「第4次」が通算千回になった。
 12日は、住民や支援者ら通常より多い約50人が集まり、「いい加減にせんかい」などと書かれた横断幕を広げて抗議。住民の岩下すみ子さん(72)は、活動を記録するノートに「1000日」と書き込んだ。「まさかこんなに長引くとは」と苦笑いを浮かべ、「この場所で仲間たちと会うと力が湧く。ダム計画中止を勝ち取るまで諦めない」と決意を新たにしていた。

 座り込み場所は当初、付け替え道路工事現場入り口だったが、17年8月以降は現場内に移った。現在の場所を含む約140メートルの区間で工事が遅れている。県側は昨年10月に住民らの帰宅後に重機を入れたり、同12月に防護柵を設けたりして当該区間の盛り土工事を試みたが、いずれも住民側が阻止。同10月以降、住民側は座り込みの時間を夕方まで延長したり、土曜日や祝日も現場に通ったりして警戒する。このため県は盛り土工事の工期を複数回延長し、昨年末にいったん打ち切った。

◆2021年1月13日 朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/ASP1D6T62P1DTOLB002.html
ー支援者に支えられた1千日 石木ダム反対運動ー

 石木ダムの建設に反対する長崎県川棚町の水没予定地・川原(こうばる)集落の住民の運動は、ダム問題を自分のこととしてとらえる支援者たちに支えられてきた。12日、1千日を迎えた建設現場での座り込みにも支援者の姿があった。

 ダム事業の目的の一つは隣の佐世保市への水道水供給だ。2010年3月の第1次座り込みから参加している同市の宮野和徳さん(76)は「ダムの受益者とされている私自身の問題。沖縄の基地問題が、日本人である私の問題であるのと同じです。佐世保の水は足りている」と語る。

 宮野さんと同時期から支援を続けている同市の松本美智恵さん(69)は「座り込みに象徴される住民の揺るぎない思いがあるから、県は本体着工さえできない。裏を返せば、住民や県民を納得させる正当性がないということ」「水はあるに越したことはないでしょうが、住民の人権と秤(はかり)にかければ、今は、足るを知るべき時です」。

 座り込みの住民も、支援者も70歳前後。川原集落の石丸勇さん(71)は「支援者は、自分は当事者という意識で来てくれる。頭が下がります」と話していた。(原口晋也)
 

◆2021年1月13日 毎日新聞長崎版
https://mainichi.jp/articles/20210113/ddl/k42/040/356000c?pid=14613
ー石木ダム座り込み1000回 「みんなの結束は誇り」ー

 県と佐世保市が川棚町に建設を計画する石木ダムを巡り、水没予定地の住民らによる抗議の座り込みが12日、1000回を迎えた。現場には住民の他、長崎市や福岡市などからの支援者ら約40人が集まり、「抗議の座り込み1000回」の横断幕が掲げられた。

 座り込みは県が県道の付け替え工事を再開した2016年7月25日に開始。ダム建設反対の住民の意志が揺らぐことはなく、年末年始などを除き座り込みを重ねてきた。

 ダムの建設計画を巡っては、国の事業認定取り消しを求めた訴訟の敗訴が確定し、強制的に立ち退かせる県の行政代執行が可能になるなど、水没予定地の13世帯約50人の住民を取り巻く環境は厳しさを増している。昨年12月には県が盛り土作業を再開し、工事現場に住民が入らないよう柵を設置した。

 住民の一人、岩下すみ子さん(72)は「ダムに反対しながら亡くなった住民の思いも背負って闘っている。県には納得いく話し合いをしてほしい」と語った。週2回ほど座り込むという佐世保市の70代女性は「こうしてみんなが結束して集まるのは誇りです」と話した。【綿貫洋】

◆2021年1月13日 長崎文化放送
https://news.yahoo.co.jp/articles/f5ea8bd667d2df2f4d33a46a3ce66c9f7309f16e
ー【長崎】石木ダム抗議の座り込み1000回ー

 長崎県と佐世保市が東彼・川棚町で進める石木ダム建設事業。県道の付け替え工事現場で続く反対住民らの座り込みが12日で1000回になりました。反対住民らの抗議の座り込みは2016年7月25日からほぼ毎日続いています。12日も午前8時前から「石木ダムは要らない」などとプリントされたシャツを着た約40人の住民らが集まりました。厳しい冷え込みの中の座り込み。焚き木で暖をとり、寒さを乗り切ります。「長崎県は、いい加減にせんかい!抗議の座り込み1000回」と書かれた横断幕を持ってダム建設反対への強い意思を示します。石木ダム建設を巡ってはおととし5月、長崎県収用委員会が建設に必要な住民らの土地の収用を認め、9月に土地の所有権が国に移りました。長崎県は行政代執行による強制収用が可能になっています。長崎県は今年度中に石木ダムの本体工事に着手する方針で、2025年度の完成を目指しています。