滋賀県知事時代に国に先駆けて「流域治水」に取り組んだ嘉田由紀子参院議員は、昨年7月の熊本豪雨による球磨川の大水害発生後、現地を丹念に調査した結果を発信しています。昨日はオンラインで講演が配信されました。
国土交通省は球磨川水害の後、中止していた球磨川支流の川辺川ダム計画が実現していれば、犠牲者をかなり減らすことができたとして、川辺川ダム計画を蘇らせようとしています。しかし、嘉田氏の調査結果によれば、たとえ川辺川ダムがあったとしても、50人の死者の一人として救うことができなかったとのことです。
国土交通省は2019年の東日本台風による水害以降、流域全体で治水対策を考える「流域治水」に取り組む方針を打ち出していますが、これまで水害の一人一人の犠牲者の死因を詳しく調査し、これを治水対策に活かすという作業を行ってきていません。
◆2021年2月23日 熊本朝日放送
https://www.kab.co.jp/news/?NewsData=202102232146.php&path=video/202102232146.mp4&mode=1
ー熊本豪雨 流域の50人球磨川の水位ピーク前に死亡 ダムの効果に疑問もー
熊本豪雨で亡くなった50人が球磨川の水量がピークに達する前に支流などの氾濫によって亡くなっていたとする調査結果が報告されました。
嘉田由紀子参議院議員が23日オンラインで講演会を開き報告しました。
熊本豪雨では65人が亡くなっていて、そのうち球磨川流域で亡くなった50人の死因や当時の浸水状況、150人の流域住民からの聞き取り調査の結果、球磨川の水量がピークに達する3時間から5時間前には支川などの氾濫で溺死しているとしました。
これを踏まえ、川辺川ダムで球磨川の水位上昇を抑えたとしても住民の命を守れたのかは分からないとしました。
◆2021年1月26日 熊本日日新聞
https://kumanichi.com/news/id86271
ー嘉田氏、熊本豪雨の独自報告書 「ダムでも犠牲者救えず」ー
元滋賀県知事の嘉田由紀子参院議員(無所属)が、昨年7月の熊本豪雨で犠牲になった球磨川流域の50人について、「川辺川ダムが完成していても、一人も救われなかった」とする独自の報告書をまとめた。現地調査を踏まえ、ダムによる水位低下効果が現れる前に、既に全員が死亡していたと推定した。
嘉田氏はことし1月までに計4回、「7・4球磨川流域豪雨被災者・賛同者の会」の協力で被災地を訪ね、犠牲者の住居や死亡の状況などを調べた。
その結果、全員が球磨川がピーク流量に達する前の4日午前7~9時に死亡したと推定。「ダムがあれば命が救われたと推測できる人数はゼロ」と結論付けた。特に、20人が犠牲となった人吉市では、住民の証言を基に本流より支流や水路が氾濫した影響が大きかったと指摘した。
一方、犠牲者の6割に当たる30人の住居が平屋であった点や、高齢者世帯が多かったことにも注目。2階建てへの建て替え推奨や、避難が難しい高齢者や障害者に対する支援の必要性を訴えた。
滋賀県知事時代、住民参加型の総合的な流域治水を進めた嘉田氏は、国が進める球磨川流域治水策の検討には「住民の視点が欠けている」と問題提起。「ダムがあってもなくても、住民自らの『備える』『逃げる』行動は重要。犠牲を教訓に、多重防護の流域治水を進めてほしい」と話す。(並松昭光)