球磨川にある電源開発(株)の瀬戸石ダムは、これまでも河川環境を悪化させるとして流域で撤去を求める運動がありましたが、昨年7月の球磨川水害の際には、水害を拡大させた疑いがあり、熊本県の市民団体が県や電源開発に対して公開質問書などを提出して真相の究明を求めてきました。
電源開発は水害発生から7カ月以上たって、ようやく調査結果を発表しましたが、第三者による検証ではないことから、その信憑性も定かではありません。水害前から堆砂が問題となっていた瀬戸石ダムの湛水域には、昨年7月の豪雨で流れ込んだ土砂が堆積しています。
電源開発が発表した「瀬戸石ダムの影響で球磨川の水位が大きく上昇した事実は認められなかった」という調査結果は、次のURLで見ることができます。
★瀬戸石ダム・発電所の状況について(2021年2月付) 2021年2月19日 電源開発株式会社
https://www.jpower.co.jp/oshirase/2021/02/oshirase210219.html
しかし、球磨川の治水対策の問題に長年取り組んできた嶋津暉之さんは、瀬戸石ダムの影響で河川水位が大きく上昇した事実はないと本当に言えるのか、大いに疑問だといいます。
以下の図は、国土交通省が昨年12月23日に開催した球磨川「流域治水プロジェクト」に関する「学識経験者等の意見を聴く場」の配布資料にあったもので、昨年7月の球磨川豪雨の計算水位のグラフです。嶋津さんは、このグラフでは瀬戸石ダムのところで球磨川の水位が4~5m上昇していることを指摘して、瀬戸石ダムの影響が小さいとは言えないとしています。
国土交通省九州地方整備局 八代河川国道事務所ホームページ 球磨川流域治水協議会・令和2年7月球磨川豪雨検証委員会より「学識経験者等の意見を聴く場」(令和 2年12月23日開催) 説明資料2(2/2)
関連記事を転載します。
◆2021年2月23日 朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/ASP2Q6WRZP2NTLVB002.html?iref=pc_ss_date_
ー水位の大幅上昇「瀬戸石ダムの影響なし」 電源開発ー
球磨川中流の瀬戸石ダム(熊本県芦北町、球磨村)を運営する電源開発(Jパワー、東京)は19日、昨年7月の記録的豪雨時にダムの放流は適正に行われ、ダムの影響で水位が大きく上昇した事実は認められなかったとの調査結果を公表した。豪雨で被災したダムは発電を停止している。
Jパワーによると、豪雨時のダム地点におけるピーク流量は洪水の痕跡調査の結果などから毎秒約1万トンと推定した。豪雨の際、ダムは昇降式ゲートを全開にして水量を調整。7月4日午前3時以降はダムに流入する水量がそのまま流下する状態となり、水位はダムより下流約300メートルの狭窄(きょうさく)部から徐々に上昇したという。ダム地点でも水位上昇は確認されたが、「ダムが水をせき止めて水位が大幅に上昇した事実は認められなかった」とした。
潜水調査でダムの安全性は確認されたとして、発電設備の早期復旧をめざす方針も示した。具体的な復旧時期は未定という。
蒲島郁夫知事は19日、「今回公表された内容は県でも確認し、河川管理者で瀬戸石ダムの設置許可権者である国土交通省においても確認されたと聞いている」などとコメントを発表。Jパワーに今回の調査結果や住民の要望・意見に対して説明責任を果たすことなどを要請した。
一方、市民団体の「瀬戸石ダムを撤去する会」は瀬戸石ダムがあるため水位が上がり、洪水被害を大きくしたとみている。土森武友・事務局長は「(Jパワーは)4日午前3時半のダム湖の水位は46メートルで自然流下状態を継続したとしているが、同11時から正午のピーク時には53メートルに上昇している」と指摘。堆積(たいせき)した土砂の排除計画は過去に国に出していた計画と異なるなどと疑問点を挙げ、批判した。Jパワーに質問書を提出するという。(伊藤秀樹、村上伸一)
◆2020年12月8日 熊本日日新聞
https://kumanichi.com/news/id16767
ー電源開発、質問書に答えず 瀬戸石ダム撤去する会が抗議 熊本豪雨ー
球磨川の瀬戸石ダム(熊本県芦北町、球磨村)が7月の豪雨災害に与えた影響について、ダムを管理する電源開発(Jパワー、東京)に質問書を提出した市民団体「瀬戸石ダムを撤去する会」は7日、「期限を過ぎても回答がない」として同社に抗議文を送付した。
同会は10月8日、豪雨当日のゲート操作の詳しい状況や、ダムを撤去する意思があるかなど13項目の質問書を提出した。同会によると、Jパワーは11月20日までに回答するとしていたが「調査結果をこれから取りまとめる」として、延期した。
八代市で会見した同会の出水晃共同代表(76)は「ダムが流れを妨げ、被害が拡大したのは明らか。それなのに回答を引き延ばすJパワーの姿勢は、住民をないがしろにしている」と憤った。
Jパワー南九州電力所は「詳しい検証の最中で回答ができていない。結果がまとまり次第、内容を会に説明する」としている。(益田大也)
—転載終わり—
瀬戸石ダム下流の球磨川流域住民のツイートより
瀬戸石ダム、水害拡大の検証を補償交渉利害関係者によるものしか行っていないという状況にて、右岸側の痕跡水位欠測という残念な精度にて証明するという力業でした。さらに、上流や支流の堆積物による河床上昇エリアの水害拡大については記述無し。すごいなと。人災が天災に。https://t.co/mLAlkc06ID
— kumakappa (@kumakappa) February 20, 2021
加害側当事者による調査にて核心部分の情報を隠し、過失はありませんでしたと主張した。メディアや行政が見てみぬふりを続け、鵜呑み追従をしながら被害者の声を黙殺する事が前提にあるからこそ出来るプレスリリースなのではないかと見ている。被害者の絶望と憤りを想像して欲しい。
— kumakappa (@kumakappa) February 21, 2021