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川辺川の新ダム「重力式」に 国交省、「アーチ式」から変更

 昨年7月の熊本豪雨では、球磨川流域で50人の住民が亡くなり、流域は今も復興途上にあります。
 国交省は昨年7月の熊川水害発生直後から、球磨川支流に計画されながら一旦は中止された川辺川ダムの復活を目指して布石を打ってきました。新たな川辺川ダムの設計検討業務の入札も、すでに実施しているとのことです。
 一方、今も復興途上にある球磨川流域では、巨大ダムによる河川環境の悪化やダムによる治水の限界、緊急放流の危険性を訴え、ダム建設に反対する声も根強く、川辺川ダムの復活を容認した蒲島郁夫熊本県知事ですら、県議会で「まだ流域住民の理解が十分に得られていない気がする」と答弁するような状況です。
 国の巨大ダム計画と民意の乖離は、今後さらに広がっていくのではないでしょうか。

 関連記事を転載します。

◆2021年3月5日 熊本日日新聞
https://kumanichi.com/news/id133715
ー川辺川の新ダム「重力式」に 国交省、「アーチ式」から変更ー

 昨年7月の熊本豪雨で氾濫した球磨川の治水対策として、国土交通省が支流の川辺川への建設を検討している流水型ダムが「重力式ダム」になる見通しであることが4日、分かった。貯留型である現行の川辺川ダム計画では「アーチ式」だったが、流水型への転換に伴い変更する。

 重力式は、ダム本体の重量で水圧を支える構造。一般的に、アーチ式に比べてダム本体の厚みが増し、建設に用いるコンクリート量も増える。環境に与える影響も変化しそうだ。

 国交省九州地方整備局が4日まで公告していた流水型ダム検討業務の入札で、2010年度以降、重力式ダム本体の実施・詳細設計の実績があることを要件に盛り込んだ。

 一方、アーチ式は普段から水を貯留することを前提とした構造のため、水をためない場合に地震の横揺れに耐えられるかどうかは想定していないという。このため地震が多い日本では、普段は水をためない流水型ダムでのアーチ式の採用は、難しいとされている。

 国内で完成している流水型ダム5基も、すべて重力式。同じく流水型として建設中の立野ダム(南阿蘇村、大津町)や、昨年11月に本体工事が始まり、完成すれば国内最大規模の流水型となる足羽川[あすわがわ]ダム(福井県)も重力式だ。

 また、蒲島郁夫知事による川辺川ダム計画の白紙撤回表明直前の08年8月、国交省が県に示した流水型案の概要でも、重力式と明記していた。

 国は、本年度内の成立が確定した21年度予算案に、流水型ダムの調査費を含む川辺川ダム事業関連費5億5500万円を計上。建設候補地、ダム本体の高さや総貯水容量といった規模・構造の検討に充てるほか、候補地周辺の「環境調査」も実施するとしている。

 国交省治水課は「流水型ダムは重力式で建設することが多いのは事実だが、川辺川の流水型ダムについて、具体的な検討に入っているわけではない」と強調している。(嶋田昇平)

◆2021年3月5日 熊本日日新聞
https://this.kiji.is/740388863951650816?c=92619697908483575
ー「住民理解、十分でない」 流水型ダム巡り蒲島熊本県知事ー

  蒲島郁夫熊本県知事は4日の県議会代表質問で、球磨川の治水対策として支流の川辺川への建設を国に求めた流水型ダムについて、「まだ流域住民の理解が十分に得られていない気がする」との認識を示した。

 流水型ダムは、国が2021年度に調査・検討を進める。蒲島知事は、その過程で国からダムの構造や整備スケジュール、環境配慮の方策などが順次示されると答弁。「さまざまな機会を捉えて流域住民に説明を行うことで理解を深める」と強調した。

 一方、治水の方向性の前提として掲げた「命と環境の両立を目指す」との自身の方針は「おおむね理解を頂いているのではないか」と述べた。

 県は、球磨川の環境に極限まで配慮したダム整備が進められているかどうか、市町村や流域住民と確認する仕組み作りも国に提案している。この点について蒲島知事は「検討を進めており、できる限り早く実施したい」とした。

 自民党県議団の小早川宗弘氏(八代市・郡区)と、立憲民主連合の磯田毅氏(同)への答弁。(内田裕之)