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流域治水関連法案、本国会で審議

 2月2日に閣議決定された流域治水関連法案(特定都市河川浸水被害対策法等の一部を改正する法律案)の審議が今国会の衆議院で始まりました。

★国土交通省ホームページ 流域治水関連法案
 https://www.mlit.go.jp/river/kasen/ryuiki_hoan/20210202.html 

 これまでの洪水対策は、ダム等の巨大なハード施設の整備に重点が置かれてきましたが、それだけでは近年の豪雨で水害を防げないため、国土交通省は流域全体でハード、ソフト両面で対策を行い、洪水を受け止める「流域治水」に方針を転換しようとしています。しかし、すでに始まっているダム事業は継続され、既存のダムは再生事業等によって活用することになっていますので、「ダム依存からの脱却」とは必ずしも言えません。
右図=国土交通省ホームページ 流域治水関連法案「概要」より

 水害の危険性が高い地域からの移転を促進するなど、「流域治水」を進めるための法律ができるのは望ましいことですが、今回の法案は構成が複雑で、どこまで有効に働くものなのか、よくわからないところがあるとの指摘もあります。

 滋賀県では嘉田由紀子前知事時代、国に先んじて流域治水に取り組みました。滋賀県の流域治水推進条例 は200年に一度襲う規模の洪水を想定して(第13条)、浸水警戒区域を指定することになっているのに対して、流域治水関連法案は想定洪水規模のことは書いてありません。水源開発問題全国連絡会共同代表の嶋津暉之さんがこのことを担当者に確認したところ、数十年に1回規模の洪水を想定しており、法律の施行通知で書くことになるという説明であったということです。

 関連記事を転載します。

◆2021年3月24日 しんぶん赤旗
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik20/2021-03-24/2021032402_02_1.html
ーダム依存から転換を 流域治水関連法案 高橋氏が質問 衆院本会議ー

 同法案は、ダムと堤防による従来の治水対策が降雨量の大幅増で限界にきているとして、遊水池や雨水貯留施設の整備、浸水地域の開発規制、利水ダムの事前放流の拡大など、流域全体での対策へと見直すもの。共産党は、ダム依存から脱し、流域治水対策を強化するよう繰り返し求めてきました。

 高橋氏は、昨年の九州豪雨で氾濫した球磨川(熊本県)をめぐり、国土交通省が「川辺川ダムがあれば被害は軽減された」と発言したと指摘。地元は数十年にわたる議論の末、2008年に「ダムによらない治水対策」を決断したのに、ダムに固執する同省により河川整備計画がつくられなかったと批判しました。

 その上で、氾濫を受けた球磨川の治水対策案には、同省が不可能だと言い続けてきた河道掘削などが盛り込まれていると述べ、「12年前から対策を進めていれば、昨年の被害は軽減されていたのではないか」と国の責任を追及。赤羽一嘉国交相は、対策を「着実に実施してきた」と強弁しました。

 高橋氏は、「浸水被害防止区域」を創設し、開発・建築を規制することについて、「防災集団移転の際の自己負担分、移転元と移転先の地価逆転による不利益も考慮した支援策を検討すべきだ」と強調しました。

https://www.jcp.or.jp/akahata/aik20/2021-03-24/2021032404_04_0.html
衆院本会議・流域治水関連法案
高橋議員の質問(要旨)

 日本共産党の高橋千鶴子議員が23日の衆院本会議で行った流域治水関連法案に対する質問は次の通りです。


 近年、毎年のように甚大な豪雨災害が発生しています。昨年7月の社会資本整備審議会答申では、2度上昇までに抑えても、降雨量は約1・1倍、洪水発生頻度は約2倍と試算し、従来の管理者主体の事前防災対策だけではなく、「集水域と河川、氾濫域を含む流域全体、流域の関係者全員参加で被害を軽減させる」流域治水への転換を提言しました。

 治水計画等に、将来の気候変動による降雨量の増大を見込むとしていますが、その見込み量をどう試算するのですか。

 国交省は、昨年7月の九州豪雨をうけた「球磨川豪雨検証委員会」の初会合で、「川辺川ダムがあれば被害は軽減された」と発言。蒲島熊本県知事がダム建設を容認しました。

 川辺川ダムをめぐっては、数十年にわたる住民、有識者らの検討を経て、2008年「ダムによらない治水対策」を決断しています。しかしダム建設に固執する国交省によって事実上棚上げされ、河川整備計画もつくられていません。現在進められている球磨川流域治水対策プロジェクト案には、「ダムによらない治水を検討する場」で議論された意見や、国交省ができないと言い続けた河道掘削等も盛り込まれています。12年前から対策を進めていれば、昨年の被害は低減されていたのではありませんか。

 18年の西日本豪雨では、洪水調節を行った213ダムのうち8ダムが、翌年東日本台風では、6ダムが、いわゆる緊急放流を行いました。本案では、河川管理者、電力会社などの利水者による法定協議会を設置し、事前放流が可能なダムを増やすとしています。どう増やしていくのですか。また、ダムの洪水調節容量を広げるため、堆砂除去は有効です。緊急浚渫(しゅんせつ)事業費を補助制度にする考えはないのですか。

 法案では、流域水害対策計画を策定すべき特定都市河川を増やすといいますが、その趣旨を伺います。

 浸水被害防止区域を創設し、開発や建築行為について規制します。これまで、十分な情報提供がされないままの造成宅地の被害が多くありました。防災集団移転を行う際の自己負担分、移転元と移転先の地価の逆転による不利益も考慮した支援策を検討すべきです。

 法案では、民間の施設などによる雨水貯留浸透施設の整備を進めるため、補助や固定資産税減免を行います。一方、保水、遊水機能を有する土地を貯留機能保全区域として知事が指定しますが、ここにも固定資産税などの減免措置を考えるべきです。

◆2021年3月30日 exciteニュース
https://www.excite.co.jp/news/article/Fujiyama_water_11196/ 
ー国土交通省 浸水リスクの高い区域の特定施設を建築許可制へー

 国土交通省は、流域治水関連法案を今国会に提出することを明らかにした。法案では、大都市を前提として作成された、浸水対策に関する「特定都市河川浸水被害対策法」を改正し、対象を川幅が狭いところや本流と支流の合流部など、全国の氾濫しやすい河川に変更する考え。

 氾濫リスクの高いところを「浸水被害防止区域」として指定し、建築許可制にしていく方針。浸水被害防止区域への指定は、各都道府県知事が行なう予定で、指定された区域では、病院や高齢者、障害者、乳幼児の利用する施設は、建築前の完全確認を必要とし、建築物の強度や居室の高さなどの安全基準が確保されなければ、建築許可が下りないとする見込み。

 浸水リスクが高いと判断された区域から、防災目的で安全なエリアへ集団移転する場合の支援も拡充とし、住宅を兼用している高齢者施設の移転は経費を補助する考え。浸水リスクが高い区域への対策は、川沿いの低地を保全するのが目的で、河川氾濫対策として一定の効果があるとされる「田んぼダム」などを充実させる狙いがある。今回提出される改正案では、水田を含む川沿いの低地を「貯留機能保全区域」に指定することも盛り込まれ、開発については都道府県への届け出が必要となる。