浸水危険区域は建設許可制に 熊本豪雨・千寿園の教訓

 昨年7月の球磨川水害で最も犠牲者が多かったのは、老人施設、千寿園での浸水被害でした。
 千寿園のあった球磨村は人吉盆地の下流側にあり、球磨川が川幅を狭め、両岸に崖が迫る土地で、安全な土地がもともと少ないところです。千寿園は球磨川に支流の小川が合流する地点にあり、球磨川の中でも特に水害リスクの高い土地で、かつては田畑として利用されていたということです。
 水害がたびたび襲う土地は、安価で空き地が入手しやすいことから、近年、数多くの老人施設が建設されてきましたが、ひとたび水害となると、避難が容易ではなく、これまでも多数の犠牲者を出してきました。
 国交省と厚労省が共同で開催してきた有識者検討会は、千寿園の教訓を踏まえ、浸水危険区域での高齢者施設の建設を許可制にしていくという提言を今月中に公表するとのことです。

*参考ページ 「令和2年7月豪雨災害を踏まえた高齢者福祉施設の避難確保に関する検討会」
 厚生労働省ホームページ https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-rouken_520284_00015.html

 地元紙によれば、千寿園は現地での再建をあきらめ、人吉盆地の仮施設で4月に再開されるとのことです。

◆2021年3月19日 西日本新聞
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/709313/
ー浸水危険区域は建設許可制に 熊本豪雨・千寿園の教訓ー

 熊本県球磨村の特別養護老人ホーム「千寿園」で犠牲者が出た昨年7月の豪雨被害を受け、高齢者施設の防災対策のあり方を議論してきた国土交通省と厚生労働省の有識者検討会は18日、政府への提言を大筋でまとめた。両省はこれを踏まえ、水害リスクの高い地域への施設などの建設を許可制にする方針を示した。今国会で水防法など関連法の改正を目指す。

 千寿園の立地場所は水害リスクが高いことで以前から知られていた。このため検討会は、高齢者施設を災害リスクの低い地域へ誘導したり、リスクの高い地域への立地を防いだりする施策の必要性を提言した。

 両省が明らかにした対策によると、まず大雨による浸水リスクが高いと判断した場所を「浸水被害防止区域」として指定する新たな制度を創設。その上で、高齢者、障害者、乳幼児らが利用する施設、病院、住宅などを同区域に新築する場合、知事の許可制とする。知事は設計段階で居室の高さや強度が確保できるかどうかを確認する。

 また危険性が高いと判断すれば、知事が同区域内の建物の移転を勧告できるようにする。国は現在、災害が起きた場合に住宅の集団移転を補助しているが、新たに浸水被害防止区域も対象にする。住宅と一緒に移る高齢者施設の経費も補助し、移転を促す。

 千寿園は避難計画を作成し、訓練を実施していたのに犠牲者が出た。提言は施設側が水害や地震など災害ごとに避難先を選ぶのは難しく、市町村の支援が必要だと指摘。国はこれを踏まえ、市町村が施設側に助言や勧告する制度を創設する。 (鶴加寿子)

◆2021年3月19日 CBNewsマネジメント
https://www.cbnews.jp/news/entry/20210319161022
ー高齢者福祉施設の避難について取りまとめ、年度内公表へ 厚労省・国交省検討会ー

 2020年7月の豪雨災害で浸水した特別養護老人ホーム「千寿園」で14人の死者が出たことを受けて、厚生労働省と国土交通省は18日、避難の実効性を高める方策についての共同検討会を開催。この日を最終とし、おおむね了承された取りまとめの案について、鍵屋一座長(跡見学園女子大観光コミュニテイ学部・教授)と事務局で最終調整し、20年度内に公表する。【斎藤栄子】

 厚労省と国交省が共同開催する「令和2年7月豪雨災害を踏まえた高齢者福祉施設の避難確保に開する検討会」は3回の審議を経て、「高齢者福祉施設における避難の実効性を高める方策について(案)」を取りまとめた。

 案は、20年7月球磨川流域の衰雨災害の概要に始まり、高齢者福祉施設における避難の課題として、▽過去の災害において明らかになった課題と対応▽千寿園の避難に開する主な課題▽全国の高齢者福祉施設の避難体制の現状-を盛り込んだ。また、避難の実効性を高める方策として、▽避難確保計画等の内容や訓練の内容に開する事項▽利用者の避難支援のための体制や設備に開する事項-と、取り組みの留意点などで構成された。

 全国の高齢者福祉施設の避難体制の現状について、実態調査の結果では(20年10月31日時点)、7531施設のうち、洪水浸水想定区域内にある施設は2048施設、土砂災害讐戒区域内にある施設は1085施設で、両方の区域内にある施設は106施設あった。また、避難確保計画等に定めている避難先は(有効回答5488施設)、「施設内の安全な場所」が約52%、「自治体の指定する避難先」が9約34%、「同一法人(グループ法人を含む)が経営する他の施設」が約14%たった。(残り746字/全1453字)

◆2021年3月25日 熊本日日新聞
https://news.yahoo.co.jp/articles/488bf92e98b409d208a5fa938657308c275654b4
ー熊本豪雨被災の「千寿園」、4月12日にも再開ー

 昨年7月の豪雨で入所者14人が犠牲となった熊本県球磨村の特別養護老人ホーム「千寿園」を運営する社会福祉法人「慈愛会」は24日、人吉市下原田町の仮施設で4月12日にも事業を再開する方針を明らかにした。

 代理人の弁護士によると、プレハブの仮施設は3月末に完成予定。被災前に特養を利用していた13人を4月中に順次受け入れる。ショートステイ(短期入所)利用者の受け入れは5月以降。

 慈愛会は被災後、職員88人の約9割を解雇。事業再開後は、再雇用を含む35人で利用者をケアする。

 千寿園は、豪雨で氾濫した球磨川と支流・小川の合流点近くに立地。水害のリスクなどを考え、現地での再開を断念した。早急に移転できる適地が村内にはなく、隣接する人吉市で仮施設の整備を進めていた。(小山智史、中村勝洋)