さる5月31日、熊本県の3つの団体が連名で、球磨川水害の検証について国に要請書を提出しました。
要請書は右下の画像、あるいは以下のページをクリックするとご覧いただけます。球磨川の水害対策を考える上で大変重要なことが書かれていると思います。
➡「国土交通省への要請」(2021年5月31日)
赤羽一嘉国土交通大臣宛て
提出団体:「7・4球磨川流域豪雨被災者・賛同者の会」「清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会」、「子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会」
要請のポイント:
(1)球磨川の洪水で亡くなられた方々の原因調査
(2)堆砂土砂の掘削の再検討
(3)合流点の問題
(4)山の荒廃への対策
(5)破棄された緊急放流が示す矛盾
(6)既存施設が孕むリスクに関する説明責任
(7)住民主体の流域治水の実現
同じく5月31日には、この要請書と関連するシンポジウムがオンラインで開催されました。各報告者の報告はそれぞれ大変充実したもので、反響が広がっています。
以下にシンポジウムのプログラムを転載します。
各報告者の資料はこちらをご覧ください。
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第2回流域治水シンポジウム 「何が生死を分けたのか?」住民主体の流域治水を提案する
(令和2年球磨川流域豪雨被災地域からの発信)
第一部:基調報告 島谷幸宏(熊本県立大学特別教授)「球磨川の水害と流域治水」
第二部:個別報告 溺死被害者調査の結果から命を守る流域治水政策を提言する
講演① 地区別調査下流部から:森林と瀬戸石ダムの影響を考える つる詳子(八代市、自然観察指導員)
講演② 地区別調査中流部から:令和2年7月豪雨災害 球磨村からの報告 市花由紀子(「7・4球磨川流域豪雨被災者・賛同者の会」会員)
講演③ 地区別調査人吉盆地から:実態調査から何を学んだか 木本雅己(「清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会」事務局長)
講演④ 環境社会学的被害者調査の方法と経過~流域治水は住民主体で~ 嘉田由紀子(参議院議員、日本環境社会学会元会長、前滋賀県知事)
第三部:質疑応答(嘉田由紀子)
球磨川水害からの宣言文 木本千尋(「7・4球磨川流域豪雨被災者・賛同者の会」メンバー)
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関連記事を転載します。
◆2021年6月1日 熊本日日新聞
ー流水型ダムに不安、疑問 球磨川治水考えるシンポー
昨年7月の熊本豪雨で氾濫した球磨川の治水を考えるシンポジウムが31日、オンラインであり、参加者からは国が支流の川辺川に新設する流水型ダムに対する不安や疑問視する声が相次いだ。
シンポジウムは嘉田由紀子参院議員(無所属)らの呼び掛けで始まり、今回が2回目。市民や研究者ら196人が参加した。
「清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会」の木本雅己事務局長は、被災者らの聞き取り調査から、犠牲者の多くは球磨川支流の氾濫が原因だったと指摘。データを示して、「川辺川ダムの水位を制御しても、球磨川は影響を受けにくいと述べ、ダムの新設に疑問を投げ掛けた。
ほかは、球磨村渡の住民など3人が発言。「ダムの緊急放流への不安は強い。国は流水型ダムのデメリットも説明してほしい」といった注文もあった。(嶋田昇平)
ー犠牲者出た原因 国に調査を要望 被災者ら3団体ー
昨年7月の豪雨災害を巡り、「7・4球磨川流域豪雨被災者・賛同者の会」など3団体は31日、犠牲者が出た原因の調査など7項目を国土交通省に要望した。人吉市と東京の同省をオンラインでつなぎ、3団体からはメンバーら約10人が参加した。
3団体が事前に送付した赤羽一嘉大臣宛ての要請書では、「人吉市で20人が死亡したのは、球磨川本流ではなく支流の増水が原因。そこを解明せずに洪水には対処できない」と指摘。仮にダムで本流の水位を低下できたら被害を減らせた、とする国の主張に疑問を呈した。
川底の堆積土砂の撤去や、洪水を抑えるための山地保全、治水策協議の場への住民参加ーなど、ほかの項目についても改めて伝えた。同省担当者は、「要請を踏まえて具体策をとっていきたい」と述べるにとどめた。(中村勝洋)
★嘉田由紀子参院議員ホームページより
「「第2回流域治水シンポジウム」無事おわりました」
球磨川宣言 —私たちは被災してもなお川と共に生きる—
1. 球磨川は大地を形成し生態系を育む流域社会の宝であり、流域住民の暮らしはその恩恵の中にある。宝のまま将来世代に手渡すことが、いまを生きる私たちの責務である。
2. 自然豊かな球磨川は、長らく流域の暮らしを成り立たせてきた。川の豊かさは流域の山林の健やかさによって育まれてきたことから、私たちは山の健全性を求める。
3. 生態系の重要な構成要素である川は、流れ溢れる存在である。恵みを享受し減災しうる川との付き合い方を知るには、長く流域に住み続けてきた流域住民の知恵に学ぶ必要がある。
4. 日本は洪水を敵視し川の中に押し込めて早く流す基本高水治水政策をとってきた。それを現実化させる技術が連続堤防とダムだ。しかしこれらは川と流域社会を破壊する技術でもあることを、球磨川豪雨災害はこの上なく示した。
5. 基本高水治水は温暖化に伴う集中豪雨に機能不全であるばかりでなく、災害の激化に帰結した。ダムや水路や樋門は、緊急放流や急激な水位上昇、激甚な流れを促し、生命を脅かした。
6. 狭窄部や街中の支流や樋門付近の土石や流木の混じる濁流は、激甚な洪水を発生させた。生命を守る上で最も留意すべきは洪水のピーク流量ではなく、早い段階で生命が危機に晒される洪水が発生することだと、球磨川流域で私たちは確認した。
7. 温暖化に伴う集中豪雨は、山河を破壊し膨大な土石と流木を伴って、著しい破壊力を持つ洪水を流域のほぼ全支流で発生させた。そして流域各地で甚大な災害を発生させている。
8. いま国が進める流域治水の内実は私たちの考えとは異なる。私たちが求めるのは、川を育む森林と山地の保全、多様な主体を含む住民参加が担保された流域全体の豪雨対策であり、これを実現させる法の整備である。
9. 流域住民は長い歴史の中で、球磨川と共に生きる知恵を築き上げてきた。私たちは流域のこうした文化を、球磨川の豊かさと共に私たちの孫子に伝えていく。
10. 私たちはここで被災したが、これからも球磨川と共に生き続ける。川を壊す技術ではなく、 土地の成り立ちを踏まえ、省庁の縦割りに疑問を呈し、住民参加に基づく意思決定の上で、自然 豊かな川を実現するまちづくりや人間社会のあり方を求め続けることをここに宣言する