8月16日、猛暑のさなかに吾妻渓谷をハイキングしました。ネイチャーガイドによる報告と参加者の感想をお伝えします。
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《ネイチャーガイドの報告》
暑い太陽が照りつける中、10時30分に川原湯温泉駅に集合。
今回の参加者は小学生のお子さんを含め、全部で4人です。
少しでも涼しくなるため、国道沿いでなく渓谷の山沿いの遊歩道を下流に向かうことに。
瀧見橋へ向かう途中の緑の中、渓谷から風が吹いてきて「涼しい!」と皆で言い合いました。
渓谷に多いアブラチャン(油瀝青)の木はもう青い実をつけていて、皮や葉をこすると柑橘系の爽やかな香りがします。
(アブラチャンの実は、昔は灯明に使われていたそうです。http://www.m-sugi.com/51/m-sugi_51_iwai.htm)
瀧見橋から見た吾妻線の鉄橋の奥には最近橋げたが繋がった一号橋が見え、そこから視線を水面におろしたところ、なんと魚影が。およそ20cmくらい、10匹ほど。種名までは解らなかったのですが、初めてこの辺りで魚を見て大変驚きました。
ここ数日間まとまった雨が降っていないようで、白糸の滝も吾妻川も大変水が少なく、それで魚が見えたのかもしれませんね。
*吾妻川は上流の草津白根山麓から流れ込む支流の影響で、八ッ場ダム予定地付近は酸性です。このため、魚影を見ることはめったにありません。
瀧見橋から遊歩道の階段を上っていくと、薄紫色のコバノギボウシュがつぼみをつけ、オレンジサーモン色のフシグロセンノウが満開でした。
地面にはコナラの青いどんぐりが、枝ごと落ちて散らばっています。よく見ると、どんぐりの帽子には1ミリぐらいの穴、小枝は鋏で切ったようにまっすぐ切られています。
これは自然に落ちたものでしょうか? どんぐりの穴のまわりを爪で割ってみると、中に1ミリにも満たない透明な卵が。
ゾウムシのお母さんが、幼虫の住み家とご飯のためにつくってあげたどんぐりのゆりかごなのでした。
これは帰路の国道でもミズナラのどんぐりで見つかりました。
昨年は木の実の大不作の年でしたが、今年はどうでしょうか。
ゆっくり上っていくと、ニホントカゲの子どもが慌てて逃げていきます。メタリックブルーのしっぽが大変綺麗です。この日は三匹出会いました。
今年の春はあまり気温が高くなかったせいか、昨年の夏に比べて虫の数が少ないような気がします。本当なら真夏に渓谷遊歩道を歩けば、通称メマトイという黒い虫が顔の周りにうるさくまとわりついてきたり、蚊に刺されたりするのですが、今年は虫除けが要らないくらい、虫が少ないと思いました。
拠って、クモの数も少なかったです。昨年は群馬県の絶滅危惧種、トゲグモが「これのどこが絶滅危惧種なの?」と言いたくなるくらい、多くいたのですが、今年は一匹しかみつけられませんでした。
※トゲグモは自然度の高い、暗い森に住むそうです。
また、昨年と違うのは、秋の花が早く咲き出していることです。
ノブキ、オクモミジハグマ、モミジガサなどの白いキクの仲間、黄色や白のホトドギス(3種類)が目立ちました。
今回の花の目当てはイワタバコ、ソバナ、ギンバイソウでしたが、いずれも花は終わっており、やはり今年は秋がくるのが早いなという印象を持ちました。
ギンバイソウは吾妻渓谷が北限だそうです。見晴台の階段を過ぎたところの谷に沢山あり、梅形の花そのままに実になりかけていました。人間の手ぐらいの大きな葉が金魚のしっぽのように先割れしているので、花が咲いていなくてもみつけることができます。
他の観光客の方とは15人ほどすれ違いました。
家族連れや若いカップルさんで、午後は共同浴場王湯で汗を流していました。
今回は残念ながら動物を見つけることはできなかったです。
お昼を過ぎて雲行きが怪しくなってきたので、鹿飛橋からは駅まで国道を歩いて戻りました。
人工物があるところなら南極にもいるという普遍的なクモ、オオヒメグモの子ぐものまどいを突っついて「蜘蛛の子を散ら」したり、ジョロウグモの雌にちょっかいを出してブンブン体を揺らして威嚇されたり、クモを襲って卵を産み付けるベッコウバチが同じくらいの大きさのクモを抱えて休みながら飛んでいくところを見たりしました。
渓谷を臨む柵に手をつこうとしたら、動物の古い糞が。4月にも同じものを見ていますが、サルがこの柵に座っていたのでしょうか。
いつも思うことですが、殆ど日の当たらない渓谷遊歩道と日の当たる国道では全く環境が違うので、沿道の木の種類が同じでも見られる生きものの種類が違います。
川原湯温泉駅からは共同浴場王湯で休憩しました。聖天様露天風呂が閉鎖されたせいでしょうか、ひっきりなしにお客が入っており、夏休みからずっとお客が多いそうです。
その後は不動大橋で水がごくわずかの不動の滝を見て、道の駅八ッ場ふるさと館を経て、川原畑の盆送り、百八灯へ。
移転した三つ堂のそばで行われます。
19時ごろ物凄い豪雨に見舞われ、中止かと思われたのですが、国道の上を見上げたらともし火が見えました。
集まっていたのは70人ほどで、地元の方が小雨になったときを見計らい、傘を差し掛けて数本のろうそくに火をともし、大変幻想的でした。
ご先祖の霊を送るための行事ですから全く派手ではないのですが、それでも小さな打ち上げ花火が上がり、音が山にこだましました。
本当は煩悩の数だけろうそく108本ともすということですから、また来年見てみたいです。
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《参加者からの感想》
子供は、連れて行くのに一苦労でしたが、帰ってきたら、宿題の読書感想文を
「都会のトムソーヤー」から「虹色ほたる」というダムに沈む村にタイムスリップする話に換えていました。
また宿題の俳句では
「おれたちの 思い出こわす ダム建設」
と案を出していました。やはり、「美しい自然を残したい」と思った様子です。
暑い中、歩いた後、川原湯温泉に戻ると涼しくてほっとしました。湧き水も豊富で代替地とは大違いです。
ダムの水より、あの湧き水をボトルに入れ送ってくれたほうが何倍もうれしいとおもいます。
ダム予定地を生態系保全公園、歴史保全公園にするプランを皆で作ったらどうかなあと思っています。
吾妻渓谷の山道を歩いている時、鳥の巣をみつけました。
ヒナ鳥はいませんでしたが、フンがたくさん残っていました。
親鳥はヒナ鳥のために、いつも巣をきれいにするよう心掛けているので、フンが残っている巣は、普通の巣ではありません。
親鳥が命を落としたか、育児を放棄してしまったか・・・。ここにいたヒナ鳥はどうなったのでしょう。