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川辺川のダム計画復活へ向けて、「球磨川水系河川整備基本方針の変更」を審議する国交省資料

 国土交通省は昨年7月の球磨川水害を機に、球磨川支流の川辺川に計画された川辺川ダムを「流水型(穴あき、洪水調節専用)ダム」として復活させることになりました。
 さる7月8日、「球磨川水系河川整備基本方針の変更」を審議する国土交通省の小委員会の第1会議が開催されました。国土交通省のホームページに、川辺川ダム計画に関係するこの会議の資料が掲載されました。

★国土交通省 第112回 河川整備基本方針検討小委員会(令和3年7月8日開催)配付資料
https://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/shaseishin/kasenbunkakai/shouiinkai/kihonhoushin/dai112kai/index.html

 掲載資料のうち、資料2「令和2年7月豪雨について」 の5ページに下記の資料が掲載されています。

 わが国では、治水対策の対象とする大洪水の際の最大流量(基本高水流量)を決めて、これを一定程度差し引くことを目的にダム建設が行われます。
 基本高水流量は各水系の河川整備基本方針で決定されます。球磨川水系の治水基準点は、球磨川と川辺川の合流地点の下流にある人吉盆地にあります。
 現在の球磨川の基本方針の基本高水流量は7000㎥/秒ですが、上記の表によれば、2020年7月洪水の際、氾濫戻し流量(人吉地点より上流で川からあふれた流量)を氾濫の際の観測値に加算した数値は約7400㎥/秒とされ、これにさらに球磨川上流の県営市房ダムで貯めた流量を加算した数値は約7900㎥/秒となっています。

 基本高水流量を7000㎥/秒から7900㎥/秒以上に引き上げ、川辺川ダム(流水型ダム)を前提とする河川整備基本方針が新たにつくられていくことが予想されます。基本高水流量を高く設定すればするほど、机上で流量をカットできるダム計画が必要という結論になります。
 河川整備基本方針そのものには川辺川ダムは書かれませんが、基本方針が策定されると、基本方針を前提として、具体的な川辺川のダム計画を明記した河川整備計画が策定されることになります。河川整備計画はダム計画の上位計画となります。
 国交省は2007年に現在の球磨川水系河川整備基本方針を策定したものの、球磨川流域では川辺川ダム計画への反発が強かったため、川辺川ダムを明記した河川整備計画を策定できずにきました。

 球磨川流域では昨年の大水害の爪痕もいまだに生々しく、被災者にはかつてのようにダム反対運動を高める余裕はまだありません。しかし、流域の市民団体は専門家らとの合同調査を行っており、昨年の大氾濫では、川辺川の影響は比較的小さく、人吉付近で球磨川に合流する山田川等の支流、球磨村・渡で合流する小川など、川辺川以外の支流の氾濫の影響が大きく、仮に川辺川ダムが建設されていたとしても、大氾濫を防ぐ効果はあまりなかったという調査結果を示しています。
 「基本高水」を中心とした机上の計算では、実際の水害に対応できないことが明らかになりつつありますが、国交省はこれまで通り、ダム計画を最大の解決策とする治水に固執しているようです。