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大阪市、水道管交換の民営化計画頓挫 「採算取れない」と業者辞退

 大阪市は、水道管交換事業の民間移譲を計画していましたが、市の公募に応じた事業者2グループが採算取れないと辞退し、計画は頓挫したとのことです。
 2019年に施行された改正水道法は、水道施設や土地の所有権は国や自治体に残したまま、民間に運営権を一定期間移すコンセッション方式の導入を柱としており、水道事業の経営悪化に対応することを目的としていたはずです。けれども現状では問題解決には程遠く、現場をかき回しているだけのように見えます。

◆2021年10月1日 読売新聞
https://www.yomiuri.co.jp/national/20211001-OYT1T50097/
ー水道管交換の民営化「採算取れない」と業者辞退、大阪市「一から見直し」ー

 政令市で水道管の老朽化が最も進んでいる大阪市で、来年4月を目標に水道管交換事業を民間移譲する計画が頓挫したことがわかった。市の公募に応じた事業者2グループが9月、いずれも採算が取れないとして辞退した。全国の市町村に先駆けて水道事業を民間移譲するコンセッション方式を導入する試みだっただけに、他の自治体の動きにも影響を与えそうだ。(梅本寛之)

 全国の自治体では人口減少に伴って水道の料金収入が減り、水道管の更新が遅れている。こうした状況を打開するため、2019年にコンセッション方式の導入を柱とする改正水道法が施行。民間のノウハウを活用した水道の維持や補修の効率化が期待されていた。

 上下水道の歴史が古い大阪市では、市内の水道管(全長約5100キロ)のうち、40年の耐用年数を超えた割合(老朽管率)は51%(21年3月時点)と政令市でワースト。交換作業が追いつかず、老朽水道管の破裂などの事故が毎年、100件以上発生しており、市は昨春、民間に運営権を移して水道管の更新を迅速化する方針にかじを切った。

 従来の事業ごとに発注する手法では25~30年かかるが、市はコンセッション方式の導入で、22年度からの16年間で計1800キロ以上の水道管の交換を計画。事業計画策定から施工まで一括して移譲し、入札の手間を省いて更新作業を倍速化することで、37年度までに老朽管率を34%に下げることを目標にしていた。

 昨年12月締め切りの事業者公募には、水道事業者でつくる2グループが応募。市と意見交換を重ねてきたが、今年9月上旬に2グループとも辞退する意向を示した。

 関係者によると、市は「スケールメリット(規模効果)が生かせる」として、16年間の事業費総額を上限で3750億円と想定。しかし、2グループとも全体の企画調整にかかる費用なども含めて見積もりをした結果、最終的に採算が取れないと判断したという。

 市は2グループの事業者から聞き取りを行い、市の計画について検証する。

 市は年内に事業者を決め、来年2月の議会で承認を得る予定だった。市幹部は「この時期から新たに公募するのは不可能で、来年4月の民間移譲は難しい。水道管更新のあり方を一から見直すしかない」と話した。

 厚生労働省によると、全国の水道管の総延長は18年度で約72万キロ。老朽管率は17・6%で、今後20年間のうちに全体の約4分の1を更新する必要があるが、現状のペースはその半分程度にとどまる。このため国は今年9月以降、希望する自治体に経営コンサルタントなどを派遣し、民間のノウハウを活用した水道の維持や補修の効率化に取り組んでいる。

 ◆ コンセッション方式 =施設や土地の所有権は国や自治体に残したまま、民間事業者に一定期間、運営権を移す手法。行政は低コストでサービス向上が図れ、民間企業側は新たな商機につながる。PFI(民間資金を活用した社会資本整備)の一つで、空港や高速道路など料金徴収のある公共施設で活用されている。