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球磨川の治水対策、豪雨被災者らに説明会

  昨年7月の熊本豪雨で甚大な被害を受けた球磨川流域では、国土交通省と熊本県が最大支流の川辺川の巨大ダム建設を復活させ、これを主軸にした治水対策を進めようとしています。川辺川ダムの水没予定地、五木村では従来の川辺川ダム事業の時代に水没住民の移転がほぼ終了し、道路や橋の建設といった関連事業も進んでいます。それでもダム完成には10年以上かかるとされています。

 ダムを建設するだけでは流域の安全は確保できないため、国と県は宅地かさ上げ、輪中堤、遊水地などの対策も進める予定です。各地区ではこれらの対策について、住民対象の説明会が開催されています。しかし、行政の説明では治水対策による安心・安全がいつになったら確保できるのか明らかにされず、被災住民はどこで生活を再建をしたらよいかも決められず、復興の前途は大変厳しいようです。
 昨年の被災状況について、住民や市民団体、専門家が一件一件調査した結果では、昨夏の時点で仮に川辺川ダムがあったとしても、犠牲者を救うことはできなかったということです。

 正鵠を射たコラムや関連記事を紹介します。

◆2021年9月23日 西日本新聞 記者コラム
ー自宅再建したいのにー

 「ダム完成まではほったらかしですか」「とにかく安全な場所に帰りたいのに」。球磨村であった球磨川沿いの宅地かさ上げに関する説明会で、昨年7月豪雨で自宅を失った住民から、国の計画を不安視する声が相次いだ▼さまざまな治水策を組み合わせれば、2階まで浸水した家でも、場所によっては数十センチのかさ上げで豪雨に対応できる-。国の説明を要約するとこうなる。

 だが川辺川への流水型ダム建設は10年以上かかるとされ、遊水地の候補地の地権者から同意を得られるかは不透明だ

▼説明会では「この案では自宅再建を諦める人も出てくる」との声も。帰りたいのに、帰れない。住民の苦悩を改めて思い知らされた。 (中村太郎)

◆2021年9月24日 熊本日日新聞
https://nordot.app/813945918148755456?c=62479058578587648
ー国交省、宅地かさ上げで個別に目安 球磨川の治水策、芦北町で説明会ー

 国土交通省八代河川国道事務所は23日、昨年7月の豪雨で氾濫した熊本県の球磨川の治水策として計画している「宅地かさ上げ」と「輪中[わじゅう]堤[てい]」について、芦北町の2会場で住民説明会を開いた。かさ上げ高について、個別例を挙げて目安を示した。

 説明会は球磨村に続き2回目。豪雨災害での水位をベースに、河道掘削や流水型ダムの建設など治水策を取った上で求めた水位を基にかさ上げ高を算出。白石地区のある場所では、1・6メートルを目安に検討しているとした。

 同町では白石地区や鎌瀬地区など最大8カ所で対策を講じると説明。今後、対象世帯(約80世帯)に被災した建物の現状や、かさ上げを希望するかどうかを調査して実施戸数を決める。

 町大野出張所であった説明会には、白石地区や小口地区の住民約20人が出席。住民からは「地区を通る県道もかさ上げされるのか」「かさ上げ時の仮住まいはどこになるのか」などの質問が出た。

 この日、告[つげ]の生涯学習センターでもあり、鎌瀬地区の住民ら約10人が出席した。24日は、同町の吉尾地区である。(山本文子)

◆2021年9月25日 熊本日日新聞
ー球磨川治水 国変更案の容認明言 蒲島熊本県知事「迅速、着実な対策重要」ー

 蒲島郁夫知事は24日の熊本県議会本会議で、国土交通省が今月示した球磨川水系河川整備基本方針の変更案に関し「容認できないと国に伝える考えはない」と明言した。
 基本方針は、想定される最大規模の洪水に関し、人為的に調節する流量と河道に流す量を設定する。新たな案では、甚大な被害が出た昨年7月豪雨と同規模の雨が降った場合、ダムなどで流量をカットしても人吉市より下流の大部分で安全に水を流せる目安の水位を超える内容となっている。
 蒲島知事は、支流・川辺川の流水型ダムや遊水地などの整備構想に加え、「流域治水を多層的に進めることなどにより水位の低下や被害の最小化を図るとされている」と強調。「今できる最善の案。7月豪雨に対応していると受け止めており、ハード、ソフト両面から対策を迅速かつ着実に進めることが重要だ」と訴えた。
 知事提出議案などに対する質疑で、共産党の山本伸裕氏(熊本市1区)に答えた。(内田裕之)

◆2021年9月25日 NHK熊本放送局
https://www.nhk.or.jp/lnews/kumamoto/20210925/5000013541.html
ー去年7月豪雨で被害 八代市坂本町で今後の防災対策 説明会ー

 去年7月の豪雨で大きな被害を受けた八代市坂本町で、宅地のかさ上げなど今後の防災対策について、説明会が開かれました。
 八代市坂本町は、去年7月の豪雨で球磨川が氾濫し、大きな被害を受けました。

 25日、坂本町の5つの地区で、被災した住民を対象に今後の防災対策について、国や県などによる説明会が開かれました。
 このうち、午前中の説明会には住民およそ40人が出席し、担当者が被災した宅地を2メートルほどかさ上げする、浸水被害のおそれがある区域を堤防で囲む、球磨川の川底を大規模に掘削するといった防災対策を説明しました。
 住民側からは「大雨の時には土砂や流木が流れてきて、徐々に溜まっていく。定期的に川底を掘削してほしい」、「宅地をもっと高くかさ上げしてほしい」などと要望が出されていました。

 国などは、25日に説明した防災対策を令和11年度末までに、総事業費およそ1540億円をかけて実施することにしています。

◆2021年9月26日 読売新聞熊本版
https://www.yomiuri.co.jp/local/kumamoto/news/20210925-OYTNT50118/
ー治水、宅地かさ上げ説明 八代市など豪雨被災者らにー

 昨年7月の豪雨で甚大な被害が出た八代市坂本町で25日、球磨川の治水や輪中堤・宅地かさ上げに関する説明会が開かれ、被災者ら約200人が出席した。会場の坂本中体育館には、地区別の「かさ上げ高」を示した地図も貼り出された。

 旧小学校8校区のうち、5地区で被災した約350世帯を対象に、市が開催。国土交通省八代河川国道事務所の担当者が、球磨川の河道掘削などの実施規模を説明し、かさ上げの高さは最大で6メートル前後になるとの目安が示された。

 「高さの根拠」に対する質問について、国は「水位の低減効果を各地点で計算した」などと回答。「住民はいつ帰れるのか」「一刻も早く古里に戻りたい」という訴えも多く、国は「住民や地区の考えを確認しながら進めていきたい」と応じた。

 国は、流域の治水対策について2029年度までに総額約1540億円をかけて整備する方針も明らかにした。

 市は10月、各地区ごとの具体的な復興方法に関する懇談会を行う。

◆2021年9月26日 熊本日日新聞
https://news.yahoo.co.jp/articles/abffab213d940234e2a0e22ddd5f443dacfaecc7
ーかさ上げ最大6メートル検討 国交省、球磨川治水で説明会 八代市坂本町ー

 国土交通省八代河川国道事務所は25日、昨年7月の豪雨で氾濫した球磨川の治水策として、熊本県八代市坂本町で計画している「宅地かさ上げ」と「輪中堤[わじゅうてい]」について、最大6メートルの高さを目安に検討していることを示した。

 説明会を同町荒瀬の坂本中で、地区ごとに3回開き、住民計約190人が参加した。

 同省は、豪雨で水没した町内3地区25カ所の地盤高を調査。豪雨をベースに、川辺川の流水型ダム建設など治水対策を実施した場合でも球磨川の水位は、地盤高より0~6メートル高いと説明。市が策定したまちづくり計画と連携して、さらにかさ上げ高を高くする考えも示した。

 住民からは「昨年と同規模の大雨が降れば、示されたかさ上げ高では水没する」「避難先から早く戻りたい。かさ上げの完了はいつなのか」などの質問が出た。国交省は「現時点で完了時期は見通せない」と答えた。

 今後、かさ上げなどの進め方や、かさ上げと輪中堤の選択などについて、地区ごとに協議してもらう。(緒方李咲)

◆2021年9月26日 熊本日日新聞
ー流水型ダム建設に反対 市民団体が人吉市で講演会ー

 昨年7月の豪雨で氾濫した球磨川の治水対策として、国が支流の川辺川で検討中の流水型ダム建設に反対する市民団体が25日、熊本県人吉市で講演会を開き、「ダ
ムは洪水を防げず、清流も守れない」と訴えた。

 「清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会」(同市)の主催。新町町内会館で約50人が参加した。
 相良村の川漁師、田副雄一さん(51)は、国の旧川辺川ダム建設予定地(同村)近くの古いつり橋が、昨年の豪雨で流失しなかった事実を指摘。「川辺川上流の雨量は少なく、仮にダムがあったとしても洪水は防げなかった」と主張した。

 流水型ダムは、普段はダム堤下部の穴から水を下流に流し、大雨時に貯水する構造。同会事務局次長の緒方紀郎さん(58)=熊本市=は「穴が流木でふさがれ、一気に満水になる恐れがあり危険だ」と強調した。

 豪雨災害を調査した元滋賀県知事の嘉田由紀子参院議員も登壇し、理想の「流域治水」の考え方を紹介した。(中村勝洋)

◆2021年9月27日 朝日新聞熊本版
https://digital.asahi.com/articles/ASP9V7GYTP9TTLVB001.html
ー八代・坂本町地区で最大5~6メートルかさ上げ 国が治水対策説明ー

 昨年7月の豪雨災害で被災した熊本県八代市坂本町で25日、治水対策の一環として国が計画する宅地かさ上げなどについての住民説明会があった。市坂本支所があった坂本地区などの個別の住宅を対象に、最大5~6メートルから最小0~1メートルかさ上げする目安が示された。工期は今年度から約5年の見通しという。

 国はかさ上げや、集落を堤防で囲む輪中堤の整備を、八代市と芦北町、球磨村の計約50カ所で実施する方針。自宅のかさ上げが2メートルとされた住民からは「低すぎるのではないか」などの不満の声が出た。

 出席した国土交通省九州地方整備局八代河川国道事務所の担当者は、かさ上げの高さについて説明。球磨川の最大支流である川辺川に国が計画する流水型ダムや、田んぼに洪水時の水をためる遊水地の整備などを含む流域治水対策を取った上で、洪水時に想定される水位をもとに計算していると話した。(村上伸一)

◆2021年9月30日 熊本日日新聞
https://nordot.app/816161861184012288?c=62479058578587648
ー球磨川治水、一勝地かさ上げ 高さ目安「5メートル以上」も 国交省検討ー

 国土交通省八代河川国道事務所は28日夜、昨年7月の豪雨で氾濫した球磨川の治水対策として計画する「宅地かさ上げ」「輪中堤[わじゅうてい]」について、熊本県球磨村一勝地地区で地盤を上げたり堤防を築いたりする高さの目安を、最大5メートル以上で検討していることを明らかにした。

 同事務所は昨年7月豪雨での被災水位をベースに、川辺川での流水型ダムや遊水地など治水対策を整備した後に下がる水位を算出。現在の地盤の高さとの差を目安とした。

 住民説明会では一勝地、渡、三ケ浦地区の9集落で住宅ごとに目安を提示。広い範囲で0~3メートル程度が示される一方で、一勝地地区内にある淋集落の一部に5メートル以上と示される箇所もあった。

 同日夜、一勝地小であった説明会には住民45人が出席。参加者からは「かさ上げの高さが被災水位より低い。同程度でなければ、安全ではないと感じる」などの意見が出た。これに対し、松谷浩一村長は「工事期間を短くできるため住民も再建しやすい。避難路を早急に整備するなどして安全性を高めたい」と理解を求めた。(小山智史)