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荒川堤防の“弱点”解消13年遅れが明らかに

 荒川は埼玉県、山梨県、長野県の三県が境を接する甲武信ヶ岳を水源とし、埼玉県の平野部から東京の下町を流れ下って東京湾にそそぐ重要河川です。
 京成本線がこの荒川を渡るために架橋された荒川橋梁は、1931(昭和6)年につくられました。この地点の堤防は周囲より低く、洪水の際、水が溢れる危険性が高いことから、国は嵩上げ工事を行うことになっていますが、その完了予定が2024年度から37年度に延期されるとのことです。

 国交省が延期を明らかにしたのは、12月1日に開催された「荒川水系河川整備計画フォローアップ委員会」においてでした。
 委員会開催は国交省関東地方整備局ホームページのの記者発表に掲載されていますが、延期が明らかにされたはずの当日資料はまだ掲載されていないようです。(最終閲覧日2021年12月19日)
 
 ★記者発表資料「令和3年度 第1回 荒川水系河川整備計画フォローアップ委員会設置及び開催について」
  https://www.ktr.mlit.go.jp/kisha/river_00000602.html

 京成本線荒川橋梁の工事の遅れについての記事を紹介します。

◆2021年12月7日 日経XTECH
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00110/00269/?n_cid=nbpnxt_twbn
ー荒川堤防の“弱点”解消が13年遅れ、橋の架け替えルート変更でー

青野 昌行(日経クロステック/日経コンストラクション2021.12.07) 

 東京都東部を流れる荒川の堤防で弱部となっている鉄道橋との交差部について、かさ上げの完了予定が従来の2024年度から37年度に延期された。用地取得の範囲を縮小するため、橋の架け替えルートを現在の橋により近い位置へ変更。切り替え工事を多段階に分ける必要が生じて工期が延びた。事業費は364億円から730億円へと倍増した。国土交通省関東地方整備局が21年12月1日に明らかにした。

 架け替えルートを変更したのは、荒川を挟んで西側の足立区と東側の葛飾区を結ぶ京成本線荒川橋梁だ。葛飾区側の堤防では、鉄道と交差する箇所が周辺よりも約3.7m低く、計画高を満たしていない。増水時には、交差部からの越水によって堤防が決壊する恐れがある。そのため、関東地整では堤防の交差部をかさ上げする目的で、荒川橋梁を現在の橋の北側に架け替える事業を進めている。

 事業延長は、京成関屋駅から堀切菖蒲園駅までの1474m。そのうち橋を架け替える河川部の延長は534mだ。両側のアプローチ部は、足立区側が530m、葛飾区側が410mとなっている。

 当初は新橋を建設してから線路を一括で切り替えられるよう、現在の橋から北側に20m程度の離隔を取って架け替える予定だった。しかし、用地取得の範囲をできるだけ小さくしてほしいとの地元の強い要望を受けてルートを変更。架け替えルートを現在の橋の15m北へと当初計画よりも5mほど近寄せ、取得用地の面積を約7000m2から約3600m2へとほぼ半減させた。その一方で、アプローチ部では工程を何段階にも分け、線路を切り替えながら新ルートを建設する必要が生じ、工期が延びた。

 関東地整では、変更後のルートに基づく詳細設計を20年度に進めていた。詳細設計が終わって工期や事業費の見込みが立ったため、事業の再評価を実施。12月1日に開いた有識者による「荒川水系河川整備計画フォローアップ委員会」(委員長:田中規夫・埼玉大学大学院教授)で評価結果を示し、承認を得た。(以下略)

—転載終わり—

 なお、東京の荒川下流では、上流からJR東北線荒川橋、都道西新井橋、京成本線荒川橋梁、国道6号四つ木橋という4本の橋梁付近で堤防高が極端に低くなっている箇所があります。京成本線の荒川橋梁は架け替えが予定されているものの、他の3本の橋は架け替えが行われず、暫定対策のみとされています。

 一方、荒川では四つの橋梁の上流で荒川第二~第四調節池がつくられることになっています(総事業費は約1,670億円)。国土交通省の資料によれば、13年間かけて荒川中流部の非常に広い河川敷に長い堤防を築き、池内の掘削を行って洪水調節池をつくろうというものです。
 ➡〈参考記事〉「本当に必要なのか、荒川中流部に巨大な第二・第三調節池」