八ッ場ダム事業で2007年に移転した長野原東中学校には、桜の木が何本もありました。ほとんど伐られてしまいましたが、一本が残されて前橋の公園に移植されたことが、これまで美談として新聞に取り上げられてきました。その桜を「取り木」して育てた苗木がダム湖畔の校庭に植樹されたとのニュースが今朝の紙面に載っていました。
長野原東中学校は、もとあった場所の背後の山に造成された代替地に移転しています。一本残された桜は、なぜ移転した中学校の校庭ではなく、前橋の公園に移植されたのでしょう?
写真右=長野原東中学ゆかりの桜が植樹された「長野原さくら公園」。背後に付け替え国道の「めがね橋」。
代替地の中学校の校庭は、今回も植樹地に選ばれませんでした。苗木が植樹された「長野原さくら公園」はJR長野原草津口のそばにあり、寄贈された枝垂桜なども植えられています。ダム事業によって付け替えられた国道と鉄道の橋の間に挟まれた場所で、以前とは様変わりしていますが、もとの長野原東中学校はこのあたりにあったそうです。
◆2022年3月31日 上毛新聞
https://www.jomo-news.co.jp/articles/-/95104
ーサクラ苗木が里帰り 八ツ場ダム水没で校庭から前橋に移植 群馬・長野原ー
八ツ場ダム(群馬県長野原町)建設に伴い旧長野原東中校庭から前橋市に移植されたソメイヨシノから苗木を作り、育てた「後継樹」2本が30日、故郷に当たる同町に植樹された。住民らは町を見守ってきたサクラの“里帰り”を喜んでいる。
サクラはダム建設で同校の一部が水没することに伴い、2019年にカネコ種苗ぐんまフラワーパーク(前橋市)に移植された。その後、同校関係者から後継樹を求める声があり、移植を主導した日本樹木医会県支部長の石橋照夫さん(73)らが「取り木」と呼ばれる手法でサクラから苗木を作り、育ててきた。
この日は、石橋さんらが高さ3メートルほどの後継樹を同校跡地の長野原さくら公園に植えた。枝全体に花を咲かせるには3年ほどかかるといい、町や地元住民が育てる。同校OBで町ダム対策課の降籏大輝さん(36)は「うれしい。大切に育てたい」と目を細め、石橋さんは「地元の方々に見守っていただき、『里帰り桜』として後世まで残してほしい」と話していた。
写真=長野原さくら公園に植樹された桜。背後にJR吾妻線の鉄橋。
写真=長野原さくら公園には、八ッ場ダム事業が完了して解散となる「八ッ場ダム対策委員会」の記念碑が建てられることになっている。ダム対策委員会は、地元住民を代表して国や群馬県と交渉に当たってきた。2022年3月31日撮影。