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巨費が投じられる球磨川流域治水プロジェクトは、流域住民が望む選択肢なのか?

 国土交通省八代河川国道事務所のホームページに、3月31日付で「球磨川流域治水プロジェクト」についての新たな情報が掲載されました。
 2020年の水害を機に、球磨川で各種の治水対策が実施されていくことが記されています。

 球磨川水系流域治水プロジェクト
 http://www.qsr.mlit.go.jp/yatusiro/river/r0207_ryuikitisui_gouukensho/index.html

★球磨川流域治水プロジェクトの更新【令和4年3月31日】
http://www.qsr.mlit.go.jp/yatusiro/site_files/file/news/r3/news_20220331.pdf

下図=上記国土交通省資料1ページより

 この資料を見ると、河道掘削、堤防補強などの河道対策の他に、遊水池整備、市房ダム再開発、流水型ダム(川辺川ダム)の整備など、治水対策として考えられるものがほとんど全部盛り込まれているような印象を受けます。その対策費用は下記のロードマップに河川対策約1636億円と記されていますが、これには球磨川支流の川辺川に建設することになった巨大な流水型ダムの費用は含まれていません。流水型ダムの費用を八代河川国道事務所にあらためて問い合わせたところ、令和3年度 第3回 球磨川水系学識者懇談会(令和4年2月17日開催)の資料に「流水型ダムの残事業費2700億円」が記されているとのことでした。

 したがって、上述の1636億円と合わせると、これから球磨川には4336億円という巨額の公費が投じられることになります。それによって球磨川の洪水防御が短期間に達成されるわけではなく、国交省によれば流水型ダムの完成は2035年度以降であり、さらに流水型ダムができても球磨川中流部の人吉市市街地の17%は氾濫の危険性が残ると説明されています。

 球磨川流域治水プロジェクトには、流水型ダムの建設による球磨川の自然への影響など、懸念されることが多々あります。今回示された治水対策で本当によいのか、市民が参加した公開討論会で徹底した議論を行うべきです。

 関連記事を転載します。

◆2022年4月5日 共同通信配信
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOJC295ZQ0Z20C22A3000000/
ー熊本・川辺川の流水型ダム、35年度完成へ 球磨川治水でー

 2020年7月の豪雨で氾濫した熊本県の球磨川の治水策として支流の川辺川での建設が計画されている「流水型ダム」の完成時期に関し、国土交通省は専門家との会合で、35年度を予定していると明らかにした。22年度に環境に与える影響を調べる作業に着手し、27年度の本体工事開始を見込む。

 国交省によると、ダム完成後も上流部の河道掘削や下流部の高潮対策といった工事を継続する。計画するすべての治水策を整備するまでに約30年かかるという。20年7月と同程度の雨が降った場合、全治水策が完了していれば、同県人吉市街部で浸水範囲を約83%減らせるとの見積もりも示した。

 国交省の担当者は熊本市内で開かれた会合で「整備を終えても氾濫は発生すると想定される」と説明し、避難の迅速化などソフト面の対策も重要だと話した。

 ダムには水路を設置し、平時は水をためない治水専用とする。建設場所は相良村で、水没予定地は五木村などとなる。総貯水容量約1億3千万トン、高さ約108メートルで、完成すれば流水型では国内最大となる。今後必要な事業費として約2700億円を見込んでいる。〔共同〕