宮城県の水道「民営化」、管路の維持更新は含まず

 宮城県は4月1日から、上下水道と工業用水の20年間の運営権を民間に一括売却する「みやぎ型管理運営方式」を始めました。
 日本初の水道民営化として、村井嘉浩県知事がさかんににアピールし、全国からも注目されている「みやぎ型方式」ですが、報道によれば民営化といっても、「水水道事業でも費用がかかる管路の維持管理(更新)など、採算性の低いものは最初から除外されているようです。「水道民営化」は水道事業の経営悪化を防ぐ目的で行われることになっていますが、経営を圧迫する部分を除き、さほど大きな問題が生じない部分に限った「民営化」であれば、目的達成をもともと考えていないということでしょうか。宮城県の水道民営化の実態をきちんと検証する必要があるように思います。

◆2022年3月24日 朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/DA3S15244383.html
ー(取材考記)大阪市は「断念」、宮城県は除外してスタート 水道老朽管、民営化では解決遠く 堀篭俊材ー

 水道の「民営化」をめぐり、東と西で明暗がわかれている。4月から全国で初めて宮城県で始まる一方、大阪市は事実上の断念に追い込まれた。
 大阪市内の水道管は全長約5200キロ。その51%が法で定められた耐用年数40年を超える老朽管だ。水道管の破裂などの事故も年100件を上回る。
 市は16年間で配水管約1800キロを更新する事業を、民間に丸ごと任せる計画をたてた。運営権をゆだねるコンセッション(公設民営化)でコストを抑え、更新を速く進める。そんな狙いだったが、応募した二つの企業グループが途中で辞退した。

 管の傷み具合は掘り返してわかる。人件費や資材価格も上がっていく。事業費3750億円が増えれば民間がかぶる条件に、尻ごみしたようだ。

 市は方針をあらためて、耐震化が必要な配水管約40キロにしぼり込み、その更新を民間に発注することにした。約8年の計画で、事業費約300億円が増える心配は民営化より少ないものの、更新の速度は落ちる。

 全国には全長約73万キロ、地球を18周できる水道管が存在する。そのうち3周分以上の約14万キロは老朽管が占めている。いまのペースでは更新に150年近くかかる計算だ。

 人口減少などで水の使用量は減り、料金収入は右肩下がりだ。水道管を交換する費用をまかなうため、料金を上げようにも、自治体の首長は選挙対策で問題を先送りしがちになる。

 宮城県は、民間に任せるのは浄水場の更新などにとどめ、水道管は除いた。市町村に水を卸売りしている水道管は全長約325キロと比較的短く、本格的な更新期も25年ほど先だ。

 民営化はまだ老朽管問題への解決策を示せていない。厚生労働省の試算によると、全国の老朽管の更新には約30年間で約32兆円かかる。ただ、水の需要が減るのを見越し、小さな口径の水道管を使えば1割超削減できる。

 水道事業を古いマンションにたとえると、空室が増え、建て替えると住民の負担が重くなる。そのまま改築するのではなく、全体のサイズを小さくし、負担が増えるのなら住民の理解を得るしかない。先送りは許されない。(編集委員)

◆2022年3月31日 河北新報
https://kahoku.news/articles/20220330khn000048.html
ー「水道みやぎ」4月1日開始 20年間の運営権、民間に売却 全国初、成否に注目ー

 上下水道と工業用水の20年間の運営権を民間に一括売却する宮城県の「みやぎ型管理運営方式」が4月1日、導入される。自治体が施設の所有権を保持したまま民間に運営権を委ねる「コンセッション方式」が上水道に適用されるのは全国初。村井嘉浩知事が水道法改正を働き掛けて実現した一手は、厳しさを増す地方の水道経営の処方箋となるのか、関係者の注目が集まる。

スケールメリット狙う
 導入後の県側と運営権者の主な役割分担は表(上)の通り。施設の管理は今でも民間に委託しているが、契約期間は最長4~5年。みやぎ型は上・工・下水の長期一括委託でスケールメリットを狙う。

 20年間の事業費削減予定額は337億円。内部留保に及ぼす今後5年間の効果は、100億円以上と見積もる。

 現行の手法では将来の料金引き上げが避けられないため、経費削減効果は料金の引き下げまでには至らず、上昇幅の圧縮にとどまるとみられる。

 運営権者は水処理大手メタウォーターを代表とする構成10社(表・下)のグループ。経営は10社による特別目的会社「みずむすびマネジメントみやぎ」(仙台市)、実務は10社が出資する運転維持管理会社「みずむすびサービスみやぎ」(同)が担う。

 特別目的会社が解散しても、地元に維持管理会社が残り、事業の持続性を担保した。維持管理会社の社員(運営会社兼務16人を含む計240人)は、全体の約4割が現委託業者からの転籍となった。

 不安視される要素は(1)水質(2)経営維持(3)料金(4)災害対応-など。運営権者は、法定51項目の水質管理検査を継続した上で独自に13項目を追加し、法基準より厳しい数値を設定すると強調。財務状況は月次、四半期、年次で県が確認する。

 5年ごとの料金見直しの際は2年前から協議を開始。外部の有識者らによる経営審査委員会から意見を聴き、新料金徴収の半年前までに県議会の議決が必要となるため、「複数のチェックが入る」(県企業局)。大規模災害時は、県が指揮を執る。

知事「日本のモデルになる」
 2017年度の地方公営企業年鑑によると、宮城県の水道料金は1立方メートル当たり146・55円。広域水道事業を手掛ける22府県で最も高く、最も安い長野県の44・41円の3倍超に達する。水源から遠い地形的要素や過去のダム開発などが要因という。

 人口減や節水型社会の進行で収益が目減りし、老朽施設の維持管理に加え、更新に必要な多額の費用をどう捻出するかが全国的な課題。

 村井知事は28日の定例記者会見でみやぎ型の概要を改めて説明し、「県民に少しでも安価な水道を供給するための施策。日本のモデルになる」と自信を見せた。

◆2022年4月2日 河北新報
https://kahoku.news/articles/20220401khn000049.html
ー民営化反対、事業情報の開示を市民団体が訴え 「水道みやぎ」初日ー

 上下水道と工業用水の20年間の運営権を民間に一括売却する宮城県の「みやぎ型管理運営方式」が始まった1日、市民団体「命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ」は、反対する街頭活動を仙台市青葉区の中心街で行った。

 約10人が横断幕を掲げて通行人にビラを配り、「県民の命や暮らしに最も重要な水道で民営化が始まったことは残念だ」と主張。「コスト削減と水質維持を両立すると言った以上、運営権者を厳しくチェックし、事業情報を県民に開示すべきだ」と県に求めた。

 共同代表の佐久間敬子弁護士は「民間が管理することで、災害時に対応が不十分になる可能性もある。今後も反対の声を上げ続ける」と話した。