流水型・川辺川ダムでは命も清流も守れない(パブコメ実施中)

 国土交通省は現在、川辺川ダムを中心に据えた球磨川水系河川整備計画について、意見募集中です。

 整備計画が出来るとダム建設に拍車がかかります
 清流川辺川・急流球磨川を未来に残すために、是非、ダムについての意見を提出してください。

 長年流域で活動している熊本の住民団体が、パブコメについてホームページで詳しく説明しています。
 詳細はこちら➡https://kawabegawa.jp/genankoubo.html

 国土交通省に提出する意見の入力ホームはこちらです。
 入力フォームの記入項目は、「年代」、「職業」、「住所」、「意見」です。
 「意見」のところで「章を選択」という項目があり、クリックすると整備計画原案の「目次」が右のように表示されます。
 原案の103ページに示されている川辺川のダム計画について意見を提出するのであれば、大変わかりにくいのですが「5.河川の整備の実施に関する事項」の「5.1 河川工事の目的、種額及び施行の場所並びに当該河川工事の施工により設置される河川管理施設の機能の概要」を選択することになります。

 国土交通省は河川整備計画を策定するにあたり、パブリックコメントと共に住民の意見を聴く「公聴会」を実施しています。

 公聴会での公述内容について、熊本県の住民団体よりお伝えいただきましたので、紹介します。

 以下に紹介するのは、2020年の球磨川水害の時に、流域で最も多くの犠牲者(死者25人)を出した球磨村の市花保さんが4/23の公聴会で行った公述です。
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 球磨川水系河川整備計画(原案)に対する意見
                   ー市花 保

 球磨村渡の市花と申します。
 あの豪雨災害で千寿園に近い自宅は屋根まで浸水して全てを失い、人吉の実家も床上浸水、さらに職場まで被災してしまいました。
 今からお話しすることは、一昨年のあの日、私たちが住む地区で実際に起こったことを目撃し、体験したことを前提としています。水害痕跡からの類推やシミュレーシン等の机上で導かれたものではないことを念頭に置いてお聞き下さい。

 あの日起こったことは、過去の水害体験を有していた私たちにとっても想像以上の洪水でした。渡地区では多額の費用を掛けた堤防や導流堤を遙かに上回る洪水が発生し、3 カ所に設置された排水ポンプは黒煙を上げて水没していきました。想定外の事態に既存の対策は全く役に立たなかったのです。
 また、連続堤防があることで早い段階に内水氾濫が生じました。貯まった水に阻まれて、一刻も早く駆けつけるべきだった千寿園への救助の機会を逸しました。
 そして、球磨川の水が引いた後には、貯まった内水が出口を求めて堤防を破壊。球磨村の地下今村地区では、それでもはけきれない内水が翌日の夕方まで貯まった状態が続き、被災者救助や復旧に支障がでていました。

 気候変動の中で、これからもこのような豪雨災害が起こる可能性を考えると、これまでに行われてきた治水対策について抜本的に考え直す必要があるのではないでしょうか。雨の降り方や洪水の発生の仕方、災害の発生の仕方がどのように変わったかを具体的に解明することが重要だと考えます。

 で、今回示された球磨川水系河川整備計画原案ですが、今日までの短い時間にじっくり読み込むことはなかなか難しいものがありました。この計画を提案したそちらの方から、私たち住民に丁寧な説明があって然るべきなのですが、未だに説明はありません。
 このような段階での公聴会開催は筋が通りません。
 また、球磨村においては明日が村議会議員選挙投票日ということで、その前日の今日、公聴会を開催するというのは、村職員への負担も併せ、球磨村村民への情報公開の在り方を考える上でも問題のある開催日設定だと考えます。

 このように説明責任が果たされていない状況の中で、何とか自分の時間をやりくりし、原案をざっとですが読んでみました。
 まず、令和2年7月豪雨についての記述が少なすぎます。
 流域で 50 名もの命を奪っていったあの災害が、どこでどのように発生したのかの解明が必要であると考えますが、一切記述がありません。こんな状態で効果的な対策などを実行できるのでしょうか。

 今回示されている河川整備計画が完了したとしても、これからもこの土地に住んでいく私たちは安心して暮らすことができません。
 2020年10月の国勢調査において、球磨村の人口は5年前の34.07%減と全国トップの減少となったとの報道がありました。根本的な対策がなされない危険な状態のままでは、人口流出はますますひどくなり、球磨村の将来を大いに危惧しているところです。

 国管理区間 P.42 に「各水位観測所で観測開始以降最高の水位を記録し、計画高水流量を大きく上回り、基本高水のピーク流量も上回る洪水となりました」とありますが、この河川整備計画は、ダムありきで最大水位から流量を測って、どうやって水位を下げるのか しか考えていない。そこには時間軸が一切ありません。
 この豪雨では球磨川流域を線上降水帯がすっぽりと覆い、ほぼ同時刻に豪雨が襲いました。上流部に降った雨が球磨村や坂本に来るまでにはタイムラグが生じます。実際には山間部から流れ出る無数の谷間に発生した濁流や土石流によって、夜が明けない暗い時間帯から被害が発生しているのです。

 また、その下に「支川においては本川の水位上昇により洪水が流れにくくなるバックウォーター現象により氾濫が発生し~」との記述があります。
 この河川整備計画原案の中では支川のバックウォーター現象という記述が何回もでてきて流水型ダム案が示されているわけですが、実際には球磨川本川の水位上昇より早い時間帯に被害は発生していて、バックウォーター現象では説明できない災害が至る所で生じています。

 特に球磨川中流部の球磨村や芦北、坂本では、球磨川本川の水位がまだ上昇していない午前2時頃から、ありとあらゆる谷間の支流から濁流や土石流が押し寄せています。
 神瀬の堤岩戸地区では山間部から流れ込んだ濁流が国道まで氾濫し、特に岩戸鍾乳洞からの濁流は激しい流れを生じて、逃げ遅れた3名の方が亡くなっています。
 その際、発生した濁流は堤防のパラペットがあったことでその時間はまだ水位が低かった球磨川本川に流れる事ができず、国道が川のようになって下流に流れていたことを地元の方々が証言しています。

 先月発行された球磨村の災害記録集には、球磨川があふれ出すより早い時間帯に、支流の増水により被災した状況が時系列で詳細に記録されています。

「令和2年7月豪雨災害 熊本県球磨村」 より抜粋し GoogleMap にプロット

 これらは、球磨川本川の支流で発生した災害です。球磨川本川の水位を下げても一切関係がありません。
 県管理区間であるこれらの被害が発生した支流において、この河川整備計画によってどのように手当てがなされるのでしょうか。私の読み込みが浅いのか、残念ながら中園川や小川に関する対策の記述は見つけることができませんでした。(県管理区間 P.102 図 4.1)

 また、今回の豪雨災害で目立ったのが土石流の多発と多量の流木です。
 球磨村や坂本の球磨川支流の山間部は荒れ放題で、小川の上流、境目から先の村道は崩壊し、間もなく被災から 2 年たちますが未だに手付かずです。
 そして、川に流れ込んだ流木は家々を押し流し、橋に引っかかって水位を塞き上げて被害を拡大させ、ついには 19 もの橋を流失させました。瀬戸石ダムにも流木を伴う流れがぶつかり、管理用の橋に横ずれが生じました。ダム本体も危ないところではなかったのでしょうか。

 しかし、県管理区間の土砂・流木対策としては P.121 の 1 ページのみというおそまつさ。荒れ放題となっている山林への対策はほったらかしであり、また次に豪雨が降れば同じような災害が発生することは現地の山の状態を見れば一目瞭然です。
 「緑の流域治水」と標榜しているのであれば、集水域である山間部に何が起こっているのかを調査し、治山や砂防だけではなく、もっと積極的に山林の荒廃への手当てを行っていただきたい。

 以上のように、気候変動による集中豪雨がますます予想される中、原因究明がなされないまま、これまでの治水対策の検証を満足に行わない状態を放置することは、原疾患に手当てを施さないまま、痛み止めなどの対症療法を施すだけの治療方針と同じものです。
 あろうことか、副作用の強い対策であるダムを持ち出してきている。
 今回は環境に優しい流水型ダムですか。しかし、川を壊すことは間違いない。
 副作用の少ない最新の治療です と言っているようなものだが、全国で前例がなく、そのダムの諸元は明らかになっておらず、その効果や環境に与える負荷は未知数。
 最新の治療薬だが治験すら行っていないものをどう選択すればいいのでしょうか。
 流域住民は QOL を重視してダムのない川を選択しているのです。

 先頃問題となったアサリ産地偽装の件ですが、その根本的な原因は、アサリが昔のように採れていないことです。アサリだけではなくアユやウナギなどがなぜ採れなくなったかを考えていただきたい。

 あの日、高台や二階、屋根の上に避難したり、下半身が水に浸かりながら家族の手を引いた被災者が、市房ダム緊急放流の知らせを聞いた時の絶望感を想像していただきたい。

 球磨川水系河川整備計画の再考を求めます。

                             以上