八ッ場ダム事業における膨大な「生活再建関連事業」はダム完成時には完了せず、その後も続きました。ダム完成から二年が経過し、すべての事業が終了したことから、長野原町では1990年に設けられたダム事業担当ポストが今月限りで廃止することになったとのことです。
◆2022年5月12日 朝日新聞群馬版
ー八ツ場ダム完成でダム担当副町長職が廃止へ 「やっと通常の行政に」ー
八ツ場(やんば)ダムがある群馬県長野原町には、全国でも珍しい役職がある。
「ダム担当副町長」だ。
町にとって最大の懸案だったダム問題に対応しようと、32年間にわたって設けられてきた専任ポストだ。
ただ、2020年3月にダムは完成。関連事業がほぼ完了したことに伴い、その役目を終えることになった。
12日にあった臨時町議会で、このポストを5月末に廃止する条例改正案が可決された。
八ツ場ダムは戦後まもない1952年に計画が浮上して以来、地元で激しい反対運動が長く続いてきた。
町に専任ポストができたのは90年。ダム助役(当時)として置かれたのが始まりだった。もう1人いる助役とは別に、ダム助役が設置されたのは、水没住民の生活再建を前提に、ダム計画が少しずつ動き始めたころだった。
当時の町長・田村守氏(84)は朝日新聞の取材に「水没する地区に暮らす町民の意思を幅広く聞こうと思い、専任のポストをつくった」と振り返る。
以来、ダム関係の国や県、地元との調整役や、町民の生活再建の相談などの重責を担ってきた。
ダム対策課は「未来ビジョン推進課」に
現在の副町長は6人目にあたる佐藤修二郎氏(63)。2014年に就任し、5月末で2期8年の任期を終える。
総事業費約5320億円という国内ダムで最大規模の八ツ場ダムだけに、佐藤副町長の任期中には、町の予算約153億円のうち、ダム関係だけで約111億円を占めた時期もあった。「ダム関係の会議は、住民の方に合わせて夜がほとんど。多いときで年間100回くらいあった」という。
町は、ダムの反対運動が激しかった時代の1973年、ダム対策係(81年にダム対策課に改称)を設置。ダム問題に取り組んできた。
そのダム対策課も、この春の町の機構改革で、企画政策課、産業課の観光商工係と統合して「未来ビジョン推進課」となった。
さらに6月から副町長も1人制に戻る。ある幹部はそんな思いを口にした。
「これで、やっと通常の行政に戻る」(前田基行)
◆2022年5月13日 上毛新聞
ー長野原町 副町長1人制に ダム完成で現職の2人退任へー
長野原町議会は12日、臨時会を開き、現行2人の副町長の定数を6月1日付で1人にする条例改正案を可決した。八ッ場ダム建設事業の終了に伴い、ダム関連事業を所管してきた「ダム担当副町長」のポストがなくなる。上毛新聞の取材に、萩原睦男町長は「小さな町に2人の副町長は異例。身の丈に合った形になる」と説明した。
佐藤修二郎ダム担当副町長(63)、市村敏副町長(64)はともに31日の任期満了で退任する。副町長は当面空席となる見通し。
町は1990年、一般行政部門を担う助役のほかにダム関連事業を担当する助役ポストを設け、地方自治法改正後は副町長2人制を取ってきた。
ダム周辺整備が本格化した2019年度は町の一般会計当初予算153億円のうちダム関連が111億円を占めるなど、ダム事業は町の最重要案件。ダム担当副町長は事務方トップとして指揮に当たり、国や県、住民との調整役を担った。(前原久美代)