昨日、熊本で震度5弱の地震がありました。
国土交通省は熊本県で立野ダムを建設中ですが、ダム堤がつくられる南阿蘇村(右岸側)と大津町(左岸側)では震度3を観測したとのことです。この地震について東京大学地震研究所の古村孝志教授は「今回は2度の震度7を観測した2016年4月の『熊本地震』のうち1度目(14日)の震源と近く余震と考えられる。」(2022年6月26日、NHK)と語っているとのことです。
国土交通省は今月6月13日、今年度中に完成する予定だった立野ダムの完成が来年度にずれ込むことと、ダム事業費を約1,160億円 から約1,270億円へと約110億円増額する計画変更を行うことを公表しました。ダム建設地の岩盤が想定より悪かったために追加掘削が必要になったことなどが原因のようです。
国土交通省は二年前の6月、立野ダムの事業費が917億円から約243億円増の約1160億円に膨らむことを明らかにしました。2018年にダム建設が開始されてから、合計約353億円増額となります。
➡「立野ダム総事業費243億円増の見込み」
被災地で不要不急の立野ダム事業を進めることについては、熊本県内で多くの反対の声がありましたが、国土交通省は強引にダム建設を進めてきました。完成間近の事業費再増額はあまり大きなニュースとはならず、スケールの大きなダム建設工事に記者が圧倒されることを伝える記事が目立ちますが、地震多発地帯でのダム建設は2024年のダム完成以降も安全性が心配です。
◇国土交通省立野ダム工事事務所ホームページより
http://www.qsr.mlit.go.jp/tateno/newstopics_files/20220613/zigyokeikaku.pdf
関連記事を転載します。
◆2022年6月18日 熊本日日新聞
https://kumanichi.com/articles/695207
ー建設中の立野ダム、国交省が公開 本体コンクリ打設5割超す 熊本・南阿蘇村などー
国土交通省九州地方整備局は18日、白川上流で建設中の国営立野ダム(熊本県南阿蘇村、大津町)の工事現場を地元住民らに公開した。また、ダム本体の完成が2023年4月の予定だと明らかにした。20年10月に着手した本体へのコンクリートの流し込みが約20万立方メートルに達し、総量(約36万立方メートル)の約5割を超えたことから見学会を企画した。
南阿蘇村立野の住民約100人が参加し、担当職員に説明を受けながらコンクリートの流し込み作業を見学した。新所区の山内博史区長(68)は「ダムの大きさに圧倒された。けがのないように作業が進み、下流域の人々の安全と財産を守る施設になってほしい」と話した。
立野ダムは、下流の熊本市などで洪水が起きるのを防ぐ治水専用の流水型ダム。平常時は川底近くの穴から水が流れ、大雨時に穴を流れきれない水がたまる仕組み。堤は高さ約90メートル、長さ約200メートルで、総貯水量は約1千万立方メートル。
国交省によると、ダム本体は今年12月に完成予定だったが、基礎を支える硬い岩盤が想定より深い位置で追加掘削が必要になったほか、昨年は降雨が多く、工事が約4カ月ずれ込んだ。新たな工期は本体完成が23年4月、同10月以降の試験湛水[たんすい]を予定している。
工期延長や資材の高騰などにより総事業費は約110億円増の約1270億円となった。事業費ベースの進捗[しんちょく]率は21年度末時点で約78%。(中村美弥子)
◆2022年6月18日 RKK熊本放送
https://news.goo.ne.jp/article/rkk/region/rkk-73646.html
ー立野ダム 工期遅れる 運用開始は来年10月以降にずれこみー
熊本県南阿蘇村で建設が進む立野ダムの工期に遅れ、本格運用が 当初予定していた来年3月末から半年以上ずれ込むことが分かりました。
白川の洪水被害の軽減などを目的に、おととし10月に本体工事が始まった立野ダムは、当初 今年12月末までに本体工事を完成させ、来年3月末までの運用開始を目指していました。
しかし、去年の梅雨の長雨や夏の気温上昇の影響で 想定以上に工事を中断せざるを得なかったため、本体工事の完成が当初より4か月遅れ 運用開始も来年10月以降にずれこむ見込みだということです。
国は 来年の梅雨時期には ダム本体は完成していて洪水調整など対応できるものの、建設資材の高騰や工期延長に伴う事務経費の増加などで 事業費はおよそ110億円増加するとしています。
◆2022年6月26日 朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/ASQ6T6S1GQ6PTLVB00D.html
ー本体工事夜通し 熊本・立野ダムー
熊本市中心部を流れる白川の治水対策のため建設中の立野ダム(南阿蘇村・大津町)で、来年4月の本体完成を目指して夜通しの工事が進んでいる。国土交通省九州地方整備局は当初、12月の本体完成を目指していたが、想定を超える掘削工事が必要になるなどで約4カ月ずれ込んだ。
立野ダムは本体に3本の放流路を設ける流水型。洪水時に水がたまった際は、水圧を分厚いダム本体の重さで支える。使われる予定のコンクリートは約36万立方メートル。18日には20万立方メートルに達した。
両岸が切り立った立野峡谷に建設するため、コンクリートはダムより高い位置に設けた工場で造り、峡谷に差し渡したケーブルクレーンで運ぶ。バケットと呼ばれる容器で一度に運べるのは5立方メートルにすぎないが、本体上空を運ぶ際は、注意喚起のため中島みゆきさんの「地上の星」のメロディーが流れる。
土曜日だった18日夜もバケットは休みなく往来していた。コンクリートは水との化学反応で温度が上がると、固まる際にひび割れができる。このため、流し込み作業が終わった現場では、作業員が水をまくなどして冷却作業を続けていた。(城戸康秀)