鬼怒川水害訴訟、国に一部住民への賠償命じる判決、水戸地裁

 7月22日、鬼怒川水害訴訟において、国の責任を認める判決が水戸地裁でありました。
 2015年9月の関東・東北豪雨では、利根川の支流、鬼怒川の下流部(茨城県常総市)で大水害となりました。
 被災住民31人が提訴したこの裁判では、鬼怒川沿いの「上三坂地区」と「若宮戸地区」における国の河川管理の責任が争点となりました。判決は破堤した「上三坂地区」については住民側の訴えを退けましたが、「若宮戸地区」については国の瑕疵を認めました。「若宮戸地区」では、堤防の役割を果たしていた砂丘林が水害発生前にソーラー発電業者によって掘削されました。不安を抱いた住民らの働きかけで常総市議会も動き、周辺首長らも連名で築堤を求める要望書を国に何度も出していましたが相手にされないまま豪雨の当日を迎え、掘削箇所から鬼怒川の水が溢れだしました。

 わが国の治水対策においては、国などの河川管理者がほとんどすべての決定権を有しており、当事者である流域住民を蚊帳の外において治水対策が進められてきました。その結果、巨大ダムやスーパー堤防など巨額の費用を必要としながら、治水効果が不確かな対策が優先されてきましたが、その背景には司法のチェック機能が全く働いてこなかったという問題があります。
 NHKの記事に書かれているように、「水害に関する裁判で国の河川管理の責任が認められるのは異例」のことで、水害訴訟は被災住民が負け続けてきました。その契機は1984年の大東水害訴訟における最高裁判決(1984年)であったことを毎日新聞が書いています。

 関連記事をまとめました。

◆2022年7月22日 NHK茨城
ー鬼怒川豪雨水害 国に賠償命令 河川管理で住民訴え 水戸地裁ー

 7年前の2015年、「関東・東北豪雨」で鬼怒川が氾濫し大規模な浸水被害が出た茨城県常総市の住民などが国を訴えた裁判で、水戸地方裁判所は、国の河川管理に問題があったと認め、原告の一部に賠償するよう命じる判決を言い渡しました。
水害に関する裁判で国の河川管理の責任が認められるのは異例です。

 2015年9月の「関東・東北豪雨」では、茨城県常総市で鬼怒川の堤防が決壊するなどして、茨城県内で3人が死亡し、13人が災害関連死に認定されたほか、住宅およそ1万棟が水につかりました。
 住宅が浸水する被害を受けた常総市の住民など31人は、決壊や越水した2か所について「国の河川管理が不適切だった」などとして、国に対して3億5800万円余りの賠償を求めていました。
 これに対し、国は「上流と下流のバランスを総合的に考えながら計画的、段階的に整備を進めていた。河川管理に問題があったとは言えない」などとして、訴えを退けるよう求めていました。
 22日の判決で、水戸地方裁判所の阿部雅彦裁判長は、2か所のうち越水した若宮戸地区について国の河川管理に問題があったと認め、原告のうち9人にあわせて3900万円余りを賠償するよう命じました。
 若宮戸地区では川沿いの砂丘が業者の開発にともなって掘削されていましたが、判決では、砂丘が堤防の役割を果たしていたと認めたうえで「国は安全上重要な砂丘が掘削されないよう河川区域に指定する義務があったがそれを怠った」と指摘しました。
 一方で、決壊した堤防の整備計画が適切だったかが争われた上三坂地区については「国の計画が格別不合理だったとまではいえない」として訴えを退けました。
 水害に関する裁判で国の河川管理の責任が認められるのは異例です。

 関東・東北豪雨では2015年9月10日、発達した積乱雲が帯状に連なる「線状降水帯」が関東や東北にかかり、上流で記録的な豪雨となった鬼怒川が氾濫。
 茨城県常総市では堤防が決壊するなどして被害が出ました。
 逃げ遅れて救助された人は4000人を超え、茨城県内で3人が死亡、13人が災害関連死に認定されています。
 被害が集中した常総市はおよそ3分の1が水没。
 住宅地で1週間以上浸水が続くなど、生活への影響も大きなものとなりました。
 被害から3年後、被災した住民たちは「鬼怒川の堤防が低く被害が出るおそれがあると知りながら、国は適切な対策をとらなかった」などとして3億円余りの損害賠償を求める訴えを起こしました。
 国は、原告の主張はいずれも認められないとして全面的に争います。
 新型コロナの感染拡大を受け、公開の弁論が開かれない時期もありましたが、去年8月には裁判官と原告側、それに被告の国側の3者で氾濫現場の視察が行われました。
裁判はことし2月に結審。
 原告側が「国の堤防整備は、安全性が不足している場所を優先しないなど、進め方が不合理だった」と訴えたのに対し、国は「上流と下流のバランスを総合的に考えながら計画的、段階的に堤防の整備を進めていた」などと反論し、国の整備計画の合理性が争われました。

 今回の訴訟で主な争点となったのは、茨城県常総市の主に2つの地区について、鬼怒川の堤防の整備計画などが適切だったかどうかです。
<上三坂地区>
 決壊が起きた上三坂地区について原告側は、国が地盤沈下で堤防の高さが低くなっていたのを知りながら、堤防の整備をほかの地域よりも優先するなどの対策をとらなかったのは不合理だと主張していました。
 これに対し国は、用地の調査など堤防の整備に向けて調査を進めていたほか、上流と下流のバランスを総合的に考えながら計画的、段階的に整備を進めていたと反論していました。

<若宮戸地区>
 越水が起きた若宮戸地区については、この地区で行われた砂丘林の掘削作業について、国の責任などが争われました。
 原告側は、業者が太陽光パネルを設置するために堤防の代わりになっていた砂丘林が削られたと主張。
 そのうえで、国が砂丘林を河川区域に指定し業者による掘削などを自由にできない区間にするべきだったと訴えました。
 これに対し、国は、砂丘林を河川区域に指定していないからといって整備計画が不合理であるとはいえず、堤防を造る計画を立てたうえで作業を進めていたなどと反論していました。

 原告側が判決後に開いた会見で、弁護団の只野靖弁護士は「当初から人災と言われていたが一部でも認められたことは、裁判所によるすぐれた判断だと受け止めている。原告が力を合わせてきたから認められたと考えている」と話しました。
 原告団の共同代表を務める片倉一美さんは「毎年のように水害が発生する時代にあって画期的な判決が出た。国土交通省は判決を真摯に受け止めて、河川管理においては、水害の危険性があるところから改修を進めてもらいたい」と話しました。
 判決を受けて、原告のうち、これまでに、多くが控訴する意向を示しているということで、只野弁護士は「国に緊張感をもって河川管理にあたってもらいたいというのが原告の思いだ。控訴して国の責任を問い続けたい」と話しました。

 原告の1人で、妻の芳子さんが「災害関連死」で死亡した赤羽武義さんは(82)は、訴えが認められず、「わたしにとってはとても残念な判決です。裁判所や国には妻の死の重みを受け止めてほしかったです」と話していました。

 関東地方整備局の廣瀬昌由局長は「判決についてまだ詳細な内容を確認できていないが、国の主張が認められなかったものと認識している。今後、判決内容を慎重に検討し関係機関と協議のうえ、適切に対処したい」とコメントしています。

 決壊現場に近く浸水の被害があった、茨城県常総市の石下地区に住む66歳の男性は「国の河川管理に問題があったと認める判決が出たことはよかったと思う。これを契機に、今後、水害対策が加速していってほしい」と話していました。
 また、美容院を営む71歳の女性は「一部ではあるが、住民の訴えが認められたという結果にはほっとした。国には二度と同じような水害が起きないようにしてほしい」と話していました。

◆2022年7月22日 毎日新聞
ー「歴史的判決」目を赤くした住民 鬼怒川氾濫、国の管理不備認定ー

 2015年9月の関東・東北豪雨で浸水被害を受けた茨城県常総市の住民ら31人と1法人が、鬼怒川が氾濫したのは国の河川管理に不備があったためだとして、国に総額約3億5870万円の損害賠償を求めた訴訟で、水戸地裁は22日、国の責任を一部認め、9人に計約3927万円を支払うよう命じた。
   ◇
 「歴史的な判決だ」――。2015年9月の関東・東北豪雨での鬼怒川氾濫を巡り、茨城県常総市の住民らが国に損害賠償を求めた訴訟。河川管理の不備を認めた22日の水戸地裁判決に、地裁前では原告や支持者らの拍手が鳴り響いた。

 「確信していた国の責任が認められた」。集まった報道陣などの前に掲げられた「勝訴」と書いた紙の脇で、原告で同市若宮戸地区に住む園芸農家、高橋敏明さん(68)は目を赤くしていた。

 水害で自宅は床上浸水し半壊した。家財道具は使い物にならなくなり、怒りを支えに提訴から4年間、訴訟を戦い続けてきた。21年夏には、訴訟を担当する阿部雅彦裁判長らが被災地を視察。22日は、判決言い渡しに耳を傾けながら当時を思い出し、判決後に「『現地を見て分かってくれたんだ』と、胸がいっぱいになった」と振り返った。

 水害訴訟は、大阪府大東市の浸水被害を巡る「大東水害訴訟」の最高裁判決(1984年)を契機に大きな曲がり角を迎えた。同判決では行政の責任を限定的に解釈し、これが行政の瑕疵(かし)の基準となり、被災した住民側に不利な司法判断が続く流れとなっていた。

 そうした中で出された今回の判決は、国の河川管理の不備を明確に認めた。弁護団の只野靖弁護士は「他の水害においても、それぞれの河川管理のまずさを指摘できる可能性がある。この判決は全国(の水害被災者)に勇気を与える」と述べた。

25人が控訴の意向
 しかし敗訴部分もあり、主張を一部認められた原告も含め、既に25人が控訴の意向を示しているという。

 「苦しみながら亡くなった女房のことを考えると、これで終わりにはできない」。主張が認められなかった常総市水海道地区の赤羽武義さん(82)も控訴する意向だ。水害から5カ月後に死亡した妻芳子さん(当時75歳)が災害関連死に認定された。「妻が水害で亡くなったことに対する国の責任を認めてほしい。このままでは女房に申し訳ない」と、訴訟続行に向けた決意を口にした。【宮崎隆、森永亨、宮田哲、長屋美乃里】

◆2022年7月23日 読売新聞
ー水害訴訟で異例の行政に賠償命令…鬼怒川の堤防決壊、一部住民に計3900万円ー

 茨城県常総市で2015年9月、豪雨で鬼怒川が氾濫し、浸水被害が起きたのは河川管理の不備が原因だとして、住民ら約30人が国に約3億5800万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が22日、水戸地裁であった。阿部雅彦裁判長は、国が治水安全を維持するための義務を怠ったと認定し、国に対して、原告のうち9人に計約3900万円を支払うよう命じた。水害訴訟で国を含めた行政機関に賠償命令が出されるのは異例だ。

 15年の関東・東北豪雨では、記録的な大雨で鬼怒川が増水し、常総市の若宮戸地区で川の水があふれ、上三坂地区で堤防が決壊。市の総面積の約3分の1にあたる約40平方キロ・メートルが浸水し、災害関連死を含め15人が死亡、住宅5000棟超が全半壊した。

 訴訟では、この2地区での国の河川管理が適切だったかどうかが争点となった。国側は鬼怒川全体で堤防などの改修計画を立て、「上流と下流のバランスを総合考慮しながら計画的、段階的に整備を進めていた」として請求棄却を求めていた。

 判決で阿部裁判長は、若宮戸地区の民有地の砂丘林が実質的に堤防の役割を果たす「自然堤防」で、国もそう認識していたと指摘。開発などに伴う現状変更が制限される「河川区域」に指定するべきだったのに怠った結果、14年に民間業者によって砂丘林が掘削され、水害の遠因になったと述べた。

 一方、上三坂地区については、国が堤防の改修を検討していた事実があり、川の他区間を優先したため未改修だったものの、河川管理行政に 瑕疵かし があったとは認められないと判断。堤防の高さが不十分なまま放置していたとの住民側の訴えを退けた。

 判決を受け、住民側の片倉一美共同代表(69)は「完全な勝利ではないが、歴史的判決。国は 真摯しんし に受け止め、河川管理をきちんと行ってほしい」と語った。請求が認められなかった一部の住民は控訴の意向を示した。

 国土交通省は「判決内容を慎重に検討し、適切に対処する」との関東地方整備局長のコメントを出した。

今後の河川行政に大きな影響
 河川管理行政の責任を問う過去の裁判では、行政側の責任は限定的とした「大東水害訴訟」の最高裁判決(1984年)以降、住民側が敗訴するケースが大半だった。行政側が優先順位をつけながら堤防改修を進めていたり、社会通念に照らして是認しうる安全対策を講じていたりすれば、瑕疵はないとの判断基準だ。

 今回の判決は、堤防が決壊した上三坂地区について、この基準を引用。一方、砂丘林が削られ、明らかに危険な状態となっていた若宮戸地区については、築堤などの整備もしないまま、「河川区域」指定も怠っていた国の瑕疵を認めた。

 問題の砂丘林は民有地だが、阿部裁判長は、河川法で規制が及ばない土地でも、「重大な被害の発生が予見できる場合、私権の制約に優越する利益があることは明らか」と述べた。

 北九州市立大の近藤卓也准教授(行政法)は「画期的な判決。今後、行政側は河川区域の指定についても注意を払うことが求められる」と話した。

◆2022年7月22日 日本経済新聞(共同通信)
ー鬼怒川水害、国に賠償命令 河川管理不備と水戸地裁ー

 2015年9月の関東・東北豪雨で、鬼怒川の氾濫などによる浸水被害が起きたのは河川管理の不備が原因だとして、茨城県常総市の被災住民ら約30人が国に約3億5千万円の賠償を求めた訴訟の判決で、水戸地裁は22日、「一部で河川区域指定を怠った」として国の責任を認め、このうち9人への計約3900万円の賠償を命じた。

 水害を巡る訴訟で国に賠償を命じる判決は異例。常総市では当時、鬼怒川沿いの上三坂地区で堤防が決壊、若宮戸地区など7カ所で水があふれた。原告の一部は控訴する方針。

 原告側はこのうち若宮戸地区で、砂丘が自然の堤防になっていたのに、河川区域に国が指定しなかったため、太陽光発電事業者による掘削で堤防としての機能が失われたと主張。さらに上三坂地区で決壊した堤防は、高さが不十分だったのに国が改修を急がなかったと訴えていた。

 阿部雅彦裁判長は判決理由で、若宮戸地区の砂丘が「上流と下流の堤防と接しており、堤防の役割を果たしていた。治水上極めて重要」と指摘した。

 砂丘が掘削されれば災害が発生することが具体的に予見できたとして「砂丘を維持するため、開発に管理者の許可が必要な河川区域に指定する義務があったのに国が怠り、掘削によって危険な状態になった」と述べた。その上で、水があふれたことで損害が生じたと結論付けた。

 一方、上三坂地区については「国は流域の状況を考慮し、できる場所から改修を進めていた」と指摘。国が用いた治水安全度の評価方法も一定の合理性があるとし「上三坂地区の堤防も国の改修計画に含まれており、改修がされていないからといって安全性を欠いていたとは言えない」として訴えを退けた。〔共同〕

◆2022年7月22日 朝日新聞
ー「常総水害」国の責任は? 河川管理問う訴訟22日判決ー

2015年9月に茨城県常総市で鬼怒川が氾濫(はんらん)して15人(災害関連死を含む)が亡くなるなどした「常総水害」をめぐり、国の河川管理に落ち度があったとして、住民らが国に約3億5870万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が22日、水戸地裁で言い渡される。訴訟では、川沿いにあった砂丘林の管理のあり方や、堤防整備の優先順位の妥当性などが争われてきた。

 15年9月10日の「関東・東北豪雨」で常総市内の鬼怒川の堤防が決壊し、市内の3分の1が浸水した。家屋53棟が全壊、1591棟が大規模半壊し、2人が死亡、その後の避難生活などの中で13人が亡くなった。

 訴訟で原告側は、14年3月ごろから同市若宮戸地区の砂丘を民間事業者が掘削し、そこから水があふれた経緯を問題視。自然堤防の役目をしていた砂丘があった場所を、国は開発が制限される「河川区域」に指定すべきだったのに怠った、と主張した。

 また、堤防が決壊した同市上三坂地区については、流域の他の場所と比べても堤防が低く、優先的に堤防を整備すべきだったのに後回しにしたと訴えてきた。

 被告の国は、若宮戸地区で掘削された砂丘にはもともと堤防としての役割はなく、河川区域として指定しなかったことが落ち度とは言えないと主張。上三坂地区については、堤防整備は過去の被災歴や上下流のバランスなど多様な観点から検討して優先順位をつけるとし、原告の主張を「堤防の高さのみをことさら重視するもの」と反論した。

 水害で行政の河川管理のあり方が問われた訴訟の判決の多くで、大阪府大東市の水害をめぐる1984年の最高裁判決の考え方が適用されてきた。最高裁は、改修途上の河川管理は「過渡的な安全性」で足りるとの判断を示し、水害の危険性が明らかな、「特段の事由」がなければ管理責任があるとは言えないとした。

 今回の訴訟で、国はこの判例を引用。鬼怒川は整備の途中で、常総市では水害が起きるまで大きな洪水被害はなかったなどとして、河川改修の経緯や手順は合理的だったと主張してきた。(林瞬)
     ◇

 常総市上蛇(じょうじゃ)町の石川栄子さん(81)は、洪水が起きた2015年9月10日の午前、避難中の知人に「家の様子を見てきて」と頼まれて軽乗用車を運転したときのことが忘れられない。

 道は途中で通行止めになっていた。仕方なくUターンしたが、道は冠水し、みるみる水位が上がった。ハンドルを握りしめ、追いかけてくる水から逃げた。

 「何とか戻れたが、恐ろしかった」

 自宅は床下ぎりぎりの浸水で済んだが、近所には床上まで水に漬かった家も多かった。

 洪水の後はボランティアセンターで作業の割り振りなどに従事した。あらゆるものが泥をかぶり、街は灰色になっていた。その光景を前に、「言葉になりませんでした」。

 当時は同市の市議だった。鬼怒川の危険性は以前から議会でも話題になっており、石川さんも危険箇所の現地視察に行った。議会で当時の市長に働きかけ、水害前年の14年7月、要望書を国土交通省に出してもらった。水害で鬼怒川があふれた若宮戸地区の築堤を求める内容だった。

 「洪水の危険性は極めて高い」「洪水が発生した場合、常総市の市街地にまで達し、被害は甚大」。要望書には危機感を訴える言葉が並ぶ。周辺自治体の首長が連名で出したものも含めると、要望書は14年だけで3通になった。

 「あれだけ頼んだのに、国は動いてくれなかった。納得できないし、許せない思いです」(谷口哲雄)

◆2022年7月22日 茨城新聞
ー茨城・常総水害 国の責任認める「河川管理に不備」 水戸地裁判決、賠償命令 住民9人に3900万円ー

 2015年9月の関東・東北豪雨で鬼怒川の堤防決壊などによる浸水被害が起きたのは国の河川管理の不備が原因だとして、茨城県常総市の住民ら約30人が国に約3億5千万円の損害賠償を求めた訴訟で、水戸地裁は22日、「若宮戸地区で河川区域指定を怠った」として国の責任を認め、同地区の住民9人に計約3900万円の賠償を命じた。水害を巡る裁判で国に賠償を命じる判決は極めて異例。

 常総市では当時、鬼怒川沿いの上三坂地区で堤防が決壊し、若宮戸地区など7カ所で水があふれるなどして、市の総面積の約3分の1に当たる約40平方キロが浸水、5千棟以上が全半壊した。判決を受け、原告の上三坂地区の住民ら25人が控訴する方針。

 裁判は、国の河川管理や改修計画の進め方の合理性が争点となった。原告側は若宮戸地区で砂丘が自然の堤防になっていたが、国が河川区域に指定しなかったため、太陽光発電事業者による掘削で堤防としての機能が失われたと主張。さらに上三坂地区で決壊した堤防は高さが不十分だったのに、国が改修を急がなかったためと訴えた。一方、国側は計画的かつ段階的に進めたと主張した。

 阿部雅彦裁判長は判決理由で、若宮戸地区の砂丘について「堤防の役割を果たしていた。治水上極めて重要」と指摘。砂丘が掘削されれば、災害の発生が具体的に予見できたとして、「国は開発許可が必要な河川区域に指定すべきだったのに怠り、掘削によって危害を及ぼす危険性を生じさせた」とした。その上で、水があふれ、住民に損害が生じたと結論付けた。

 一方、上三坂地区については「国は流域の状況を考慮し、できる場所から改修していた」と指摘。治水安全度の評価方法についても一定の合理性を認め、「安全性を欠いていたとはいえない」として、訴えを退けた。

 閉廷後、住民側は水戸市内で記者会見し、只野靖弁護士は「ほんの一部かもしれないが、人災と認められたことは裁判所の優れた判断。若宮戸について真正面から(国の管理が)駄目だと言ってくれたことは意義がある」と話した。

 国土交通省関東地方整備局は「判決内容を慎重に検討し、適切に対処する」とのコメントを出した。

 住民側は18年8月、水戸地裁下妻支部に提訴。19年2月、受理した事件の担当裁判所を移す「回付」があり、同地裁本庁で弁論が開かれていた。

■常総水害訴訟を巡る経過
・2015年9月 関東・東北豪雨で鬼怒川堤防が決壊するなど、常総市を中心に大規模な浸水被害
・ 18年8月 国の河川管理に不備があったとして被災住民らが損害賠償を求め水戸地裁下妻支部に提訴
・ 19年2月 水戸地裁下妻支部が訴訟を水戸地裁本庁に回付
・ 21年8月 裁判官3人が決壊現場周辺を視察
・ 22年2月 訴訟が結審
・ 7月22日 水戸地裁判決、請求を一部認める