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石木ダム工事差し止め訴訟 住民 敗訴確定 最高裁、上告退ける

 石木ダム予定地住民らがダム建設の中止を求めて長崎県と佐世保市を訴えた裁判は、9月16日付で最高裁が上告を退ける判決を出したことで、住民の敗訴が確定しました。
 半世紀以上前に立案された石木ダム計画は、ダム建設の目的である治水(川棚川の洪水調節)においても利水(佐世保市への水道用水の供給)においても。必要性が希薄であることが年々明らかになりつつあります。
 ダム予定地に暮らす13世帯の住民の家や田畑はすでに強制収用されており、行政代執行により住民を追い出し、ダム建設を強行することが法的には可能ですが、これほど多くの住民が立ち退きを拒否するケースはわが国でも前例がなく、今春初当選した大石賢吾長崎県知事は前知事同様、ダム推進の立場を取りながら行政代執行を強行できずにいます。

 にっちもさっちもいかなくなっている石木ダム問題の打開に向けて、司法が一石を投じることが期待されましたが、今回も裁判所は住民側の訴えを門前払いするだけで、ダムの必要性や住民の人権という本質に踏み込むことはありませんでした。
 これまで長崎県は、裁判が進行中であることを理由にダムに反対する市民団体との対話を拒否してきましたが、裁判が終了したため、ダムに反対する四つの市民団体が長崎県知事に対して、さっそく面談を求める要請書を提出しました。

➡〈参考ページ〉市民団体「石木川まもり隊」ブログより
        「佐世保市民から大石知事へ再要請」

◆2022年9月20日 NHK
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220920/k10013828351000.html
ー石木ダム建設工事の中止を求めた訴訟 住民側の敗訴確定ー

 長崎県川棚町で進められている石木ダムの建設に反対する住民などが、長崎県と佐世保市に建設工事の中止を求めた裁判で、最高裁判所は上告を退ける決定をし、住民側の敗訴が確定しました。

 川棚町で建設が進められている石木ダムの建設に反対する住民などは、ふるさとで平穏に生活する権利が奪われるなどとして、5年前(2017年)長崎県と佐世保市に対し、建設工事の中止を求める訴えを起こしました。

 1審の長崎地方裁判所佐世保支部はおととし3月、「工事によって生命や身体の安全が侵害されるおそれがあるとは認められない」として住民側の訴えを退け、2審の福岡高等裁判所も1審に続いて訴えを退けました。

 判決を不服として住民側が上告していましたが、最高裁判所第2小法廷の三浦守裁判長は20日までに上告を退ける決定をし、住民側の敗訴が確定しました。

◆2022年9月21日 長崎新聞
https://nordot.app/945121908775501824
ー石木ダム工事差し止め訴訟 住民 敗訴確定 最高裁、上告退けるー

 長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業を巡り、水没予定地の住民らが県と市に工事差し止めを求めた訴訟で、最高裁第2小法廷(三浦守裁判長)は20日までに、住民側の上告を退ける決定をした。住み慣れた土地で暮らす「平穏生活権」が侵害されたとする住民側の請求を棄却した一、二審判決が確定した。
 決定は16日付。それによると、原判決に憲法解釈の誤りや手続き不備がある場合に上告できる民事訴訟法の規定に「該当しない」という判断で、裁判官全員が一致した。
 建設予定地では、県と市が土地収用法に基づき権利を取得。現在も事業に反対する13世帯が暮らしているが、付け替え道路や本体の工事が進んでいる。
 住民側は2017年3月に提訴。20年3月の一審長崎地裁佐世保支部判決は、住民の主張する平穏生活権を「抽象的で不明確」として訴えを退け、21年10月の控訴審もこれを支持。住民側は不服として同年11月に上告していた。
 原告の一人、岩本宏之さん(77)は「県の見方に立った判断」と冷静に受け止め、今後も抗議の座り込みを続ける考えを示した。これまで「係争中」を理由に佐世保の建設反対派市民団体との対話に応じていない県に対し、「会わない理由がなくなった」と指摘した。
 大石賢吾知事は報道陣の取材に応じ、「主張が認められた。佐世保市や川棚町と一体となって早期完成に向けて尽力したい」と述べた。その上で「これ(上告棄却)で何かが変わるわけではない。(住民との)話し合いを最優先に継続したい」として理解を得る努力を続けると強調した。
 朝長則男市長は「事業の必要性、緊急性は既に別途司法判断で確定している。工事続行についても認められたことにより、早期実現に向け環境が整ったものと思う」とコメントした。最高裁は20年10月、住民側が国に事業認定取り消しを求めた訴訟で、住民側の上告を退け、必要性を一定認めている。

◆2022年9月22日 テレビ長崎
https://www.fnn.jp/articles/-/420851
ー石木ダム反対の市民団体が長崎県知事に面談を要請ー

 東彼・川棚町で建設が進む石木ダム事業に反対する4つの市民団体が、大石 知事に面談を申し入れました。
 県に要請書を提出したのは佐世保市の4つの市民団体です。

 「川原の人を追い出してまで…」

 市民団体側はこれまでに2度、知事に面談を求めましたが、県側はダム建設をめぐる裁判が続いていることを理由に拒否。
 一方で、知事は建設予定地の住民や建設推進の市民団体とは面会しています。

 そうした中、最高裁が9月16日付けで工事中止を求めた住民側の訴えを退けたことを受け、市民団体は改めて面談を求めています。

 石木川まもり隊 松本 美智恵 代表 「佐世保の水は足りている」

 要請書を受け取った県の担当者は「知事に趣旨を伝える」とこたえるにとどまりました。