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球磨川上流の市房ダム、緊急放流

 大型の台風14号が九州に直撃するコースを通り、各地のダムが事前放流、緊急放流を行ったとのことです。
 熊本県の球磨川では、上流の市房ダムが緊急放流を行いました。球磨川では2020年の熊本豪雨により大水害となり、これをきっかけに支流の川辺川ダム計画が復活しました。2020年の水害の際にも市房ダムは緊急放流が予告されました。予告の時点で、球磨川中下流はすでに大水害に見舞われており、市房ダムが緊急放流を実施すれば、水害は一層深刻になることは必至でしたが、この時は市房ダムが満水になった時点で雨の勢いが弱まり、緊急放流をからくも回避しました。今回、市房ダムは緊急放流を実施しましたが、その頃には雨の勢いが弱まり、球磨川の水位も下がり始めており、大事には至りませんでした。

 流域面積が158㎢と小さい市房ダムの治水効果は、元々小さなものであって、流域で最も人口の多い中流域の人吉盆地のあたりではほとんど期待できません。
 市房ダムを管理する熊本県の蒲島知事は、市房ダムが球磨川を守ったと胸を張っているようですが、川辺川ダムに反対している流域の市民団体は全く異なる見方をしています。雨の降り方はさまざまであり、気候変動により台風の威力は年々増しています。流域住民のツイートによれば、球磨川の川幅が狭まる球磨村では、(株)電源開発の瀬戸石ダムの周辺で被害が発生しています。

◆2022年9月19日 熊本日日新聞
https://news.yahoo.co.jp/articles/8890ca2bbaf1a33e741b058d04610a5bec89b257
ー台風で市房ダム水位上昇、未明に緊急放流 熊本県の球磨川上流 蒲島知事「下流域の安全を確保」ー

 熊本県は19日未明、台風14号に伴う大雨で水位が上昇した球磨川上流の県営市房ダム(水上村)の緊急放流(異常洪水時防災操作)を約2時間にわたって実施した。同ダムの緊急放流は1995年以来で、4回目。放流による家屋の浸水被害などは現時点で確認されていないとしている。

 緊急放流は、ダムの貯水量が判断水位を超えた時点から、ダムに流れ込む水の量と同程度の水を下流に徐々に流して貯水位の上昇を防ぐ。

 県河川課によると、市房ダムの緊急放流判断水位は280・7メートル。県は台風接近に備えて15日深夜に事前放流を始め、17日夕までに貯水容量を約470万立方メートル増やした。

 18日朝には宮崎県側の大雨を受けて流入量が増大し、ダムに水をためる洪水調節を開始。ダムの水位が275・7メートルに上昇したため、県は「貯留能力の約半分になった」と発表。その後も雨脚が弱まらず、19日午前2時に緊急放流する可能性があることを18日午後11時15分と19日午前1時5分、球磨川流域の9市町村に通知した。

 2度目の通知から15分後には判断水位を超過。ただ上流域で雨が弱まる見込みとなり、下流の水位も高かったことから放流開始を約1時間遅らせ、実際に緊急放流したのは午前3時9分だった。

 放水は約2時間後の午前5時6分に終了。この日の県災害対策本部会議で、蒲島郁夫知事は「ダムによって下流域の安全を確保できた。ただ、もう少し多くの量を事前放流できないかなど検証する必要がある」と述べた。

 緊急放流をすると、下流の水位が上昇する恐れがある。2020年7月豪雨で被災し、今回は避難所の駐車場で車中泊した人吉市下林町の女性(73)は速報で緊急放流を知り、「雨風が収まらない中、球磨川が氾濫しないか不安だった。真夜中で周りの様子も分からず、怖かった」と話した。(小山智史、川野千尋)

◆2022年9月20日 朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/ASQ9M6QMTQ9MTLVB008.html
ー緊急放流ぎりぎりの決断 台風で熊本・市房ダムー