八ッ場ダムの主目的の一つは「都市用水の供給」です。しかし1990年代以降、人口が増え続けた八ッ場ダムの関係都県(首都圏)においても、水需要は節水技術の向上や漏水防止対策などにより、横ばいから減少傾向に移行しました。今では人口減少も相まって、水需要の減少は将来にわたって一層顕著になることが明らかです。
ダム事業の負担金は一般の人々の目に見えない形で水道事業に影響を与えています。
群馬県では、八ッ場ダムの問題に長年取り組んできた伊藤祐司議員(日本共産党)が10月の県議会でこの問題を取り上げました。
県議会のホームページに質疑の録画が公開されています。
★10月26日 決算特別委員会(総括質疑)
伊藤祐司(日本共産党)
http://www.gunma-pref.stream.jfit.co.jp/?tpl=play_vod&inquiry_id=6864
水道事業について
(1)県央第二水道の過剰な供給と料金改定について 企業管理者
(2)本県の正確な水需要予測について 地域創生部長
群馬県では県央第二水道と東部地域水道が八ッ場ダム事業に支出し、利根川からの取水量を増やすために地下水の利用料を減らしています。自己水源である地下水は、ダムの開発水よりはるかに安価であるだけでなく、水質も優れています。
以下、伊藤県議が自治研会報216号に投稿された記事を要約してお伝えします。
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そもそも県央第二水道は、群馬県の水需要が右肩上がりに増え続けるという過剰な水需要予測にもとづいてつくられました。その暫定水利権は八ッ場ダム完成を見込んで設定され、前橋市や玉村町、伊勢崎市などの自治体をダム計画に参画させ、負担を強要する役割を果たしました。
県央第二水道から各自治体が取水する際の料金は現在100円/㎥です。高崎市などが参画している県央第一水道は八ッ場ダムとは無関係で、単価は50円/㎥と県央第二水道の半額です。料金は3年ごとに交わされる契約で決まり、今年度がその年にあたっています。
9月の県議会では、自民党議員の質問に対して県央第二水道の企業管理者が「大幅な引き下げ」の検討を示唆しましたが、引き下げの条件は「契約水量増加」でした。
県庁所在地の前橋市は、かつて上水道のほぼ全量を地下水でまかなっていました。同市のキャッチフレーズは「水と緑と詩の街」です。夏も冬も15℃前後の水温で、とてもおいしい水です。ところが県央第二水道に参画して以降、水需要が増えるどころか減り続けている前橋市は、地下水を県央第二水道に切り替えざるを得なくなりました。
それは、県水には、「契約水量全量を買い取らなければならない」という縛りがあるからです。このため、前橋市の水道に占める地下水の割合は5割を切ってしまいました。
右のグラフは“負の遺産”をもたらした県の水需要予測です。水需要が明らかに右肩下がりなのに、繰り返し過剰な予測をしています。
この現実とかけ離れた予測について議会で質問すると、担当部長は、「自然災害、危機的渇水、井戸等の施設の老朽化等を加味して算定されている」「危機的渇水が起きたとして、給水量が不足したら本県の経済活動、我々の生活にも多大な影影響が出ますし、生命にも直結する。それをどうでもいいようなおっしゃられ方というのは、ちょっと受け止めかねる」と答弁しました。
過大な投資をしたツケを市民に押しつけるやり方は、もうやめるべきです。富山県では、契約水量方式をやめて、「使った水量だけ払う」方式にしたそうです。
水需要の減少、インフラ更新の費用負担などから、水道事業を民間に売り渡すような思惑も動いています。水の問題は、現状を学び、市民に伝え、行政が責任をもつサービスとして守ってゆかねばなりません。