球磨川支流の川辺川に新たに建設することになった流水型ダムは、アユなどの生息環境に悪影響を及ぼす恐れがあるとの評価結果が明らかにされたと報道されていました。
熊本県では、従来計画の貯水型ダムでは清流・川辺川、球磨川の河川環境が脅かされることなどを理由に、長年の反対運動により貯水型の川辺川ダム計画は白紙撤回されました。2020年の球磨川水害をきっかけに新たに国が進めることになった流水型の川辺川ダムは、従来計画とは異なり、環境への負荷が少ないとされてきましたが、貯水型であっても流水型であっても、河川環境へのダメージは避けられません。
右図=(川辺川ダム)事業実施区域の位置図(川辺川の流水型ダムに関する環境影響評価方法レポート要約書より)
◆2022年11月21日 日経クロステック/日経コンストラクション
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/ncr/18/00005/111000690/
ー流水型の川辺川ダムでも環境悪化の恐れー
(一部引用)
「流水型ダムでは大雨のときだけ水をためて洪水調節を実施する。一時的な貯水で洪水調節地に流入した土砂内の石れきや粒径の大きな砂は、平常時に戻っても一部が調節地内に残る。それに伴い、ダム下流部でアユの餌場環境に欠かせない石れきが減る恐れがある。アユは、石に付着した藻類を食べて成長する。
中長期的には、河床構造が平たんになって、瀬や淵が消滅する可能性がある。洪水時の貯水によって、ダム下流で洪水流による河床の土砂の移動頻度が低下。河原の樹林化が進んで、低水路が一定の位置に固定される恐れがあるからだ。」
「国交省は長期的な予測を踏まえて、適切な維持管理手法などを検討する。例えば、洪水調節地に堆積した粒径の大きな土砂を浚渫(しゅんせつ)して、河川に置き土をする「土砂還元」が考えられる。地内に低水路を構築し、流速を確保することで堆積した土砂をダム下流に流しやすくする対策や、河道内の樹木伐採なども有効だ。」
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国は環境影響評価を行い、ダメージを防ぐと説明してきましたが、国が現在進めている環境アセスの手続きでこの重要な問題を掘り下げてきちんと検討されることはあまり期待できません。
先月国土交通省九州地方整備局が公表した「川辺川の流水型ダムに関する環境影響評価方法レポート」は、同局の川辺川ダム砂防事務所 のホームページに掲載されています。
http://www.qsr.mlit.go.jp/kawabe/kankyou_torikumi/houhou_report.html
環境アセスは手続きが煩雑で、環境影響調査の受注会社が膨大な調査と報告書作成を行うものですが、基本的には受注会社を儲けさせるだけで、ダム事業そのものの是非を問い質すものではありませんが、国は粛々とダム事業を進めようとしており、そのような評論をしている余裕はありません。
今行われている流水型川辺川ダムの環境アセスの内容そのものの是非を問い質していくことが急務です。
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下図=流水型川辺川ダムによる湛水域の図
(川辺川の流水型ダムに関する環境影響評価方法レポート要約書より)