八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

八ッ場ダム骨材プラントヤード跡地、吾妻6町村の新たなごみ処理施設に

 昨日の地元紙・上毛新聞は一面トップ記事で、吾妻郡6町村の新しいごみ処理施設は2030年の稼働を目指しており、用地の最有力候補は八ッ場ダム骨材プラントヤード跡であると報じました。記事の冒頭は、同新聞社のホームページに掲載されています。

◆2022年12月30日 上毛新聞
 「ごみ処理一本化へ 吾妻郡の6町村 新施設2030年にも稼働    八ツ場ダム骨材プラントヤード跡地が最有力」
 https://www.jomo-news.co.jp/articles/-/223211

 群馬県内の中之条、長野原、嬬恋、草津、高山、東吾妻の吾妻郡6町村がごみ処理の一本化に向けて共同設置を目指す新施設について、6町村でつくる「吾妻環境施設組合」が最短で2030年後半の稼働を目標としていることが分かった。最有力候補地は、八ツ場ダム建設で使われた骨材プラントヤード跡地(東吾妻町大柏木)で、未利用の国有地として財務省が管理している。郡内で稼働中の3施設は運用開始から30年以上が経過しており、…
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 八ッ場ダムはダム建設地周辺の地質が脆弱なため、ダム本体コンクリート打設の際に使用する骨材の原石をダム右岸側(川原湯地区)にそびえる金鶏山(金花山)の裏側から採取しました。原石山につくられた骨材プラントヤードからダム建設地までの距離は約10キロメートルもあり、そのうち約3キロメートルはダム事業で新たにつくられた金鶏山を貫くトンネルでした。トンネルの名称は両出口の地名から「大柏木川原湯トンネル」と命名されました。
写真右=トンネル出口(川原湯地区)。撮影時の2015年11月当時、トンネルは骨材運搬用にベルトコンベヤーが設置されていた。本体工事終了後、トンネルは県道として一般供用。

 上毛新聞の記事では骨材プラントヤード跡地がごみ処理施設の「最有力候補地」とされていますが、地元、東吾妻町の中沢町長は今年はじめに町の公式ホームページに掲載した挨拶文で次のように説明しており、この時点ですでに跡地利用は決まっていたようです。

 ★「新春を迎えて」
 https://www.town.higashiagatsuma.gunma.jp/www/contents/1608524151855/index.html

「大柏木川原湯温泉トンネルの近くに、八ッ場ダム建設に使用された骨材工場の跡地があります。ここに一部事務組合「吾妻環境施設組合」を設立し、吾妻郡全域の一般廃棄物処理場の建設に向けた手続きを開始しました。現在、県内に点在する3つの処理場を、効率的で省力化された環境にやさしい施設に集約します。」

 上毛新聞の紙面記事では、「プラントヤード跡地はダム建設事業の完了に伴い更地になり、国土交通省が2010年3月末に財務省に書換えを行った。面積は約18万8千平方㍍」と伝えています。財務省は未利用の国有地について、地方公共団体などから要望を受けることになっており、プラントヤードを管理する前橋財務事務所は「準備が整い次第、要望を受け付ける予定」であること、6町村が現在利用している3つのごみ処理施設はいずれも老朽化しているため、施設の担当者は「新施設の完成は早ければ早いほどいい」と訴えていること、要望を提出する「吾妻環境施設組合」は東吾妻町の役場内に設置されており、組合の管理者は中澤町長であることも伝えています。

 八ッ場ダム事業による自然環境への影響を調査するために国交省関東地方整備局が設置したモニタリング委員会(第三回委員会、2022年2月10日)の説明資料には、骨材プラントヤードが設置された原石山の植生が回復せず、外来植物が拡大していることをが次のように記載されています。

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 現状と課題
・法面の植生、特に、原石山周辺は、確認種数も少なく外来種率 も高い状況である。
・従って、今後、外来種がさらに分布を拡大する可能性もあるた め、駆除等の外来種対策に向けた検討実施を行う必要がある。
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 また、議事録(2022年11月情報開示)は、有識者委員らが問題を指摘した次のような発言を記録しています。

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「原石山跡地について、現在、事務所と一緒に現場を見ているので、現状は理解しているが、今後とも、原石山の植生回復についての回復計画等について、しっかり対応していただきたい」
「原石山は一番被害を被っているかもしれない。」
「原石山における生態系の変化が大きいため、すぐに回復というのは難しいかもしれないが、外来種ばかりになってしまうのも問題なので、長期的な視点で考えてほしい」
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 国交省のモニタリング委員会は、今後の対応方針として、「令和4年度以降も調査を継続する。」 、「配慮事項の実施に伴う効果を分析・評価するとともに、長期的な 視点で今後の見通しを踏まえて、外来種対策に向けた検討も行う。」としていますが、原石山跡地の麓にごみ処理施設ができることには触れていません。トンネルを超えて6町村のごみが運び込まれる原石山跡地周辺の環境は、これからどのように変化していくのでしょうか。

写真=2016年4月19日、長野原城址より撮影

写真=2016年6月12日、高ジョッキより撮影

写真=2019年11月10日、浅間隠山より撮影