八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

八ッ場ダムの堆砂状況に関する開示資料

 八ッ場ダムの堆砂に関する最新の報告書が国土交通省より開示されましたので、公開します。

◆2023年9月開示 八ッ場ダム貯水池の堆砂状況に関する開示資料(国土交通省関東地方整備局)
 「R4八ッ場ダム管内貯水池三次元計測業務報告書」(国土交通省利根川ダム統合管理事務所、令和5年2月)

 ダムは川の流れを遮ることによって、上流から水と共に流下する土砂を貯め込みます。土砂がダム湖に堆積したものは堆砂(たいさ)と呼ばれます。
 堆砂量はダム建設後、歳月を重ねるにつれて増えていき、やがてダム計画の本来の目的である「治水」や「利水」の容量を減少させていきます。

 このため、ダム計画では、ダムの寿命として想定されている100年間の堆砂量をあらかじめ「堆砂容量」として見込んでいます。
(右画像=八ッ場ダムの容量配分図。治水容量や利水容量の下に「堆砂容量」と書かれた箇所がある。
 国土交通省利根川ダム統合管理事務所HP「八ッ場ダム」より)

 しかし、流れが急で、火山性のもろい地質が多いわが国では、計画より早いスピードで堆砂が進行するダムが少なくありません。また、堆砂は「容量配分図」のように、ダムの底に平坦に堆積していくわけではなく、川の流れが止まる上流側から進行していきます。
 全国には、ダムが堆砂で満杯状態になっていたり、堆砂の影響でダム湖上流で水害が多発するダムもあり、堆砂問題は年々深刻になっています。

 

 全国の堆砂問題に関する当サイト内の情報についてはこちらのページからたどれます。情報公開請求によって入手した全国のダムの堆砂に関する資料の分析や、堆砂に関する新聞記事などがご覧いただけます。

 また、国土交通省も同省サイトで2012年度以降の全国のダムの堆砂状況を示すデータを公開しています。
 https://www.mlit.go.jp/river/toukei_chousa/dam/taisa/index.html

 国土交通省などダム事業者はダムの堆砂問題に対応するため、ダム建設の際に排砂ゲートを設けたり、新たにダムを建設する際、流水型(穴あき)ダムを採用するケースが増えています。

 黒部川では国土交通省が出し平ダムなどで排砂を行ってきましたが、初回の排砂では「ダム湖内に6年間かけて貯まった土砂が変質し」ていたことから、下流の富山湾に漁業被害をもたらし、大きな社会問題となりました。
 国土交通省では「黒部川ダム排砂評価委員会」を設置し、有識者の意見を聴きながらその後の排砂を行ってきていますが、堆砂問題を解決するには程遠い状況です。

〈参考ページ〉
 国土交通省北陸地方整備局ホームページより
 「連携排砂の一部報道に対する国土交通省黒部工事事務所の見解」

 また、近年のダム計画では、ダム堤のゲートを洪水時以外は開放して水を流す「流水型」ダムが採用されるケースが増えています。平時には貯水が必要ない治水目的専用のダムです。洪水時以外は水と共に土砂も流れるため、河川環境への影響が少ないとされ、日本一の清流とされる球磨川水系の川辺川に計画されているダムも流水型として建設されることになりました。
 しかし流水型ダムの歴史は浅く、その効果や影響については未知数です。川辺川ダムはこれまでにない巨大な流水型ダムであり、流域住民から河川環境への影響を危惧する声があがっています。
 30年前より球磨川と川辺川の河川環境を守る活動を行ってきた以下の市民団体のサイトに流水型ダムをめぐる問題がまとめられています。

〈参考ページ〉清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会ホームページ Q&Aより
       https://tewatasukai.com/dam-problem/faq/

       Q3.流水型ダムってどんなダム?
       Q4.流水型ダムなら「命も環境も守れる」って本当?
       Q5.新しいダム計画では環境アセスメントを実施するから清流も守れるって本当?