異常な暑さに見舞われた今夏、利根川水系では10%の取水制限が検討されたものの、8,9月の降雨により取水制限は回避されました。
利根川上流ダムを抱える群馬県の地元紙では、9月末に取水制限回避の記事が掲載されましたが、この記事では八ッ場ダムが役に立ったことが強調されていました。
たとえ10%といえども、取水制限となれば利根川流域住民の生活に影響が出るだろうと思われがちですが、取水制限と給水制限は同じではありません。また、利根川流域都県はすでに八ッ場ダム以外にも多くのダム事業に公金を支出しており、十分な水源を確保していますから、10%の取水制限があったとしても、生活に影響が出る心配はありません。
八ッ場ダムは総貯水容量が1億750万㎥と、利根川水系ダムの中で三番目の容量がありますが、都市用水を供給するための利水容量は僅か2500万㎥と、利根川水系ダム11基全体の利水容量の中で八ッ場ダムが占める割合は5%以下です。地元紙の記事はPR過剰の感を否めません。
紙面記事を転載します。
◆2023年9月28日 上毛新聞
ー利根川水系の10%取水制限回避へ 八ツ場ダムが下支えー
7月の高温と少雨を受けてダムの貯水量が低下していた利根川水系について、関係省庁と群馬県など6都県でつくる利根川水系渇水対策連絡協議会は27日、検討していた10%の取水制限の可能性が当面なくなったと発表した。8、9月の降雨で十分ではないものの貯水量が保たれている上、今後は農業用水の需要が低下するため。10月2日に幹事会を開いて、節水の呼びかけを停止する。夏場は一部ダムの水位が大きく低下した一方、八ッ場ダム(長野原町)など降雨で回復したダムが下支えしたとみられる。
事務局の関東地方整備局によると、27日現在の同水系9ダムの貯水率は67%、安定水準とされる70%には達していないが、今後は水田を中心とした水需要が減るため、急激な水位低下はないと見込んでいる。
7月の利根川上流域の降水量は平年の半分以下で、ダムの貯水量が急激に低下。8月9日時点で60%と、取水制限の目安となる50%に近づいたため、同協議会は取水制限の検討や節水の呼びかけを始めた。8月は局地的な雨もあり下旬に68%まで回復したが、9月も高温で水需要が増えたため60%台前半まで下がる時期もあった。
夏期の貯水容量が最も多い矢木沢ダム(みなかみ町)は、周辺の降雨が少なかったことなどから、8月15日に貯水率が34%に低下。一方で、降雨による回復が早かった八ッ場ダムは同時期でも100%前後で、渡良瀬川流域など他のダムとともに全体の水量を支えた。
同ダムは2020年に運用を開始。同局は16年に行われた取水制限について「八ッ場ダムが完成していれば回避できた」とする報告をまとめており、今回についても「他のダムの負担を軽減した効果などを検証したい」としている。
—–転載終わり—–
「洪水調節」が目的にあるダムでは、梅雨や台風で大雨が降る可能性がある6月~9月を洪水期として、あらかじめ治水容量分を空にしておきます。このため、洪水期と非洪水期では貯水容量が大きく異なります。
以下は10月6日時点の利根川上流9ダムの貯水量のデータです。
10月から非洪水期となり、貯水容量に治水容量が加わりましたので、貯水率は9月時点の貯水率から大きく下がっていますが、実際の水量は増加しています。農業用水の需要が減る一方で、雨が降りやすい時期を迎えていますので、今後は渇水の心配はありません。
〇以下の画像:国土交通省関東地方整備局利根川ダム統合管理事務所ホームページより
https://www.ktr.mlit.go.jp/tonedamu/teikyo/realtime2/E015010.html