さる3月3日、東京・水道橋の全水道会館において第18回総会を開き、総会後に記念集会「気候危機時代の豪雨災害を考えるー川辺川ダムは本当に必要か」を開催しました。
集会冒頭では、ダム問題に半世紀以上取り組んできた嶋津暉之さんの逝去を悼み、黙祷を行いました。
YouTube に当日の動画をアップしました。
冒頭の挨拶の後、11分過ぎから集会の録画をご覧いただけます。
https://youtu.be/nOghzb_GfCE?si=p-o621shZv5JED7T&t=659
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八ッ場ダムと川辺川ダムはかつて、全国のダムの中でも特に難問山積の国直轄事業として、「東の八ッ場、西の川辺」と並び称されました。
2009年に発足した民主党政権では、自民党の利権と深く結びついた両ダム事業の見直しが注目されました。しかし、八ッ場ダム事業は、共同事業者である利根川流域一都五県が強力に推進を主張し、2011年に建設にゴーサインが出されました(2020年完成)。一方、流域が熊本県内に限られる川辺川ダムは、民主党政権発足前から受益者とされる球磨川流域住民の反対運動が幅広く展開され、2008年には蒲島熊本県知事もダム計画の白紙撤回を表明せざるをえないところまできていたことから、中止されることになりました。
ところが、その後も国土交通省はダムを前提としない治水対策に積極的に取り組もうとはしませんでした。そして、2020年7月の熊本豪雨では球磨川流域で50名の犠牲者が出る大水害となりました。この水害を契機に川辺川ダム計画は治水専用の流水型(穴あき)ダムに衣を替えて、再び強力に推進されることになったのです。現時点における川辺川ダムの完成予定は2035年度です。
川辺川ダム問題を長年研究してきた森明香さん(高知大学・当会運営委員)がコーディネートしたこのたびの集会では、熊本県人吉市より、川辺川ダム反対運動に1992年から取り組んできた「清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会」(略称:「手渡す会」)の3人の活動メンバーが参加(写真右上)。また、スウェーデンのグレタ・トゥーンベリさんの活動に触発されて2019年より気候変動の問題に取り組んできたFridays For Futureより大学生と高校生の方々も参加して(写真右)、活発なクロストークが行われました。
2020年の水害発生時、「手渡す会」のメンバーらは自らも被災者でありながら、流域の各所で出水の様子を映像と共に記録し、水害後は現場で膨大な聞き取り調査を行いました。これらの詳細な資料と国土交通省のデータ等から浮かび上がってきたのは、たとえ川辺川ダムが水害時に完成していたとしても、犠牲者のほとんどは救えなかったという冷厳な真実です。なぜなら、川辺川ダムは球磨川本流の水位を下げることを目的としていますが、死者の多くは支流を襲った激甚な災害に巻き込まれて亡くなっているからです。
「手渡す会」の球磨川水害の調査報告書は、同会ホームページからダウンロードできます。
https://tewatasukai.com/news/1561/
球磨川と共に暮らす流域住民から見ると、国土交通省は川辺川ダムありき一辺倒で、豪雨災害の事実解明には関心を示していないことがよくわかるといいます。ダムに都合の良い事象を捏造し、環境への配慮をPRしていますが、河川環境への影響は必至です。国土交通省が新たに導入した「緑の流域治水」も看板倒れで、気候沸騰化の時代に対応できる治水対策には程遠いと言わざるを得ません
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以下の画像、または文字列をクリックすると、当日の報告の詳細がわかる全スライドが表示されます。