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成瀬ダム事業、再び工期延長・事業費増額の計画変更案発表

 秋田県の雄物川水系で鹿島建設JVが建設を進めている成瀬ダムについて、事業主体の国土交通省東北地方整備局は今月10日、事業費増額と工期延長を目的とするダム計画変更案を発表しました。

★国土交通省東北地方整備局による記者発表
 「成瀬ダムの建設に関する基本計画(第 4 回変更)に向けた秋田県知事等への意見聴取」
 https://www.thr.mlit.go.jp/bumon/kisya/kisyah/images/98940_1.pdf

 

 成瀬ダム計画は2021年度にも変更されており、この時は工期が2024年度から2026年度に延長、事業費が1530億円から2230億円へと700億円増額されました。今回の変更案では、工期をさらに一年延長して2027年度とし、事業費を約370億円増額して約2600億円とするとしています。事業費増額の理由は社会状況の変化などと説明されていますが、事業進行に伴う増額と工期延長は「小さく産んで大きく育てる」ダム事業の通例です。

 国と共に事業費を負担する秋田県は、負担額が従来より68億円増えて約460億円になります。秋田県には計画変更案を否決する権利があることになっていますが、6月議会で形ばかりの審議後、承認することが予想されます。

写真右=「成瀬ダム堤体打設工事」サイトより 「定点写真」 
    2024年5月時点の本体工事現場

 1983年に事業が着手された成瀬ダムの建設目的は利水(生活用水・農業用水の供給、発電)と治水(洪水調節)です。建設予定地は人口が減少し、利水目的が空洞化する中、治水を前面に出してダムの必要性がアピールされていますが、洪水調節としても効果が期待できません。
 一方で、イヌワシ・クマタカなど生態系ピラミッドが保全されてきた貴重な建設予定地域の自然が破壊されることもあり、ダム建設に反対する住民が2009年に不要なダムへの公金支出差し止めを求める裁判を起こしましたが、2017年に敗訴が確定しています。

◆2024年5月14日 NHK秋田放送局
https://www3.nhk.or.jp/lnews/akita/20240514/6010021040.html
ー佐竹知事 成瀬ダム建設現場を視察 工期1年延長 事業費増額ー

 東成瀬村で建設中の成瀬ダムについて、国は工期を1年延長し、事業費を増額する方針を示しました。
これを受け、費用の一部を負担する秋田県の佐竹知事は14日、ダムの建設現場を訪れ、工事の進ちょく状況などを確認しました。

 東成瀬村で令和8年度の完成に向け建設が進められている「成瀬ダム」をめぐっては、国土交通省が今月10日、働き方改革関連法による時間外労働の上限規制による影響などを踏まえ、工期を1年延長するとともに、資材費や人件費の高騰などを理由に事業費をおよそ370億円増額し、およそ2600億円に変更する案を発表しました。

 治水や発電などを目的とした多目的ダムである「成瀬ダム」の事業費の一部は秋田県や横手市などダムの下流にある自治体も負担することになっているため、佐竹知事は14日午後、建設現場を訪れ工事の進ちょく状況などを視察しました。

 この中で佐竹知事は、現場の責任者からダム本体の工事が現時点で85%まで進んでいることや、今後の工事の計画などについて説明を受けました。

 このあと佐竹知事は報道各社の取材に対し「計画の変更は妥当だと思うが、きちんと精査したい。また、今後も県の負担が軽くなるようダムの機能を損ねない範囲でコストカットができないか国と意見を交わしていきたい」と述べました。

 国土交通省の案では、秋田県は追加でおよそ68億円を負担することになっていて、県は6月議会で変更案について審議することにしています。

◆2024年5月14日 秋田テレビ
https://www.fnn.jp/articles/-/699245
ー成瀬ダム、物価高騰で事業費増額・工期延長 佐竹知事は計画変更を「妥当」と判断 秋田ー

 国が秋田県東成瀬村で建設を進めている成瀬ダムについて、工期の延長と事業費の増額が検討されている。14日、秋田県の佐竹知事がダムの工事現場を視察し、「計画の変更は妥当」と判断した。

 東成瀬村で建設が進む成瀬ダムは、当初、総事業費1530億円で2024年度の完成を予定していた。しかし、追加の安全対策工事にかかる費用や人件費の高騰などで、3年前に事業費が700億円増額され、工期が2年延長された。

 さらに5月10日には、資材価格の高騰などを理由に、事業費が現在の計画からさらに370億円増え、工期を1年延長する見通しが発表された。

 これを受けて佐竹知事は14日、ダムの工事現場を視察し、国の担当者から計画の見直しに至った経緯などについて説明を受けた。

 今回の計画の見直しにより、県の負担額は68億円増え、約460億円になる見通しとなった。

 視察を終えた佐竹知事は「円安の関係で資材・燃料からセメント・鋼材、全部が相当上がっている。県の事業も全部同じぐらいの率で上がっているので妥当だと思う。チェックしてその結果、最終的に県として結論を出す」と述べ、事業計画の見直しに理解を示した。

 県は、計画の変更案を6月県議会に示すことにしている。