長年、河川行政の問題を追い続けているジャーナリストのまさのあつこさんの最新レポートを紹介します。
【連載 川から考える日本】韓国から私たちは何が学べるか 一度は閉じられた河口堰を“開門”、汽水域の生態系を取り戻した韓国・洛東江、政治と行政を動かした住民の声
流れを遮るという意味で共通するダムと河口堰は、河川環境に致命的な影響を与えます。さらに建設の目的(大義名分)とされる「治水」に科学的根拠が乏しく、「利水」は人口減少という社会状況に明らかに反しているという点でも似通っています。ダムの撤去は技術的に容易ではなく、財政的にも大きな負担を伴いますが、河口堰の開門は容易です。ところが、わが国では過去の事業を見直すことに多くの圧力がかかり、方針転換が行われぬまま停滞が続いています。
1990年代の長良川河口堰の反対運動は、川をめぐるわが国の市民運動の中では最も盛り上がった運動の一つでした。河口堰は1995年に運用が開始されてしまいましたが、「住民参加」と「環境保全の仕組み」を取り入れた1997年の河川法改正は、この反対運動の成果でした。当時、韓国の市民運動関係者も現場を訪れ、河口堰の反対運動から学ぶことが多かったということです。けれどもその後、日本の河川行政は反動→後退し、今や環境政策の面でも韓国に先を越されてしまいました。