八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

八ッ場ダム事業の地質調査

 開会中の群馬県議会で八ッ場ダム事業の地質調査のことが取り上げられました。
 質問したのは地元・吾妻郡選出の自民党議員です。

 多くのダムは、山奥の人口の少ない場所に造られますが、八ッ場ダム事業では、人口の多い交通の要衝に造られることになりました。しかも、水没予定地の川原湯温泉が多くの住民の仕事の場であった為、住民がダムを受け入れる条件は、温泉街を代替地に再建することでした。水没住民の移転代替地はダムから離れた場所に用意されることが多いのですが、八ッ場ダムの場合はこうした背景から、泉源から温泉を引けるダム予定地周辺に代替地が造られることになりました。
 八ッ場ダム予定地は地質がもろいことで知られており、しかもダム湖予定地周辺に多くの住民の居住地がありますので、ダム湛水に備えて巨額の費用をかけて安全対策を講じる必要があります。
 
 以下の記事にあるように、国土交通省は民主党政権の時代、地すべりと代替地の安全対策の費用を約150億円と試算し、事業費増額が必至であることを示唆しましたが、自公政権の復活後は、増額が取り上げられることはなく、昨年11月に行われた4度目の八ッ場ダム計画の変更においても、工期4年延長のみが決まりました。当時は、地質調査が始まっていることも明らかにされていませんでした。

 記事によれば、昨年7月には地すべり対策のためのボーリング調査が始まっていたとのことですが、これまでボーリング調査についての報道はありませんでした。
 国交省は事業費増額を反映させたダム計画の変更を行わなかった理由として、「まだ調査を行っていないので、いくらかかるかわからない」と説明してきました。昨年11月に急いで工期延長のみの計画変更を行ったのは、事業費増額を盛り込めば関係都県の了承を得るのが難しく、来年度予算に八ッ場ダム本体工事費を盛り込むことができなかったからです。
 「本体工事着手」というダム推進の意思のみが先行し、最も重い課題である安全対策が後回しになったつけは、今後、地元と関係都県の住民が背負うことになります。
 
◆2014年2月25日 朝日新聞群馬版
http://www.asahi.com/area/gunma/articles/MTW20140225100580001.html

ー代替地「今月から国が調査」ー

 八ツ場ダム(長野原町)問題で県は24日、湛水(たん・すい)のための地滑り対策で昨年7月から、代替地の安全対策では今月から、国がボーリング調査をしていると県議会に報告した。

福田和明・県土整備部長が萩原渉議員(自民)の一般質問に答えた。

現地の安全性は、ダム見直し派の学者・市民団体だけでなく、代替地に移った地元住民の不安も強い。

民主党政権下の再検証で国土交通省は、総事業費4600億円は、21億7千万円減額できる一方で、追加の安全対策費149億3千万円、工事の中断・遅延で生じた費用55億3千万円が必要で、差し引き約183億円増になると試算。

だが、国は昨年11月の基本計画変更で反映していない。