今年10月に本体着工とたびたび報道されてきた八ッ場ダムですが、11月になった今も事業主体の国交省関東地方整備局は、本体着工の時期を明らかにしていません。
本体工事は基礎掘削から始まるとされ、本体工事を請け負った清水建設共同企業体は基礎掘削後、工期を514日短縮するという技術提案によって関東地方整備局と契約を結びました。基礎掘削後の工期を契約通りに短縮できたとしても、基礎掘削が始まるのが遅れれば、本体工事の完了時期は遅れます。
以下の記事によれば、基礎掘削の開始は、「早くても来年1月」とありますが、同日に掲載された朝日新聞群馬版の記事では、「来年1~3月にずれ込む見通し」と書かれています。今年度の予算に本体工事が組み込まれていますから、3月までに本体着工しなければならないことは確かです。
◆2014年11月17日 朝日新聞社会面
http://digital.asahi.com/articles/ASGCG51MDGCGUTIL01N.html?iref=comkiji_txt_end_s_kjid_ASGCG51MDGCGUTIL01N
ー八ツ場ダムの基礎掘削に遅れ 梅雨の大雨影響、越年確実ー
国が本体着工の時期を「今秋」としてきた八ツ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)で、通常は着工日に催される記念式典の日程が決まらない。国土交通省は当初、本体着工のめどを、土台部分の掘削工事が始まる時期に置いていたが、大雨で遅れ、越年は確実な情勢だ。ダム計画の浮上から62年。気をもむ地元に対し、国交省の「本体着工」の定義まで不透明になり始めた。
国交省は昨年11月、4回目となるダムの基本計画変更に踏み切り、完成を2015年度から19年度に遅らせた。本体着工を14年秋としたのもそのころだ。同省八ツ場ダム工事事務所によると、根拠は、ダム本体の場所の地盤を露出させるための「基礎掘削」工事が、14年秋に始まる見込みだったからだという。
だが、川の水がダム予定地に入らないようにする事前作業が、梅雨の大雨などで2度も延び、今なお続く。基礎掘削の開始は「早くても来年1月」(関東地方整備局)となった。
国交省は次第に、本体着工について言葉を濁すようになる。今年10月16日に建設予定地での測量を、今月4日には高台に付け替えた鉄道の設備の撤去を始めたが、当初はどちらも「準備作業」と説明。「本体着工は、地元首長や住民らを招いた記念式典の日とすることが多い」としていたが、今は「本体着工に明確な定義はない」と繰り返す。
背景には、早期着工を求める地元の姿勢がありそうだ。大沢正明・群馬県知事は今月5日の記者会見で式典について「いずれにせよ開かなければならない」、長野原町も「せめて式典だけでも年内に開くべきだ」と訴える。
一方、本体工事をにらんだ鉄道や道路の工事は急ピッチで進む。国が高台に移したJR吾妻(あがつま)線は先月、新ルートでの運行を開始。また県は18日正午から、国道145号のうちダム建設予定地の上下流約6・6キロで一般車両の通行を禁じる。国交省が本体工事の専用道とするためだ。県は「道路を拡幅し、掘った土などを運ぶ大型車が往復するので危険」と説明する。
この国道は草津温泉などへのアクセス道路だったが、11年12月、高台にバイパスが完成。それでも代替地に移転を終えていない住民らは生活道路として使っており、ダムで一部が沈む国名勝の吾妻峡などを訪れる観光客の通行も多い。
国道145号沿いに住み、県に通行禁止の撤回を求める高山彰(あきら)さん(60)は「まだ住んでいるのに身勝手だ」と憤る。迂回(うかい)路は狭い急坂で冬は凍結し、家族の運転も心配だという。(井上怜、小林誠一)
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〈八ツ場ダム〉 総事業費は約4600億円と国内のダムで最多。治水・利水で利益を得る6都県などが建設費の6割を負担する。1952年に計画が浮上し、地元住民の賛否は二分されたが、群馬県長野原町は85年に「ダムによる生活再建」を受け入れた。2009年に民主党政権が建設中止を表明したものの、11年に建設再開に転換。完成時期は当初の00年度から3回延び、19年度となっている。