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学習会「ダム予定地の現状と長野原町の将来」(2)

現状レポート

現地の状況

(更新日:2009年3月29日)

学習会「ダム予定地の現状と長野原町の将来」(2)

(2008/12/13、於:エコとしま)

大和田: 今日はよろしくお願いいたします。以前、私が吾妻渓谷を訪れたとき大変感動して、こういう機会をつくっていただいたと思います。限りある時間で、八ッ場ダムを抱えている長野原町の財政状況についてお話したいと思います。お手元にパワーポイント用の紙を配布させていただきました。
 開発の問題というのは上位の国や県から財政の説明があるわけですけれど、使うお金が地域にどういう影響を及ぼしているのか、あるいはこういう財政の仕方で地域の人たちがどういうふうになっていくんだろうというレベルのものは、比較的少ないですね。これを出発点にもう少し時間をかけて分析したいというのが今の正直な気持ちです。


[スライド1] 人口の推移

[スライド1]
人口の推移

 人口の推移を財政と絡めながら見ていくと、本来、ダム工事が始まる以前の姿というのがあります。おおよそバブルがはじける前後くらいのところからダム関連の工事が始まる・・・1990年くらいのところです。この辺りがある意味では、長野原町の本来の姿に近い数字だろうと。
 その後、いわば本来の長野原の社会構成ではない部分が入り込んで、工事が入ると共に地域の人口が増えていく。こういうのは外部融資型開発の典型です。これが一端工事の目処がつき、代替地の問題など(造成の遅れ、高額な分譲地価)が出ますと、急速に人口の減少が見られます。こうなっていくと、財政的にどういうことになるのかというのが次のページです。


[スライド2] 普通会計 歳入・歳出決算額の推移

[スライド2]
普通会計 歳入・歳出決算額の推移

 普通会計から見た歳入・歳出・決算額の推移・・・少し丁寧に説明してほしいという要望がありましたので、あまり面白い話ではないかもしれませんがじっくりとお話させていただきます。
 まず、普通会計という言葉が出てきます。これは一般会計とは少し違います。一般会計は普通に使っている会計です。普通会計とはいわば国が定めた統計上の会計で、長野原のような地域ではほぼ100%一般会計と普通会計は一致します。
 ではなんのためにつくっているのかというと、それぞれが勝手に一般会計とか特別会計をつくったのでは企画も行政も指導ができないため、いわば統計上の会計という形を利用し、決められたものに沿ってつくられているものがあるんです。
 決算カードという通知を言うんですけれど、これはたった一枚で決算がわかる。地方分権一括法ができて、元々は国が地方にやらせていた仕事が地方自治事務といって地方自治体がやる仕事になったものですから、簡単・スムーズに情報入手できるようになりました。だから財政は条件さえ整えて時間さえかければ、誰にでもわかるものなんです。
 グラフに線を引いています。隣の草津町が長野原町とほぼ人口が同じで、予算規模も同じくらい。ただどこが違うかというと、草津町は群馬県下では有数の財政力があるところだということ。だから財政規模を比較するときには、類似団体と呼んでいるんです。
 草津町と大体匹敵する、35億円から37億円くらいの予算規模が本来の長野原の財政規模です。これがこんなふうに異常な財政規模になっているところに、本来の財政運営ができない問題がある。
 こういうのはだめになった町を調べると、みんな典型的です。たとえば夕張も同じです。本来の力で歳入歳出規模として成り立っているものが4割くらい、身の丈に合っていないお金を運営しているわけです。これはもちろんダムがもたらした問題ですけれど、長野原という町はもともと財政運営がきちんとした町じゃないです、それがさらにダムの関連で…。
 たとえばここに歳入と歳出の差がありますよね、これを形式収支というんです。要するに歳入から歳出を引いた金額です。普通はこれがあまり大きくないほうがいいんです。だからもともとこういう感じにきたものが、どんどん財政規模を大きくすると共に、歳入と歳出の差が大きくなることが、推移を一目見ただけでもわかるんです。


[スライド3] 決算収支における実質収支額と実質収支比率の推移

[スライド3]
決算収支における実質収支額と実質収支比率の推移

 決算収支における実質収支額と実質収支比率―簡単にいえば自治体の黒字の適正値はどの程度かということです。歳入から歳出を引いたものから、繰り越してきたものを引く、これを実質収支といいます。
 実質収支というのは金額ですから、棒グラフの部分です。それだけだと評価しにくいから実質収支比率を赤い折れ線グラフで入れてあります。難しい言葉だと標準財政規模といって、ほぼ経常的に入ってくる自由に使えるお金です。
 一般的に自治体は実質収支比率が3~5%ぐらいの黒字であることを目指して財政運営をやるわけです。もともとたくさんの黒字を多く残すのは決していい傾向ではないんです。家計ですとたくさん黒字を得ることはいいことですが、自治体の財政は、単年度決算という会計上のこともあって、ほんのわずか黒字を残すのがいいわけです。
 だからたとえば黒字が10%以上いくことは、使うべきお金を使わないということです。いわば財政の苦しいときに、お金を残して使わなかったということで、そういう傾向はむしろダム事業があることでより大きくなったために、計画的な財政ができにくい。
 草津町は大体5%くらいでやっている。長野原は非常に荒っぽい、ラフな財政運営をもともとしている上に、ダムのお金の出し入れの中でよりひどくなっている、というのがここに出てくる傾向です。これは自治体の財政をマクロに見る見方です。


[スライド 論点1] 2005(H17)年度 実質収支比率の比較

[スライド 論点1]
2005(H17)年度 実質収支比率の比較

 平成16~18年度は同じような傾向なので、17年度の資料を使っています。全国に類似団体といって同じような人口規模と同じような産業類型をもった自治体を都市と農村にわけて比較するんです。
 長野原と草津は同じような類似団体ですが、下は全国の類似団体、つまり財政運営の観点から大体5%くらいの黒字を目指してやっているところです。要するにちょっと黒字を残すことによって、留保財源をきちっと確保するという意味合いです。


[スライド4] 普通会計・歳入決算額の推移

[スライド4]
普通会計・歳入決算額の推移

 ここからは長野原町の地域特性を見るために、歳入の構造を見て行きます。
 一般的には自治体の歳入の主要な財源は四大財源によって運営されている。一つ目が最も主要な財源である地方交付税。二つ目に、地方税、これは長野原の町税です。三つ目が地方債。そして四つ目が国庫支出金です。これが日本の普通の自治体の四大財源です。
 そういう意味では長野原の財源の構成比率はどこにでもあるような、ごく普通の山村にある財政構造です。1990年ぐらいまでの財政の収支を見てみると、本来の長野原がこれまで歩んできた財政規模がこのあたりです。
 それが少しずつ崩れてくるんですが、あえていうならば、群馬県がいかに力を入れているかというのがよくわかるんです。長野原に対して群馬県が力を入れているのが都道府県支出金(*国と関係都県が支出する水源地域対策基金の負担金の一部が含まれる)、簡単にいえば補助金、ひも付きのお金です。これが結構多くなってくるんです。これからだんだん工事が進行すると共に、構成比がまるっきり変わってきます。
 まず財政規模自体が変わってきます。四大財源についてはそんなに大きな変動はないですけれども、何が増えるのかによっては、大きな変わり方をします。
 たとえば最近ですと平成16年、17年に諸収入(*関係都県が負担する水特事業の一部が含まれる)が入るんです。諸収入がたくさんウェイトを占める形になる自治体は大体だめになるんです。これくらいのレベルの自治体では、通常の諸収入は構成比でいえば1~3%です。


[スライド5] 普通会計・歳入決算額 構成比の推移

[スライド5]
普通会計・歳入決算額 構成比の推移

 ところが平成17年の構成比を見ると、長野原町の諸収入は28%です。自治体における諸収入は、簡単にいえば雑収入です。雑収入という形でこういうふうに財政に表れるのが本来おかしい。雑収入はどこにも入れられないお金です。この雑収入が後に地域振興費として変わってくるんです。
 なぜパーセントと実額を出さなければならないかというと、財政規模がある時期から4~5割増になりますよね。そうするとパーセントで数字を出すと、構成比が下がって比較できないんです。だから絶対額を作りながら一方では構成比を見ないと、状況が見えてこなくなるんです。

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