本日、雪が降りしきる中、吾妻渓谷左岸で八ッ場ダム本体工事の発破作業が始まりました。発破作業は昨日始まる予定でしたが、爆薬の準備が間に合わないという理由で今日にずれ込みました。
この発破作業は本体工事の最初に行われる基礎掘削の一環です。計画から63年目にして、国土交通省関東地方整備局はいよいよ八ッ場ダムの本体工事に突入しました。
発破の瞬間、地面が下から突き上げられるように揺れ、白い煙が立ち昇るのが見えました。二度目の発破の瞬間です。白い煙の右手の谷底が八ッ場ダムによって遮られる吾妻川の流路です。(写真下)
発破個所から100メートルは立ち入り禁止。報道陣の撮影地点と発破個所の間には、八ッ場沢の峡谷があります。(写真下)
発破が二回行われた様子が動画で見られます。
【発破作業位置図】
発破個所から100メートルの範囲が赤い線で囲まれています。吾妻渓谷の観光スポットである「見晴らし台」(図の右側)、草津温泉方面への幹線道路である付け替え国道145号線の吾妻渓谷トンネル出口付近は、100メートルの範囲のすぐ外側に位置していることがわかります。
関連記事を転載します。
◆2015年1月22日 毎日新聞
http://mainichi.jp/select/news/20150123k0000m040092000c.html?inb=ra
ー八ッ場ダム:雪の中、発破作業が始まる 群馬・長野原ー
本体工事が始まった群馬県長野原町の八ッ場(やんば)ダム建設地で22日、火薬を使って硬い岩盤を削る発破作業が始まった。
降りしきる雪の中、地中20カ所に埋めた爆薬計約130キロを爆発させると、地鳴りが響き、白煙を上げて岩盤が崩れた。この後、作業員たちが重機を使ってさらに岩盤を崩した。
国土交通省によると、基礎掘削はダム本体の建設に適した岩盤を露出させるための工程。2016年5月まで発破作業が随時続く。その後、コンクリートを流し込み、試験貯水を経て19年度に全体が完成する予定。【角田直哉】
◆2015年1月23日 毎日新聞群馬版
http://mainichi.jp/area/gunma/news/20150123ddlk10010061000c.html
ー八ッ場ダム:雪舞う中、響く爆発音 発破開始、本体工事が本格化 /群馬ー
長野原町の八ッ場ダム建設地で22日、発破作業が始まり、ダム本体工事が本格化した。国土交通省が報道関係者に公開した現場には爆発音が響き、白煙が上がった。粉雪や細雪が舞う中、固い岩盤が次々に爆破され、ダムの本体を造る工事がスタートした。
この日は吾妻川左岸での作業で、20カ所に直径6・5センチ、深さ4・8メートルの穴を開け、計約130キロ分の火薬がセットされた。発破10分前からサイレンで周辺に予告し、10秒前から秒読み開始。「ドーン」という大きな音とともに岩盤が崩れ、硝煙と土ぼこりが舞い上がった。
かつて甚大な水害をもたらした川をどうやって制御するか、豊富な水資源をどのように活用するかは、60年以上にわたる議論と紆余(うよ)曲折があった。結局、終戦直後に立案されたダムができることになった。国交省は24日、土地収用法の適用を視野に、強制収用につながる事業説明会を長野原町で開く。本体工事の起工式は2月7日に予定している。
基礎掘削工事が始まったことを受け、県の古橋勉県土整備部長は「地元にとって、ダム湖を前提とした生活再建が現実となってくると感じられる大きな一歩」との談話を発表した。【角田直哉】
◆2015年1月22日 NHK前橋放送局
http://www3.nhk.or.jp/lnews/maebashi/1066797061.html
ー八ッ場ダム 本格工事が始まるー
群馬県で建設計画が進められている八ッ場ダムで、ダムの本体を造るための本格的な工事が始まりました。
群馬県長野原町の八ッ場ダムは、利根川の治水事業の一環として60年以上前の昭和27年から総事業費4600億円をかけて計画されましたが、6年前の政権交代に伴い、一時、建設が中断されました。
しかし、その後、建設の継続が決まり、22日、ダムが建設される予定地の岩盤を掘る「基礎掘削」と呼ばれる作業が行われ、ダムの本体を造る本格的な工事が始まりました。
22日からの工事はダムの本体の側面をコンクリートで固めるためのもので、作業員など20人余りが岩盤に仕掛けられたおよそ130キロの爆薬を爆発させると、周辺に煙があがり、地響きが鳴っていました。
作業員は正常に爆発したかどうか確認したあと、重機を使って岩盤をさらに崩していました。
国土交通省によりますと、この一連の工事は来年5月ごろまで行われ、その後、コンクリートを流し込んでいく工程が進められます。
ダムの完成は、当初の計画から4年遅れて平成31年度中になる予定だということです。
ダムの本体の本格的な工事が始まったことについて、地元の群馬県長野原町の60代の男性は「これまでダム建設について、地元で何度も話し合いを重ねてきましたが、本体工事が始まったことを喜ばしく思いますし、早く完成してほしいです」と話していました。
また80代の女性は「昔はダム建設に反対してきましたが、いまとなっては私も高齢なので生きているうちに完成してほしいです」と話していました。
八ッ場ダムの建設は63年前の昭和27年、利根川流域の洪水対策を進めようと、構想が持ち上がりました。
総事業費は4600億円が見込まれています。
ダムの建設によって水没する地域には温泉街があり一時は地元で激しい反対運動が起きました。
その後住民への補償が決まり、水没する地域の住民たちが移転する新しい土地の造成や、周辺道路の整備などが始まるなど、本体工事に向けた作業が動き始めていました。
ところが6年前の平成21年、「コンクリートから人へ」の理念を打ち出した民主党へ政権が移ると、当時の前原国土交通大臣が本体工事中止を表明しました。
地元では温泉旅館や住宅の移転計画、それに道路などのインフラ整備などがすべて宙に浮いた状態になり、ダム建設を受け入れようとしていた地元住民や自治体は反発を強め、国との間で話し合いが進まず、膠着状態が続きました。
しかしその2年後の平成23年、民主党政権は再び方針を転換し、工事の再開を表明しました。
その後、ダムの本体工事を行う建設会社が決まるなど、工事に向けた動きが加速していました。
ダムは平成31年度中には、完成することになっています。
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上記のNHKの記事には事実誤認がいくつかあります。
「ダムの完成は、当初の計画から4年遅れて平成31年度中になる予定だということです。」とありますが、当初計画では、八ッ場ダムの完成は平成12年度でした。つまり、現在の予定である平成31年度中に八ッ場ダムが完成するとしても、完成の遅れは19年です。
また、平成21年、民主党政権の誕生により、本体工事の中止が表明され、「地元では温泉旅館や住宅の移転計画、それに道路などのインフラ整備などがすべて宙に浮いた状態になり・・・」とありますが、代替地への移転計画、道路などのインフラ整備などはすべて「生活再建関連事業」という名目で本体工事中止表明後も継続されました。
現政権への配慮から、八ッ場ダム事業の遅れの責任を民主党政権に転嫁する意図があるものと思われますが、19年間の八ッ場ダムの遅れの原因を事業を一度も止めることができなかった短期政権のせいにするのは、明らかに無理があります。
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関連記事の続きです。
◆2015年1月23日 朝日新聞
http://www.asahi.com/articles/CMTW1501231000002.html
ー八ツ場ダム、本体工事現場で岩盤発破作業ー
本体工事の基礎掘削が21日に始まった長野原町の八ツ場ダム建設現場で22日、爆薬を使った発破が初めて行われた。設計通りに堤体の基礎地盤を露出させるため、固い岩盤がある場合は爆薬で砕いて取り除く。来年5月の予定の基礎掘削完了まで繰り返される。
22日正午、発破を知らせるサイレンが鳴らされた。10秒前からの秒読みの後、午後0時10分、「点火」の合図で「ドーン」という低い音がとどろいた。地響きとともに、岩盤の壁が高さ約4メートル、幅約20メートルにわたって崩れた。別の場所の発破では、白い硝煙が高く上がった。
国交省によると、この日の発破は、岩盤の二つの区画に10カ所ずつ深さ4・8メートルの穴を開け、計127キロの爆薬を詰めた。今後も、岩盤が固く、重機では時間と費用がかかる場所では発破をかける予定だという。ダム堤体を造る川の両岸や川床で発破と岩盤の除去を繰り返す。(井上怜)
◆2015年1月23日 上毛新聞
ー八ッ場工事、発破開始ー
国土交通省八ッ場ダム工事事務所は22日、基礎掘削工事が行われている長野原町川原畑のダム建設地で、爆薬を使って固い岩盤を取り除く発破作業を始めた。作業は2016年5月ごろまで続き、その後、ダム本体の形を造るコンクリート打設工事に移る。
発破作業は吾妻川左岸の工事現場で行われた。雪が降る中、同日正午すぎに作業開始を告げるサイレンが鳴り響き、作業員の合図とともに地中に埋められた爆薬が、「ドーン」と大きな音を立てて爆発すると、地面が一瞬盛り上がり、白煙を上げて崩れた。その後、作業員が重機を使って土砂を取り除いた。
同事務所によると、この日はドリルで開けた直径約6センチ、深さ5メートルの穴20か所に計127キロの爆薬を据え付けて作業した。発破は1日最大2回で、午後0時10分と午後4時に行う。いずれも作業開始の10分前からサイレンを鳴らして地元住民に周知するという。・・・(以下略)