2月4日、吾妻川の左岸では、八ッ場ダムの本体工事による発破がこの日も行われました。本体工事が始まってから一年たち、本体工事の最初の段階である「基礎岩盤の掘削工事」は次第に標高の低いところに掘削が進んできています。
下の動画を見ると、かつて旧国道が通っていたあたりまで掘削が進んできているのがわかります。
(動画内の声や拍手は、当会の者とは一切関係ありません)
上湯原の水没予定地では、昨年中は石川原遺跡の発掘調査が行われていましたが、今年に入り、厳寒の中、遺跡周辺の樹木の伐採が始まりました。ダムに水没する土地では、ダム湖の障害になる樹木を伐採することになっているのですが、人間の腕や身体が切られるように切なくなる光景です。
写真の奥に見える林の向こうに吾妻川が流れています。
上湯原の双体道祖神(宝暦6年、1756年)も雪をかぶっています。アベック地蔵とも呼ばれるこの道祖神は、上湯原の集落から吾妻川に架かる栄橋へ通じる町道沿いにありましたが、代替地を造成するために地形が改変されたため、現在は水没予定地の仮の場所に置かれています。
写真右は、上湯原地区の子供達が吾妻川の対岸にあった長野原第一小学校に通うための通学路だった栄橋です。川原湯温泉が栄えるようにと名付けられたそうですが、この橋も水没します。吾妻川が酸性の川だったため、昭和30年代まではこの橋は吊り橋だったそうです。
栄橋の下手の国道沿いには国の天然記念物に指定された川原湯岩脈があり、栄橋と共に川原湯温泉の大切な観光スポットでしたが、栄橋も国道も八ッ場ダムの本体工事を理由に閉鎖され、本体工事の掘削土砂を運搬するダンプトラックが走っています。
吾妻川沿いの旧国道が閉鎖された2014年、旧国道を生活道路として利用してきた水没予定地住民から強い抗議があり、国交省と群馬県は旧国道閉鎖後は水没予定地から付替えの国道、県道へ上る道の除雪をしっかりやると約束したのですが、川原湯地区・上湯原の水没予定地から上ってくる道は、除雪ができていないことがあります。国も県も事あるごとに、「住民の生活」を最優先にすると表明していますが、本当にダム事業の犠牲になっている住民を大切に思う気持ちがあるのでしょうか。
栄橋の水没補償として新たに建設されたのが、道の駅「八ッ場ふるさと館」の脇にある湖面橋「不動大橋」です。
湖面橋「不動大橋」からは、上湯原の水没予定地がよく見えます。人家がわずかとなり、田んぼの跡には本体工事の掘削土砂が積み上げられています。
2月1日、川原湯温泉が移転しつつある打越代替地に昨夏、国交省と本体工事業者(清水建設JV)がオープンした「なるほど!八ッ場資料館」をリニューアルするとの記者発表がありました。
国交省八ッ場ダム工事事務所の公式サイトより 記者発表資料
http://www.ktr.mlit.go.jp/kisha/yanba_00000052.html
「雪景色の資料館にコンシェルジュが誕生」
資料館は冷暖房完備、駐車場の除雪も行き届いていますが、資料館までの道路の除雪が間に合わず、立ち寄る観光客はわずかです。展示物も少なく、無人の資料館に人型ロボット「Pepper(ペッパー)」が導入されることになりました。ロボット導入が川原湯温泉の活性化に繋がるでしょうか。
関連記事を転載します。
◆2016年2月5日 上毛新聞
http://this.kiji.is/68084462056310265?c=44616046304952325
-八ツ場情報 ペッパーが発信 新装ダム資料館を案内ー
国土交通省八ツ場ダム工事事務所と、工事を担当する共同企業体(JV)による「なるほど!やんば資料館」(群馬県長野原町川原湯)が4日リニューアルし、ダムに関する情報を分かりやすく発信する案内役として、人型ロボット「Pepper(ペッパー)」が新たに登場した。
ペッパーを資料館の「コンシェルジュ」とする委嘱式が行われ、事務所の矢崎剛吉所長が委嘱状を授与。ペッパーに代わって受け取ったJVの高力雅人八ツ場ダム建設所長は「頑張るんだぞ」とペッパーに呼び掛け、激励した。
ペッパーは「コンシェルジュですか。かっこいいですね。楽しんでいただけるように頑張ります」と応じ、来館者と交流。ダムの概要や由来をはじめ、飲食店や宿泊施設の周辺情報を丁寧に紹介したり、ダンスを披露して場を和ませていた。
ペッパーはソフトバンクが開発。身長約120センチで、高性能マイクやセンサーを使って人の感情や周囲の状況を読み取り、会話することができる。
資料館は昨年8月にオープン。リニューアルでペッパー導入のほか、ダムを紹介するパネルを充実させるなど、ダム建設現場で人々が働く様子が分かりやすいようにした。入場無料。開館時間は午前9時~午後5時。ペッパーは日曜休み。問い合わせは同事務所(電話0279・82・2311)へ。
—転載終わり—
雪に覆われている八ッ場ダム予定地ですが、12月から1月初旬にかけて例年になく暖かかったせいか、水没予定地では梅が咲き、馥郁とした香りを放っています。春がもうすぐそこまで来ています。