今も八ッ場ダム同様、「洪水調節」を主目的としたダム事業が全国で進められつつありますが、巨大ダム事業は完成に時間がかかる上、近年では「治水効果」が限定的であることが問題とされてきています。「想定外」の大雨に対応できず、流域住民が大きな被害を被ることになった昨年9月の利根川水系・鬼怒川水害の教訓を踏まえれば、堤防強化策を導入するなど、限られた予算をより経済効果の高い治水対策に振り向ける必要があります。このままでは税金を投入し続けながら水害が繰り返されることになってしまいます。

 国土交通省はさる8月25日、大戸川ダム、思川開発、利賀ダム、筑後水系ダム群連携を継続する対応方針を発表しました。
 
 大戸川ダム(建設予定地:滋賀県)は2005年、国交省近畿地方整備局が「淀川方式」によるダム見直しで一旦は中止方針を発表したダムです。もともとは下流域の京都府と大阪府が「都市用水の開発」目的で事業に参画していましたが、水需要の低迷により、利水目的が失われ、建設目的に「洪水調節」のみが残っています。
 思川開発事業は栃木県の南摩ダムを中核とする利根川水系のダム事業ですが、八ッ場ダムと同様、ムダな公共事業として多方面から批判されてきました。国会では今年4月、栃木県選出の福田昭夫議員が衆院国交委員会において、利水目的(都市用水の開発)は不要であり、治水(洪水調節)の効果に根拠がないこと、こうした事業に巨額の税金を投入しているために、河床掘削などの喫緊の治水対策に使うべき予算確保が難しくなっていることを詳細なデータと現地調査をもとに訴えました。(「思川開発(南摩ダム)事業をめぐる国会質疑」
 
 しかし国交省は、時代の要請に逆流し、来年度予算の概算要求に合わせて、「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」を開き、お墨付きを得たうえで事業継続との「対応方針」を発表しました。→報道発表資料「利賀ダム建設事業、大戸川ダム建設事業、筑後川水系ダム群連携事業、思川開発事業に関する国土交通省の対応方針について」平成28年8月25日
キャプチャ

 8月3日の有識者会議については、こちらをご覧ください。
 →国交省有識者会議、思川開発など4ダム事業の継続を了承
 
 4事業の検証報告の資料はこちらに掲載されています。
 →http://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/tisuinoarikata/dai36kai/index.html

 大戸川ダムの本体工事について、国交省が公表している資料4ページには、以下の但し書きがあります。
 淀川水系の河川整備計画が今のままでは大戸川ダムの本体工事に着手しないということですが、国交省は大戸川ダムの関連事業が進み、本体工事に着手できるタイミングに合わせて、淀川水系河川整備計画の変更に向けて動いていくものと思われます。
「水管理・国土保全局関係事業における事業評価について」ー「平成28年度予算に係る再評価について」
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大戸川ダムのダム本体工事については、淀川水系河川整備計画(平成21年3月)において「中・上流部の河川改修の進捗状況とその影響を検証しながら実施時期を検討する」となっていることから、河川法第16条の2に基づき、あらかじめ関係府県知事等の意見を聞く等を経て、同計画を変更するまでは、現在の段階(県道大津信楽線の付替工事)を継続し、新たな段階 (ダム本体工事)には入らない。
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 関連記事を転載します。

◆2016年8月25日 京都新聞
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160825-00000018-kyt-l25
 -大津・大戸川ダム事業継続決定 国交省、本体工事は当面凍結ー 

 本体工事が凍結されている大津市の大戸川ダム事業について、国土交通省は25日、治水でコスト面などから優位とした検証結果を受け、事業を継続する方針を決定した。2010年に始まった国のダム検証で対象となった滋賀県内3カ所の対応方針は今回ですべて確定し、大戸川ダムのみが継続となった。

 国交省は継続方針に付記して、本体工事には淀川水系の治水対策を盛り込んだ河川整備計画を変える必要があり、「変更までは新たな段階に入らない」とした。近畿地方整備局は今後、桂川や宇治川で進めている河川改修の進み具合をみてダム工事の実施時期を検討する。現時点では具体的なめどはなく、凍結は当面継続される見込み。

 予定地で進んでいる県道大津信楽線の付け替え工事は、引き続き進めるとした。

 継続決定に対して三日月大造知事はコメントで「予断なく検証した結果」と容認し、「県として大戸川の河川改修を促進する。ハードだけでは守れない洪水も想定され、ダムだけに頼らない流域治水を国と連携して取り組みたい」とした。

 大戸川ダムを巡っては08年に滋賀、京都、大阪、三重の4府県知事が、治水上、優先順位は高くないとする意見を発表し、同整備局が翌年策定した淀川水系河川整備計画で「実施時期を検討する」として事実上、本体着工を凍結した。

国のダム検証は同日、大戸川を含む全国4ダムの継続を決めた。対象83事業のうち継続は54、中止は丹生(長浜市)、県営北川(高島市)を含む25、検証中は4となった。

◆2016年8月26日 読売新聞滋賀版
 http://www.yomiuri.co.jp/local/shiga/news/20160825-OYTNT50156.html
ー「予断なき検証の結果」大戸川ダム継続、知事がコメントー

 2009年から本体工事が凍結されている大戸川ダム(大津市)について、国土交通省が事業継続を決定した25日、三日月知事は、「予断なく検証された結果と考えている」とするコメントを発表した。

 国の決定は、本体工事には、関係府県の意見を聞いた上で、実質凍結を示した国の河川整備計画を変更するまでは取りかからないことも明記した。

 同ダムは08年に滋賀、京都、大阪、三重の4府県が一定の治水効果を認めつつも、「優先順位を考慮すると、河川整備計画に位置づける必要はない」と主張。国に白紙撤回を要求し、国は09年3月、本体工事を凍結した。

 10年には全国のダム事業の検証が始まり、国交省近畿地方整備局は今年6月、大戸川ダムについて、「コスト面などから最も有利」として事業継続が妥当とする案をまとめ、滋賀と京都、大阪各府県も7月、案を容認する考えを同整備局に伝えていた。

◆読売新聞富山版
 http://www.yomiuri.co.jp/local/toyama/news/20160825-OYTNT50335.html
 ー利賀ダム 事業継続へ…国交省方針ー

 2009年に本体工事が凍結建設の是非が検証されていた国の直轄ダム「利賀ダム」(総事業費約1276億円、南砺市利賀村)について、国土交通省は25日、検証の結果、建設事業を継続するとの対応方針を決めたと発表した。国交省は今後、関連事業費の2017年度予算への計上など、具体的な対応を進める。

 利賀ダムは、庄川水系の利賀川に建設が計画され、治水と工業用水の確保を目的に、1993年4月に建設が始まった。全国のダム建設見直しを進めた民主党政権時代の2009年、建設の是非を検証する対象のダムに区分され、本体工事の着工が止まっていた。

 今年に入り、3月に国と県、地元5市が建設の是非を話し合う「検討の場」が5年ぶりに開かれ、石井知事と5市の市長がいずれもダム事業の継続を求めた。国交省北陸地方整備局も、安全やコストなどの面でダム建設が最も有利で、事業の継続を妥当とする報告書をとりまとめていた。

 現在、市道の付け替えや工事用道路などの整備が進められており、16年3月末現在で工事の進捗(しんちょく)率は34%となっている。

 石井知事は25日、記者団に対し、「繰り返し国にお願いしてきたので、本当にうれしい。出来るだけ早く着実に、工事を進めてもらい、一日でも早く完成させることが県民の安全につながるので、国に働きかけたい」と述べた。
 南砺市の田中幹夫市長は「長い間止まっていたが、継続と判断され、大変ありがたい」とコメントした。砺波市の夏野修市長は「大変ありがたく、市民とともに喜びたい。今後は、ダム本体の早期着手、できるだけ早い完成を期待している」と語った。

◆2016年8月27日 佐賀新聞
 http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/349375
 -筑後川水系ダム群連携事業を「継続」 国交相決定ー

 石井啓一国土交通相は25日、国の事業見直し対象となっていた筑後川水系ダム群連携事業の「継続」を決めた。

 筑後川の流量が豊富なときに福岡県内のダムに導水し、農業用水やエツ・ノリなどの生育へ水量を確保する計画で、総事業費は429億円。佐賀県も流域自治体として費用負担している。

 事業は筑後川上流からポンプで最大毎秒2トンを取水し、約20キロの導水路で中流域の支流にある江川、寺内、小石原川(建設中)の3ダムを結び、夏の渇水期に備える。

 佐賀県は昨年度までに調査費1億6千万円を支出した。現時点では最終的に約30億円の負担を見込む。

 1996年に予備調査を始め、民主党政権時の2010年にダム再検証の対象となっていた。計画では調査設計や関係機関との協議に少なくとも3年程度、建設着手から6年程度で完成させる。